「静かな大地」を遠く離れて
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日本の8月は、生よりも死に近い季節だ。植物が繁茂の極みを迎える真夏なのに、 激しい太陽光線が、世界を白くとばして、露出過剰の写真のように灼けつかせる。
昭和の記憶が三日おきによみがえってくる、 レクイエムが絶えることない8月。 ヒロシマ、ナガサキ、御巣鷹山…。そして敗戦の15日は、まさに生者と死者が 交感する盆の儀礼の日だ。夏の甲子園さえも、何故か白い死のイメージに重なる。
6年前の8月、生と死の境を近く感じさせる痛切な出来事が、もうひとつ増えた。 8月8日。この日付は、宗形三郎その人の誕生日でもある。オシアンクルの心に 呼びかける声は、未来圏から吹く風に乗って、過去と未来、生と死を繋いでいる。
朝早くから夜中まで空調の中に居て、昨日と今日、どちらが暑いのかわからない ような暮らしをしていても今朝自転車に乗って仰いだ澄み切った空は嘘ではない。 きっと“永遠が見えてしまいそうな…”とは、ああいう空のことをいうのだろう。
題:402話 遠別を去る2 画:かりんとう 話:たぶん母上は怒ることで悲嘆を先へ延ばされたのだと思う
題:403話 遠別を去る3 画:金太郎飴 話:形ばかりとは言え雪乃はわしらの養女、娘も同然の子であった
題:404話 遠別を去る4 画:クラッカー 話:今の世の中はアイヌにとってきつすぎるわ
《あらすじ》由良は父親の志郎から聞いた叔父三郎の物語をほぼ書きあげる。 ――宗形牧場の繁栄に目をつけた実力者の申し入れを三郎が断ったあと、 馬房の不審火でシトナが死んだ。アイヌの人々のために牧場を守った三郎は 衝撃をうけ、出産で亡くなった妻の後を追って自殺した。
題:405話 遠別を去る5 画:キャラメル 話:同じ風の中に幼い二人を立たしめてよいものかどうか
題:406話 遠別を去る6 画:せんべい 話:だいたいが宗形牧場は兄のものであって兄のものでなかった
題:407話 遠別を去る7 画:おかき 話:おまえが生まれたのはそういう年であった
題:408話 遠別を去る8 画:卵ぼうろ 話:覇気がないということは、広い牧場全体に目が届かないということだ
題:409話 遠別を去る9 画:ドロップ 話:チコロトイはばらばらになってしまった
題:410話 遠別を去る10 画:ラムネ 話:重い石が坂道を転がるようなものだ
題:411話 遠別を去る11 画:乾パン 話:静内の者が言わなければ軍がそれを知るはずがない
題:412話 遠別を去る12 画:素昆布 話:俺は三郎が好きだが、死んでからの三郎は少しうるさい
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