セクサロイドは眠らない

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2001年08月12日(日) お兄ちゃん、痛くするもん。お兄ちゃんのこと、嫌い。

レナは、僕の愛らしい人形。僕の膝に座って、絵本を読んでやると、レナの口から甘いキャンディの香りがする。

「レナ、お兄ちゃんの事、好きかい?」
「うん。レナお兄ちゃんのこと、だーい好き。」

僕はレナの愛らしい唇にキスをする。

--

ママの留守の間、僕はレナのお医者さんになる。黄色いヒマワリ柄のワンピースを脱がせると、病気のところを調べますよ、と言って、僕は、裸のレナの体を長いことかけて。

「お兄ちゃん、痛い。」
気が付くと、レナは泣いていた。

「ごめん。ごめん。」
「お兄ちゃん、痛くするもん。レナ、お兄ちゃんのこと、嫌い。」

僕は、母にこっぴどく叱られ、受験期のノイローゼということで、しばらくの間、親戚の家に預けられた。

レナ。僕の可愛いお人形。キミと離れていることが辛い。早く会いたい。

--

「お兄ちゃん、聞いてるの?」

さっきから、うわの空で焦点が合っていない兄に対して、私はイライラしている。私の縁談がまとまりかけているから、兄のほうも何とかしないと、と、田舎の母が焦って持たせた見合いの話を、だが、先ほどから兄はほとんど聞いていない様子だ。

「お兄ちゃんったら。ねえ。」
「帰ってくれないかな。」
「で、お母さんにはどう返事すればいいのよ。」
「適当に返事をしておいてくれ。僕は忙しいから。」
「そんな・・・。じゃあ、アタシの結婚はどうなるのよ。」
「僕の知ったことじゃない。」
「お兄ちゃん、ひどいっ。身勝手過ぎるわ。」
「ああ、それと。僕のことお兄ちゃんって呼ぶのやめてくれないかな。それから、大声出すのも。もうすぐレナがお昼寝から起きてくる。」
「レナ?レナってなによ。それ、アタシじゃない。お兄ちゃん、しっかりしてよ。アタシ、あなたの妹よ。レナはあたしよ。」

兄は、もう、私のことなど聞いていない。

部屋のドアが開くと、パジャマ姿の少女が現われる。
「レナ、起きたかい?」
「お兄ちゃん、この人だあれ?」

少女の顔は幼い頃の私そっくりだ。兄は、もう、私のほうには見向きもしない。

「お兄ちゃんにキスしてくれる?」
「うん。」

よく見ると、それは人形だ。まばたきをしない瞳。抑揚のない声。
その人形は、兄の膝の上に乗って、兄の首に腕を巻きつける。

「お兄ちゃん、狂ってるの?」
私は、兄からその人形を引き剥がして、床に叩きつける。

「何をするんだ?」
兄は、怒り、側にあった灰皿を掴むと、私に向かって来た。

--

レナ、ごめんよ。
やっと二人きりなれたね。
お風呂に入れてあげようね。
お兄ちゃんと洗いっこしよう。
お兄ちゃんが世界で一番好きだと言っておくれ。


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