セクサロイドは眠らない

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2001年06月12日(火) 家族ごっこ

「母親」という人が電話を掛けて来た。こちらに来ると言う。「誰か」を送り出して、仕事はオフにすることに決める。ハルナに電話を掛けて、仕事の電話は回さぬように告げる。

「誰か」の飲み残したコーヒー。吸殻。

「母親」という人は、相変わらずけたたましい人だ。なにやらたくさん、紙袋から取り出して並べたてる。相変わらずお前は冷たいと言う。髪の色が赤過ぎると言う。吸殻をとがめるように見つめる。「おとうさんが生きていたら」と言い、「兄」という人の「嫁」のことをこぼす。

「黙って聞いてるばかりなんだから」
と言うが、口をはさめばまた怒るのだから。まったく、感情の豊かな人というのは他人に対する要求も多い。感情というものは、受け止めてくれる人がいれば更に肥大していくらしい。

「母親」という人を送り出し、ようやく一人。置いていかれたタッパーの中身は捨て、「あんたに似合うと思って」などと笑う台詞を添えて渡されたどこかからの貰い物のエプロンも資源ゴミと一緒に束ねる。

鏡に向かって、指を入れ、「誰か」の記憶をなぞる。

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蒸し暑い。
あれから、3回オナニーして、自分の記憶を確かめて、散歩に出る。携帯電話が鳴る。「誰か」が今晩行ってもいいか、と訊ねる。電話を通した声は、変質して誰の声か分からない。だから、「あなたのことは分からない。」と言って切った。毎日のように会いたがる男というのを、私は、どうせもてあましてしまうから。そのうち、彼は、部屋に入るなり野球を観るようになるかもしれない。私の膝の上に簡単に頭を載せるようになるかもしれない。そういうのはイヤだ。

放しがいの犬を見つけた。

飼い犬のようだ。鼻が濡れて、健康そうだ。しゃがんで頭をなでたら、スカートの中に鼻を入れて、太もものあたりを舐めまわしてきた。


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