「静かな大地」を遠く離れて
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2002年03月17日(日) カゼノトリデ

題:269話 栄える遠別29
画:煙草
話:会食中のみなが祝いの言葉を述べる

題:270話 栄える遠別30
画:鯛の鯛
話:ニプタサはおまえの馬鈴薯のおかげで生き延びた赤ん坊だ

題:271話 砂金堀り1
画:馬鈴薯
話:何か新しいことがしてみたくなった

よく晴れた日曜日。普段なかなか行かない劇場に足を運ぶ。都営新宿線の浜町駅、
明治座を目指す。いわゆる商業演劇というやつ。わざわざ行った理由は二つある。
一つはキャラメルの細見大輔氏が出演していること。もうひとつは演目の原作が、
ここの「静かな大地を読むための100冊」にも入っている『風の砦』だからだ。
原田康子さんのずいぶん前に出た小説。新潮文庫は絶版、わりと最近講談社文庫
から再刊されていたが、それも店頭から消えつつある。見かけたら要チェック。

蝦夷地へ赴くことが、ほとんど死と同義であるような江戸末期の侍たちの物語。
座長が西郷輝彦さんってとこが明治座なのです。われらが細見氏はスゴイいい役。
歌舞伎でいえば「二枚目」というポジションで、一番おいしいとこ。えらいもの
をネタにするもんだ、と思いながら興味を持ったのは、アイヌ絡みのところを
どう描くのか、という部分。いやぁ、なんかシュールでしたよ、商業演劇の中で
アイヌの登場人物が沢山出てくるのって。鈴木ほのかさん演じるピリカメノコが
ムックリを取り出して弾くに至っては、もう感慨深いものさえありました(笑)
そのうち商業演劇で馬頭琴とかそういうのいいかも。<どんな筋書なんだろう。

幕間が2回、30分ずつあって、折り詰め弁当を食べたり桜餅を食べたりしつつ
客層のオバさま方より満喫してしまいました。ロビーでいろいろ売ってるのね、
北海道産の鮭トバとか帆立とか、西郷さんの故郷の鹿児島産のキビナゴとか(笑)
もちろんそれも買いましたとも。スゴイいい客かも。劇場を出てもまだ15時、
早く始まるので芝居がはねたあとも、ゆったりしてるのがまたいい。久しぶりに
訪れた界隈なので散歩。清洲橋とかある辺り。水天宮を冷やかしてみたりしつつ
半蔵門線で表参道へ。そこからまたぶらぶら歩いてみる。どこも桜が綻んでいる。

昨夜は神楽坂で飲んでいた。温帯の至福の季節。ふと冷たい北の空気を思い出す。
表参道にアイルランド国旗が出ている。聖パトリック祭のせいだろう。緑の国。
北海道もようやくこれから緑の国に近づいていく。春の森。牧場。街路の樹々。
“遠別”を訪ねたくなってきた。夢の跡だと思うと、きっと切ないだろうけど。




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