セクサロイドは眠らない

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2001年08月19日(日) セックスのあと、いつも彼女は少し泣く。

彼女は、ほとんど誰ともしゃべらない。小さくて、薄暗い部屋で、いつも僕を待っている。いや、本当は僕を待っているのではなくて、彼女は彼女自身と対話しているのだと思う。だけど、彼女の口からは、そんな話は聞く事ができないから、僕はそんな風に考えることにしている。

その部屋では、僕も無口になる。

たくさんの言葉から逃れてみたら、とても心が安らぐんだということを、僕は彼女から教わったのだ。そうして、僕は、彼女に恋をした。

僕が、彼女の過去について知っている事は、本当に少ない。

--

彼女は、時折、絵を描いている。

小さな家。

「この中に、誰かが住んでいるのかい?」
彼女はうなずいて微笑む。

きっと、その部屋には、彼女自身がいるのだろうと思う。窓のない家。

暗がりの中で僕は彼女を抱き締める。ほとんど日光にさらしたことのない、真っ白な肌。その、小さくて丸い肩にそっと唇をつける。彼女は、その感覚が何なのかと、思い出すように眉をしかめる。そうして緊張して体をこわばらせる。柔らかい布地越しに、彼女の乳首が固くなるのを感じる。

「やめようか?」
と訊ねると、彼女は、静かに首を振る。彼女の手が、僕のペニスに触れる。そんな風に、いつも彼女は、手に触れる物を、そこにそうやってあることを確かめるように、静かに集中して触るのだ。

そうやって。静かに。ゆっくりと。激しいものも、勢いにまかせたものも、何もないセックスを。彼女が壊れてしまわないように。僕も、僕を確かめるように。

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セックスのあと、いつも彼女は少し泣く。

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初めて交わった時、僕はすっかりうろたえてしまった。

「だいじょうぶ。」
と、彼女は、かすれた声で説明した。

彼女は、生まれてから3歳くらいまでの間、狭くて暗い場所にずっと閉じ込められて育ったのだ、と、彼女は説明した。

だから。

固く幾重にも梱包された荷物をほどくように、ちょっとずつ、自分の心をほどいていくしかないの。

と。

そういうわけで、僕は、彼女の部屋にいると、忘れてしまった自分を少しずつ思い出す。そうして、言葉を少しずつ忘れて行く。


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