「静かな大地」を遠く離れて
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2002年03月14日(木) 迂回路ネットワーキング

題:267話 栄える遠別27
画:画鋲
話:どんな競りでも宗形の馬は高い値をつけた

題:268話 栄える遠別28
画:錐
話:あれらは宗形三郎にも怪しい呪いを掛けているのではないかしらん

オールタナティブを志向する集団。それを「排除」しようとする人々。「近代」
の前線に、いつもつきまとう難儀な対立軸。そしてヒトは、どこへ行くのか?

ある本を読むのに、タイミングというものが作用する。奥付によると2000年の
3月20日に出ている本を、今ごろになって耽読している。その年の秋にアメリカ
の東海岸を旅したのにもかかわらず、殊更にニューヨークを無視してワシントンと
ボストン周辺を愉しんだのも、後になってみるとなんらかの必然に思われてくる。

■川端裕人『緑のマンハッタン 環境をめぐるニューヨーク生活』(文藝春秋)
(帯惹句より)
 エコロジーはアメリカンドリームを超えるか?
 ニューヨークを闊歩する過激な環境保護活動家たち。
 「人間以外」の生命に深い関心と共感をよせる彼らとともに行動し、
 思索する中から生まれた体験的アメリカ文明論。
(引用終わり)

優秀で信頼できる著者であることは、少し読めばすぐにわかる。その上に面白い。
実に個性的で千差万別な「ディープ・エコロジー」の徒たちが、次々と登場する。
それを抜群のバランス感覚で取材しながら、全体として「環境」をめぐる問題を
通覧させてくれて、なおかつ一定の結論ではなく、考える材料を提示してくれる。
この本に登場する人々は、2001年の秋から冬をどのように過ごしたのだろう。
川端氏のサイトがないかと探してみたが、見つからず。継続取材の続編を期待(^^)

先日ちょっと触れた、枝廣淳子さんの『エコ・ネットワーキング!』(海象社)は
そうした継続性、同時代性を体感できる、ワクワクするような好著だ。地方小出版
流通扱いになっているせいかどうか知らないが、2000年12月に出た本だけど
大きい書店でも見かけない。もともと著者による環境トピックのメーリングリスト
を再構成した本。村上龍氏のJMMを筆頭に、ウェブ出自の出版物は数多いけれど
これもその一冊。環境に関する厖大な情報が“一粒300メートル”という感じで
凝縮されている。でも抜群に読みやすくて飽きさせない。このメーリングリストは
現在も稼働していて、今日現在No.660信まで発信されている。下記で登録すると、
バックナンバーのリストと引き出し方も送信してもらえる。興味深い話題ばかりで
全部読みたくなったが、煩瑣なのと目が痛くなりそうだったので、書籍を購入した。
近いうちに書籍の第2弾も予定されているようだ。

■「枝廣淳子の環境トップページ」http://www.ne.jp/asahi/home/enviro/

環境問題に関してメディアによく登場するレスター・ブラウン氏と親交が深い方。
しかしもともと環境の「専門家」というわけではなく、通訳や翻訳の仕事を通じて
関心を深めていかれたらしい。それゆえかどうか、有吉佐和子『複合汚染』を彷彿
とさせるような好奇心と行動力と、なにより謳い文句通りのネットワーキング力で
情報としての価値が高い、なおかつ読み物としても抜群に面白いものになっている。

1999年の終わり頃に配信がはじまっているのだが、その頃と言えばまだ僕は、
御大の読売新聞連載「すばらしい新世界」と“併走”していたはず。「掲示板」と
いうシステムを構えて僕が夢想していたことを、枝廣さんはちゃんと大きく育てて
「力」にしている。すばらしい。ネットワークの「力」は、昨秋の事態にも対応
出来ていて、あの『非戦』を坂本龍一教授らと作った主要メンバーでもあるのだ。

僕がティーンエイジの頃から信望する「思想家」と言えば断然サカモトリュウイチ
だったりしたわけで、それはある世代の人たちにとってのジョン・レノンみたいな
存在、とまで言うと言い過ぎだろうが、少なからずの影響力があったのは確かだ。
月本裕さんのサイトで教授のことが触れられていた。相変わらずの編集的センス。

■「ツキモトユタカの癇癪日記」http://www.diary.ne.jp/user/19481/
 2002/03/13 (水)  坂本龍一のアフリカ エレファンティズム
 というタイトルのDVD BOOKSをいま作っているのである。
 アフリカ行ったりニューヨーク行ったりしているのはそのせいなのである。
 世界がどういうふうになっているのか、どういうふうになってしまうのか。
 坂本龍一さんはそういうことを非常によく考えていらっしゃる方なので、
 お話をしているととても面白い。
 好奇心旺盛にアフリカを見て、象の研究者と話し、日本のことについて語る。

小説家の天童荒太さんとの対談本のラインか。辺見庸さんとの『反定義』もまだ
読めてないんだけど。辺見さんは90年代に旧ユーゴのことをちゃんと見ていた
人だから、アフガンについて語るのも“許せる”、というか切実に興味が持てる。
教授は天童さんとの本の中で「星野道夫」の名前を連呼してた覚えがあるけれど、
“坂本龍一が語る星野道夫”というのは、改めていつか聞いてみたい気がする。

ま、このへんを経巡った上で、『新世紀へようこそ』(光文社)書籍版を読むと
なかなか流れがいいかな、という回りくどい話題の転がし方でありました(笑)


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