セクサロイドは眠らない
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2001年07月11日(水) |
私は深い安堵に包まれる。そうして、甘美な記憶が蘇る。 |
私は、日増しに大きくなって行くお腹を見るのが怖かった。子供を産むのがどうしようもなく怖かった。何度も、「中絶させて」と夫に頼んだ。夫は初めての子を心待ちにしていたので、私をやさしく説き伏せ、時にはカウンセリングに連れて行ったりした。
「なぜ、怖いのですか?」 と医師に聞かれても、分からない。ただ、大きな不安で頭がおかしくなりそうだった。 「生んではいけないような気がするのです。とても怖いのです。」 「最初はみんな怖いものですよ。あなたは、健康だし、お腹の赤ちゃんも順調だから、何も怖がることはありません。」
夫は、とうとう、私を入院させてしまった。逃げ出そうにも、看護婦が入れ替わりで私を監視するのだ。そうしているうちに、あっという間に臨月を迎えた。
ある日、とうとう陣痛が起こった。夫も、夫の両親も、期待に膨れ上がり、目がギラギラしている。
お願い。怖い・・・。助けて・・・。
錯乱して自力で産めない私のお腹は麻酔され、切り開かれ、赤ちゃんが取り出された。
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「ほら。可愛いでしょう?」看護婦さんが汗を拭いてくれる。 夫が優しく微笑んでいる。 夫の両親が「よう、頑張ったね」と、手を握ってくる。
「あか・・、ちゃん・・・」
「こちらですよ。」 助産婦さんが抱いて来てくれた、小さなうごめく生き物。私は深い安堵に包まれる。そうして、甘美な記憶が蘇る。
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幼い頃、私だけが知っている、古びた空家の中での一人遊び。
最初は、蛙や、蛾といった小さな生き物を捕まえて来た。それでは物足らなくて、猫や小学校のウサギを手に入れるようになった。獲物は、なかなか捕まえられないだけに、手に入れた時の喜びは大きかった。
何が私を虜にしてしまったのだろう。
生きてうごめく小動物を、生きながらに切り刻み、心臓が動いている様子を眺めながら、少しずつバラバラにして行くと、脳の奥がしびれたようになり、夢中になってしまうのだ。そうやって、たくさんの小さな部品に解体し、一つ一つを乾かして、並べて楽しんだ。
そんな異様な性癖は、ある日、飲んだくれた父親に見つかり、激しく殴られて終わりを告げた。
母親は亡くなり、父親は私を置いてどこかに逃げてしまい、私の記憶は封印されたままになっていた。
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私の可愛い赤ちゃん。
手の中でうごめく、その脆い命。握り潰せるほど儚い鼓動。
小さな命を前にして、私は激しく興奮していた。
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