セクサロイドは眠らない

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2001年07月06日(金) たくさんのひとといっぱいいろんなことをしたの

私には、目の前の男がしゃべってる言葉の意味がよく分からなかった。彼の心が奏でる旋律は、彼の歌声に合っていないので、余計に聞き取れない。心がささくれ立つような音色。

「君を理解したい。」
「大事にするよ。」
「もっと君のことを知りたいんだ。」
「他の女なんかより、君のほうが何倍も素晴らしい。」
「君のことが心配だ。」
「ちゃんと食べないとダメだよ。」

あんまりうるさい時は、多過ぎる言葉をフェラチオでふさぐ。

「ねえ、きもちいい?」
「ああ。気持ちいいよ。こんなこと、誰に教わったんだい?」
「いろんなひと。いろんなたくさんのおとこのひと。たくさんのひとといっぱいいろんなことをしたの。しゃぶったりなめたりのんだりいれたり。」

男の顔が歪む。
「ダメだよ。これからは僕だけを見ていなさい。」

ああ。また、何を言っているのか分からなくなる。

「何かして欲しいことはある?」
と聞くから、私のして欲しいことを考えてみる。

私を埋め尽くして。空っぽだから。私の空洞を満たして。いっぱいにして。

でも、私が彼の言葉が分からないのと同じように、彼には私のしゃべる言葉が分からない。彼と私の旋律は一度も交わらない。異国の男と寝るよりもっと悲しい。

--

「一体、いつになったら、君は僕のモノになってくれるんだい?」
男がたまりかねて言う。私は、男の言うことがようやく理解できた。

彼の「欲しいモノ」をカタログ注文する。従順で意志を持たないドールを一体。
彼とドールを残して部屋の鍵を閉める。

そして、私は、たくさんの男の人といっぱいいろんな事をするために街に出る。


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