「静かな大地」を遠く離れて
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題:319話 チセを焼く19 画:鱗とり 話:アメリカにあこがれたのね
西から移入した学問が光をもたらす、ジレンマを解消する窮余の一策となりうる、 そう信じたり、実践したりしてきた人々の歴史が在る。宮澤賢治だってそういう 外来信仰の持ち主の一人だったとも言える。アイヌの狩猟生活も、和人の畑作も 「充分」な人口支持力を持たないのならば、北海道に似た気候風土の国の技術を 学んで、より多くの収量を得ようというわけだ。佐々木譲さんの『武揚伝』でも 描かれた、この魅力あるヴィジョンが何故に現実の歴史とならなかったのか、と いう問題には簡単な答えは出ないだろう。明治政府だって当初は本気だったのだ。
大事なのは未来に向かって魅力ある世界のヴィジョンを描く気概を失わないこと。 そのための材料は、今日もそこここで誰かの努力によって、生まれたり育ったり しているということを忘れないことだろう。「面白きこともなき世を面白く」の 精神で、絶体絶命の八方塞がり的な状況下でも何とか活路を見出そうとすること。 結構、個体としての輪郭を持った生命体は、ずっとそうして来たとも言えるのだ。 考えてみれば、なかなかに滑稽な、けれど愛しいと思えなくもない光景ではある。 あらためて憂鬱になるのも、道楽でなければ怠惰というものだろうと一人ごちる。
今夜食べたものも飲んだ酒も美味かった。「美味いね」と言うことだってできた♪
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