セクサロイドは眠らない

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2001年08月02日(木) 強く掴まれた手首にも、激しく吸われた乳首にも、悲しい愛の痛みが残る

叔父は、ドロリと酔った目で私を見て、手首を掴んで引き寄せる。手首が痛い。痛いほどの、欲望は、それでも私に向けられたものではない。

叔父の心は、私を見ないまま、私の服を脱がす手もおぼつかない。私は、自ら服を脱いで、叔父の方向外れの欲望を受け止める。こんなに激しく酔っていても、叔父の欲望は萎えることなく、むしろ、冴え冴えとして。私の細い体を壊してしまいそうな強さで割って入ってくる。

また、母に会って来たのだな。と思う。

行為が終わったあと、そこかしこに残る痛みが泣けるほどにいとおしい。強く掴まれた手首にも、激しく吸われた乳首にも、悲しい愛の痛みが残る。

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母に呼ばれて、母の病室を訪ねて行く。相変わらず美しく、末期癌とは思えない生気が漂ってくる。

「私も、そろそろ命が尽きるから。」
母はあでやかに笑う。

「あんまりいい母親じゃなかったけどね。」

そう。母は、私を愛してくれたけれど、どこか上の空で。いつからだっただろう。叔父が母のことを恋焦がれていることを知ったのは。だが、母は、その恋にすら応えなかった。母が愛したのは、自らの美しさと溢れんばかりの才能だけ。母は、自分のアトリエで、何時間でも自分の感性と戯れる。

私は、見てしまった。母のアトリエを訪ねて行った時。世界中の美を一身に集めたようなその容姿と肉体を鏡にうつして恍惚とする母と、その母を激しく愛撫する叔父と。それはあまりに美しい光景で、私は二人に嫉妬し、恋をした。

「もうすぐよ。私は逝ってしまう。でも、ごめんなさい。あなたのとても大切な人を一緒に連れて行ってしまうわ。」

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母は、自分の美しさが病魔の苦痛で壊れてしまう前に、安楽な方法で命を絶った。叔父も後を追った。

母が言った事は間違っている。私が恋をしていたのは、叔父ではない。二人の恋に恋をしていたのだから。

奇跡の恋は、共に生き、共に手を取って去ってしまった。

私は生き続ける。恋のいなくなった抜け殻の心を抱き締めて。


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