セクサロイドは眠らない

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2001年07月26日(木) 彼の白い肌を強く吸えば、泣き声のような快楽の声をあげて華奢な体が白い蛇のようにのたうつ

僕の高校に転校してきた彼は、その美しさで教師も、女子生徒をも魅了した。華奢な体。体毛がほとんど生えていない、なめらかな肌。まるで女じゃないか。彼の美しさに目を奪われながらも、僕は彼のことが気に入らなかった。

そのうち、彼に関するさまざまな噂が飛び交うようになった。彼と手を繋いだだけで、妊娠するだとか。彼と付き合った後、子供を堕ろした女子生徒は10人を越えただとか。

放課後、体育館の裏ですすり泣く女の子と、彼。うっかりそんなものを見てしまったバツの悪さから踵を返すと、彼が後を追って来た。フワリと、彼の甘い体臭が絡みついてくる。

「彼女のこと、放っておいていいのか?」
「いいんだよ。それより、キミと一回話をしたかったんだ。」
「なんで?」
「キミ、僕のこと嫌いだろう?いつも僕をにらんでる。」
「さあな。でも、嫌いかもな。」
「僕は、キミが好きだよ。」

その美しい顔で微笑まれると、誰もが心を掴まれる。悪魔の微笑。

なぜか動揺した自分に腹が立った。
「よしてくれ。」
「ごめん。」
「謝るなよ。」
「僕のうちに来ない?」
「ああ。」

その時には、もう、彼の魔法にかかっていた。
彼が一人暮らししているという小さなアパートの一室で、急に降り出した土砂降りが激しく窓を打つ音に包まれて、僕達は壁にもたれて座っていた。

「男も、女も、どっちでも相手にできるのか?」
下品な事を聞いているな、と思いながら、どうにも好奇の気持ちが隠せない。
「そうかもね。僕は『おとこおんな』なんだよ。」
「なんだよ、それ。」
「僕は、両性具有なんだ。僕の体には子宮があるんだよ。」

変だろう?そうやって急に僕にもたれかかって彼は泣き出す。細い肩にそっと手を回すと、彼がしがみついてきた。気が付くと、僕の顔のすぐ近くに彼の柔らかい唇があって、僕はためらいもなく、自分の唇を重ねた。

「ねえ。抱いてよ。」

外は雷が鳴っている。彼の白い肌を強く吸えば、泣き声のような快楽の声をあげて華奢な体が白い蛇のようにのたうつ。

そうやって僕達は時折会うようになった。

やはり恋愛なんだろうか。悪魔に心を奪われたのか。あるいは、両親から忌み子として嫌われた彼への同情なのか。

--

18になった時、彼は、僕にそっと打ち明けた。
「僕、女になってくる。」

--

彼が姿を消して5年の月日が流れ、僕は、彼のことなど忘れて、会社の同僚と平凡な恋愛をしていた。そんな時、急に彼が現れたのだ。

「お久しぶり。」
ぞくっとするような美しさは、あの日と全然変わっていなかった。

彼の部屋で彼は服を脱いだ。輝くような裸身に、しかし、僕は勃たなかった。僕は、少年の彼だけを愛していたことに気付いた。

「ごめん。もう、僕の前に姿を見せないでくれ。僕は、もうすぐ結婚するんだ。」

彼の自殺の悲報を聞いたのは、それから間もなくだった。

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産後の検診を終えた妻、困惑したようなままキッチンの椅子に座っている。

「この子、男性器があるのに、子宮もあるんですって。」
妻は突然泣き出す。

美しい子供。その白い肌。濡れた目。魔性の微笑み。過去の呪い。


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