「静かな大地」を遠く離れて
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題:269話 栄える遠別29 画:煙草 話:会食中のみなが祝いの言葉を述べる
題:270話 栄える遠別30 画:鯛の鯛 話:ニプタサはおまえの馬鈴薯のおかげで生き延びた赤ん坊だ
題:271話 砂金堀り1 画:馬鈴薯 話:何か新しいことがしてみたくなった
よく晴れた日曜日。普段なかなか行かない劇場に足を運ぶ。都営新宿線の浜町駅、 明治座を目指す。いわゆる商業演劇というやつ。わざわざ行った理由は二つある。 一つはキャラメルの細見大輔氏が出演していること。もうひとつは演目の原作が、 ここの「静かな大地を読むための100冊」にも入っている『風の砦』だからだ。 原田康子さんのずいぶん前に出た小説。新潮文庫は絶版、わりと最近講談社文庫 から再刊されていたが、それも店頭から消えつつある。見かけたら要チェック。
蝦夷地へ赴くことが、ほとんど死と同義であるような江戸末期の侍たちの物語。 座長が西郷輝彦さんってとこが明治座なのです。われらが細見氏はスゴイいい役。 歌舞伎でいえば「二枚目」というポジションで、一番おいしいとこ。えらいもの をネタにするもんだ、と思いながら興味を持ったのは、アイヌ絡みのところを どう描くのか、という部分。いやぁ、なんかシュールでしたよ、商業演劇の中で アイヌの登場人物が沢山出てくるのって。鈴木ほのかさん演じるピリカメノコが ムックリを取り出して弾くに至っては、もう感慨深いものさえありました(笑) そのうち商業演劇で馬頭琴とかそういうのいいかも。<どんな筋書なんだろう。
幕間が2回、30分ずつあって、折り詰め弁当を食べたり桜餅を食べたりしつつ 客層のオバさま方より満喫してしまいました。ロビーでいろいろ売ってるのね、 北海道産の鮭トバとか帆立とか、西郷さんの故郷の鹿児島産のキビナゴとか(笑) もちろんそれも買いましたとも。スゴイいい客かも。劇場を出てもまだ15時、 早く始まるので芝居がはねたあとも、ゆったりしてるのがまたいい。久しぶりに 訪れた界隈なので散歩。清洲橋とかある辺り。水天宮を冷やかしてみたりしつつ 半蔵門線で表参道へ。そこからまたぶらぶら歩いてみる。どこも桜が綻んでいる。
昨夜は神楽坂で飲んでいた。温帯の至福の季節。ふと冷たい北の空気を思い出す。 表参道にアイルランド国旗が出ている。聖パトリック祭のせいだろう。緑の国。 北海道もようやくこれから緑の国に近づいていく。春の森。牧場。街路の樹々。 “遠別”を訪ねたくなってきた。夢の跡だと思うと、きっと切ないだろうけど。
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