セクサロイドは眠らない

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2001年08月14日(火) 男の熱く固いそれを受け入れる。私の内部は収縮して、男のそれを更に奥へと誘い込む。

「そんな軽装で、こんな天候の中うろつくやつがいるか。」

毛布にくるまっている私に、熱いマグカップを差し出しながら、男の瞳はそれでもやさしい。荒いハケを滑らせたような髭の下で、口元はやさしく微笑している。

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かあさんに言われて、物語を探し続けて来た。波に洗われた浜辺の砂一粒一粒の中に、夜空の星のまばたきの一つ一つの中に。そうして、雪の結晶のきらめきの中の物語を探して、こんな北の国までやって来たのだ。

かあさんは言う。物語を見落としてはいけないと。幼い頃から、かあさんに抱かれた記憶もなければ、かあさんに歌を歌ってもらった思い出もない。ただ、物語の探し方を教えられて育った。

「恋をしてはいけない。」
と言われていた。物語を見つける力を失うから。と。

「恋?」
たくさん探し当てた物語の中から、恋の物語の記憶を探る。

それは、どれも、甘美だけれど切なく、時にはこの上なくやさしく、時には人を殺す。私は、恋に憧れた。けれども、それはいつも、手の平の上の物語のカケラの中。

かあさんは、物語を見つける能力を失ってしまったと言う。かあさんは、恋をしたの?と、それは聞けずじまい。

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「不思議な女だな。」
男は、微笑む。

「どこが?」
「さあ。どこだろうな。お前の心はまるで雪のように真っ白だ。何の絵も描かれていない。」
「分かるの?」
「どうだろうな。そんな風に見える。」

男は、私の唇に唇を重ねる。男の唇はびっくりするほど熱い。いや、熱いのは私の唇だろうか。

毛布が床に落ちる。

男の髭が、私の脚をくすぐり、熱い舌が這うのを感じる。私は、熱さのあまりドロドロに溶けて、男の、熱く固いそれを受け入れる。私の内部は収縮して、男のそれを更に奥へと誘い込む。

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「昔、決して、外から入って来られない筈の、この雪に閉ざされた場所に、お前みたいに迷い込んだ女がいたという話を聞いたことがある。」

男の腕の中で、私はまどろみながらそれを聞く。

「女は、ここの男と愛し合い、二人はこの場所を出て行った。そうして、かわいらしい赤ちゃんが産まれたんだと。そんな噂を聞いた。」

かあさんのことだわ。と思った。

私も赤ちゃんを生むでしょう。

私の物語。やっと探し当てた私だけの物語。


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