灰色にひずむ空の反対側に、あかく綺麗な夕空があった。 ガラス張りのビルが夕空を映してて、どんよりとした空をバックに、ビルはあかく輝いてた。 填め込みのそらね。
悲しいことをたくさん思い出して笑えずにいた。 置いて行かれることが、頭の中を埋めた。 あたしはお姉ちゃんだから、妹よりも先に大きく重たくなる。 だから何時からか車の中で眠ってしまうと、重たいあたしはお父さん、軽い妹はお母さんが部屋へと運んでた。 それはずっと頭で理解してた、昔から。 何時からか妹をお父さんが運んで、あたしは車の中に置いて行かれるようになった。 目が覚めるまでひとりで車。 狡いあたしがそれ一度も本当に眠り込んでしまっていたわけじゃなく。 置いて行かれる音のない空気を、誰もいない車の中で受け止めてた。 本当はお母さんに迎えに来て欲しかった。 そんなことは死ぬほど願ったけれど、誰もきてくれないんだ。 連れてくくせに、放るんだ。 楽しいことなんてひとつもない、あの時もしも居なくなってたら。 今、何か、少しくらい、変わっていたかも知れないけれど。
|