セクサロイドは眠らない

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2001年07月18日(水) 見られているのを意識しながら、私は喘ぐ

男とセックスしていると、誰かが見ていた。

「おにいちゃん?」

「何だよ。」
男が腰を動かしながら訊ねる。暗闇の中で、私と男の息遣いに混じって、確かに誰かの気配が。

「見られてるのよ。」
「誰にだよ。」
男はいぶかしげにつぶやくと、もう、私の様子など気に留めず、腰の動きを早めた。

おにいちゃんが、また、見ている。おにいちゃんに見られているのを意識しながら、私はおにいちゃんに向かって喘ぐ。

--

おにいちゃんは家族とはほとんど口をきかなかった。いや、誰とも、ろくに口を聞かなかった。いつもいつも私に付いて来て、私が友達と遊んでいるのをじっと眺めているのだ。私はイヤだった。恥ずかしかった。

中学生になって、初めて男の子と付き合い始めた時、おにいちゃんが私達の後ろを歩いて付いてくるから、私は
「恥ずかしいから、来ないで」
って言ってしまった。

だから、おにいちゃんはいなくなった。池で水死体で見つかった時、両親は、本当はホッとしたのだと思う。ちょっと知能がアレとか、小さい女の子ばかり見ているとか、そんな近所の噂話が絶えなかったおにいちゃんは家族のお荷物だったから。

--

古い記憶の中で私は泣いている。何かと私にちょっかいを出してくる男の子にサンダルを取られて、帰ったらママに叱られると思って、いつまでも河原で泣いていたのだ。

おにいちゃんがやって来て、私の隣に腰を下ろした。日が暮れるまで、二人でそうやって、黙って座っていた。

「そろそろ、帰ろう。」
私が泣き止むのを待って、おにいちゃんがサンダルを渡してくれた。
「ありがとう。」
サンダルを履くと、おにいちゃんと私は家に帰る道を歩き出した。

「おにいちゃん、血?」
おにいちゃんは、えへへ、と笑って、汚れた手を雑草でゴシゴシと拭いて、また歩き出した。

あの頃から、おにいちゃんはずっと私と一緒だった。そうして、今も。これからも。


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