「静かな大地」を遠く離れて
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生きている時間は無限ではない、むしろ過ぎゆくほんの一瞬とも言える。 「だから虚しい」と思うか、「だから素晴らしい」と考えるかは紙一重。 そしてまた、「ほんの一瞬」の積算だけが、悠久の時間を構成している。 具体的な場所で生身の人間がやってきたことの歴史は、絵空事ではない。
『静かな大地』の作者は過去に喪われた地霊との交感などということが 試みてもおいそれと能うことはあるまい、という乾いたニヒルな認識を 出発点にしている。『夏の朝の成層圏』から近作の『花を運ぶ妹』まで、 そこは変わっているようで変わっていない。薄氷に片足を伸ばしてみて おそるおそる体重をかけてみる身振りの愛しさが、作風と言えば言える。
脳内チャランケをし続けること。それと、ゆんたく空間を確保すること。 この両者を案配良く、同時に出来るならば、その人生は悪くないと思う。
題:312話 チセを焼く12 画:すいてき 話:雪解けを待ってすぐにも働きだそうという気配が溢れていた
題:313話 チセを焼く13 画:分銅 話:我等は武ではなく牧を以て牙城を作る
題:314話 チセを焼く14 画:ひきて 話:シャクシャインの名が頭に浮かんだのはどうも縁起がよくないぞ
題:315話 チセを焼く15 画:箪笥のかん 話:自分たちはただ馬を育てているだけなのだ
≪あらすじ≫静内に宗形三郎と弟志郎が開いた牧場は、 アイヌの協力で優秀は馬を産出したが、周囲のそねみ は強くなる。兄弟に昔話をしてくれたモロタンネが亡 くなった。家を焼いて死者を送る習慣は禁止されてい たが、家は焼けた。息子の勉蔵は手ひどい取り調べを うけ、牧場の悪口も新聞に出た。
題:316話 チセを焼く16 画:ペン先 話:文明開化の今になって以来、結局ことは一層ひどくなったのではないか 題:317話 チセを焼く17 画:たわし 話:実際には故郷を追い出されてここへ流刑になったようなものだった
題:318話 チセを焼く18 画:山葵おろし 話:あのままで行ったら、私は二流の和人で終わっていたかも知れない
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