セクサロイドは眠らない

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2001年07月19日(木) 彼女の唇から、頬に、首筋に、舌を這わせる

彼女は、ただ、河原で石を拾ったり、花を摘んできてドライフラワーを作ったり、そんなことを一人でアレコレ楽しむのが好きなのだ。でも、そんな彼女のことを、夫は気に入らない。もう、45歳なんだから、他の主婦とおしゃべりに興じたり、シワのとれるクリームでも塗ったりすればいいのに、と思っているようだ。

ある日、河原で、キラキラ光る水面を眺めたり、水に洗われた石を手に取って眺めたりしていると、とても綺麗な石を見つけた。透き通っていて、宝石のように淡い輝きを放っている。溜息をついて、しばらく見惚れていた。

「気に入った?」

若い青年が微笑んでいた。
「いつも、ここで石を拾っているね。好きなの?」

彼女は驚いてうなずいた。それから、二人は、石の話や、景色の話をした。

「そろそろ帰らなくては。」
彼女が慌てて立ちあがった時には、もう、日が傾いていた。

「また会える?」
青年に聞かれて、彼女はうなずくと、走って家に帰った。

夫は、食事の用意もできていないのか、と不機嫌そうに言った。いい歳して、石なんか拾って。彼女は、黙って食事の支度をした。

その日から、青年に会いに、彼女は毎日河原に行った。自分でもおかしいと思う。あんな息子のように若い子と毎日会うなんておかしいよね。そう思っても、気持ちは抑えられない。

青年は、彼女に優しく口づける。髪を手で梳いて、微笑む。彼女の唇から、頬に、首筋に、舌を這わせる。
「きれいだよ」
とささやく。
そんな、私、もうおばあさんよ。
「そんなことないよ。キミは素敵だ。」
青年に抱きしめられ、何度も空中を浮遊するような感覚に襲われて思わず声をあげてしがみつく。青年のなめらかな肌の下で、自分の肉体を恥じて隠そうとしても、青年は「もっとよく見せて」と彼女の手を払いのけて、彼女の体中に愛の印を付ける。

帰宅した彼女は鏡で自分を見る。確かに、最近の私は綺麗になった。肌はつやつやと輝いている。夫の不機嫌は増すばかりだけれど。何かに憑りつかれているのかしら?それでも、檻の中にいるよりは、何かに憑り殺されるほうがいいかもしれない。

--

二人だけの世界へ行こう。青年に言われて、彼女はうなずく。

妻が帰って来ないことを知った夫は、慌てて、妻を探す。妻がよく行く河原には、亜麻色の髪をした青年と、少女が、手を繋いでいた。夫が声を掛けようとした瞬間、二人はいなくなってしまった。

夫は、妻がなぜいなくなってしまったのか、皆目見当がつかないまま、河原にぼんやりとたたずむ。


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