セクサロイドは眠らない
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2001年07月31日(火) |
下半身が熱く燃えるようなので、思わず快楽の声をあげて、手をとってその場所に導いた |
その村では、500年に一回、鬼が出ると言う。鬼が出る夜は、その村の語り部の血を引く生娘が、鬼を相手に物語を語って聞かせねばならない。100の物語で鬼を満足させることができたならば、鬼はまた、500年おとなしくなる。物語が面白くなければ、鬼はその娘を取って食う。
サヨは、500年目にあたる年、鬼の相手役を命じられた。サヨは色の白い、美しい娘であったが、その物を語る才能は天賦のもので、サヨが語り始めると、子供達が集まって来て、聞き惚れる。
サヨは怖かった。だが、同時に、気持ちが奮い立つのを感じた。サヨは、物語の力を知っていたし、自分にその才があることをわきまえていたから。
婆は、明日の夜、という日に、サヨに注意をする。 「ええか。一度語り始めた物語は、必ず最後まで語られねばならない。終わりのない物語を語ってはいけないよ。」 「はい。」 「それから、生娘のまま、鬼に会いに行くこと。」 「はい。」
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サヨは、夜中、こっそり寝間を抜け出す。恋人の善治に会いに。
「サヨ、大丈夫か?俺、心配で。」 「大丈夫よ。」 サヨは、それでもこれが永久の別れになるかもしれないと、善治の顔を目に焼き付ける。
「サヨ。俺はお前の勇気に惚れたんだ。」 善治は、サヨの体をきつく抱きしめる。サヨの白い肌を、あますところなく記憶に刻むかのように、舌でなぞる。サヨは下半身が熱く燃えるようなので、思わず快楽の声をあげて、善治の手をとって、その場所に導いた。
「ああ・・。善さん・・・。」 「必ず帰って来いよ。」
その時、サヨは、生娘でならなくてはいけないという、婆の言葉を忘れてしまっていた。
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鬼は、怖い声ではなかった。むしろ、やさしく力強い声であった。 「そこに座って、俺に話をしてくれ。」 岩陰から、鬼の声が響く。
サヨは、前をキッと向いて、朗々と語り始める。鬼が一心に聞いているのを感じる。
物語は一晩中続き、朝の白む頃、99番目の物語が始まった。もうすぐ、あたしは無事、村のみんなのもとに帰ることができる。善治に会える。ふと、サヨの心に善治の、あの、力強い腕の、山仕事で鍛えた肌の記憶が蘇り、声が揺れた。
「どうした?」 鬼が怒ったように、とがめ、そうして、岩陰から鬼が姿を出した。
サヨは息を呑んだ。
鬼とは名ばかりの、光り輝く美しい青年。銀髪の長い髪を束ねた若者が現れた。
サヨは、瞬間、言葉を失った。物語の行く末を見失ってしまった。そうして、体の中から激しく突き上げてくる感触に包まれて、サヨは体が溶けて行くような気持ちになった。善治との抱擁より幾倍も強い、その官能に、サヨはただ喘ぐだけだった。
鬼は、サヨの顔を見て微笑んだ。サヨは、もう、物語を続けることができない。激しい快楽の波の中を漂う。
サヨは、遠のく意識の中で、鬼から大きな尻尾が出ているのを見てとった。
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翌朝、サヨは帰って来なかった。
婆はがっくりとうなだれて嘆いた。あの夜、善治に会いに行くと言ったサヨを引きとめなかった我が身を呪った。
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