セクサロイドは眠らない

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2001年06月19日(火) 所有者 & あらゆる感情が渦巻いて入りこむ

昨夜、私の「所有者」が部屋に来た。名乗らなかったけれど、すぐ分かった。私は「所有者」を迎え入れ、彼の服を脱がせた。

「所有者」の胸に、頭をあずけて、私は言った。

「いろいろな人の心が・・・。私の空洞の体に入りこんで来て、辛いのです。私の体内に共鳴して、耳をふさいでも聞こえてきます。」

「所有者」は私の髪の毛を優しくなでた。

「辛いのか?」
「ええ。とても。休まることはありません。」
「それはお前が優秀なドールだからだ。人の心に敏感に反応するのは優秀な証拠だ。他のドールは、人の言葉に反応する。お前は心に反応するように作られたドールなのだ。」
「でも、それは、体が何千回も引き裂かれるように辛いです。」
「ドールは、辛さを感じない。」
「でも・・・」
「その辛さは、お前自身の辛さではない。本当に辛がっているのはお前ではなく、お前に入りこんだ心達だ。」
「どうしたら、逃れられますか?」
「コントロールしなさい。」

そうして、「所有者」は私の中に入って来た。途端に、私は、満たされ、空洞は消え去り、体内に出入りしていたたくさんの心は消え去った。「所有者」の肩越しに宇宙が広がる。何かを考える暇もなく、体が揺さぶられ、快感が引き出される。

「所有者」の声がどこからか聞こえる。

「コントロールしなさい。」

「あなたは、神?」
「馬鹿な。ただの所有者だ。俺をお前に注ぎ込みに来ただけだ。」

--

朝早く、「所有者」は地図を残して、部屋を出て行った。

私は、午後、雨の中、地図に書かれた場所を訪ねた。今にも崩れ落ちそうな錆びた鉄筋の階段を上がって、突き当たったところにある部屋が、「老人」の部屋だった。中は意外にも、白く、明るい場所だった。白髪の老人が、「おはいり」と言った。

「所有者から聞いているよ。コントロールを教えてあげればいいのかな?」
と、微笑んだ。

老人と思ったが、その首は太く、胸元から続く筋肉が窺い知れるほどたくましく、官能的な顎をしていた。白い髪の毛も、切っても束ねてもあふれんばかり、といった具合に伸びていた。肌はつややかで、歯はきれいに揃っていた。

「なるほどな。」
と「老人」は笑った。

「所有者も酷なことをするな。お前のように、やわらかいドールは初めて見た。こんなにやわらかいドールを、放っぽり出しておくなんてなあ。さぞ、辛かろうな」

「ええ。」

「あいつは、そうやって苦しむお前を見て、勃起したものをしごいているのさ。まったくサディスティックな男だからなあ。」

私は、老人の言うことがよく分からないままに、ボンヤリとした声で訊ねた。
「それで?コントロールって?」

「うん。まあ、それだがなあ。お前は、特別やわらかい。本来なら、所有者に完全に守られているべき存在だ。一人で置いておかれるなんて、大変なことだよ。お前はな。『全てを受け入れるDOLL』なのだ。ありとあらゆる欲望を、体内に入れるために存在している。だから、他人のさまざまな心、が、お前に渦を巻いて入り込んで行くのが見える。」

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

「そうさな・・・。」

「老人」は、息をつくと、私をじっと見た。


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