セクサロイドは眠らない
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2001年06月18日(月) |
自己陶酔 & 白昼夢 |
明け方、目尻から流れる水に目を覚ます。自己陶酔という言葉が浮かぶ。
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ササヤマ嬢が、酔いつぶれて眠っている。軽いいびきが規則正しく響いている。化粧も落とさず寝入ってしまった顔は、口紅だけがハゲて、色を失っている。
昨夜、突然訪ねて来て、泣き出す彼女にグラスを差し出し、話を聞いた。恋人との何度目かの別れ話の詳細を聞かされる。きっかけはササヤマ嬢の恋人がササヤマ嬢に結婚を切り出した事であり、ササヤマ嬢曰く「自分は一度結婚に失敗しているから」結婚なんてもう二度と無理だ、と言うのである。
ササヤマ嬢は、離婚をきっかけに摂食障害を発症した。離婚のごたごたの間に、彼女の歯車がちょっとずつズレて行ったのが、私には見えていた。離婚後、彼女は摂食障害と付き合うことで、彼女の空虚を埋めていた。一人の部屋で、食べて吐いて嫌悪して、一日一日をやり過ごす。
彼女の病気は、恋人には知られていない。彼女の求婚を受け入れれば、自分の病気のことがばれて、恋人は自分を嫌いになるだろう、とササヤマ嬢は言っている。
ササヤマ嬢が繰り広げるおしゃべりを、テレビの中の出来事のようにボンヤリと眺めていると、ササヤマ嬢が
「あなたは、こういう悩みとは無縁だからいいよねえ。あなたはしっかりしてるもの。男のことで、本当に傷ついたことなんてないんじゃないの?」
といきなり、言葉を投げつけて来る。
ササヤマ嬢が、なぜ私の部屋に来ているか、私は知っている。私は彼女の状況を改善するための「適切なアドバイス」などしないから。彼女の弱さに魅入られているから。
何も答えずに、今日は一口も口をつけていなかったグラスを一気に空ける。
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道が、目の前に現れた。
路地をずっと歩いて行くと、蔓に覆われた小さな家があった。家の外には犬小屋があった。小屋を覗くと、犬はいなかった。餌入れはすっかり乾いて、長いこと使われていないようだったが、私は、その犬小屋が、先日私の部屋を訪ねて来た犬のものだと分かった。
犬の飼い主は不在だった。
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