ナナとワタシ
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ナナの家に迎えに行く約束の時間が、午前5時半。 日の出は6時50分頃だよーとメールで知らせましたら、ナナが指定してきたのがこの時間だったんですが。
なんか、早くね?
とちょっと思って「も少し遅くしようよ」とメールしかけて、 いや待てよ、もしかしてナナたんたら、ワタシと少しでも長く過ごしたくて時間を早く設定したのかも☆と、ひたすら自分に都合良く解釈した結果、「了解」と返信。
ネットの更新したりお風呂入ったりしてましたら、いつの間にか元旦の午前3時。 こりゃもう、ふとんに入ってしまったら、ワタシ起きられないわーと判断し、仕事しながら机の上でうとうと眠るという手段でもって時間をしのぎまして。 約束の時間にナナ宅へ向かい、ナナも車に乗り込みましてね。
「あのね、場所なんだけど」とワタシが焦って話し始めましたら 「あけましておめでと」とナナ。 ああそうか、新年だったっけ、親しき仲にも礼儀アリってことで「ああ、どうも、おめでとう」とぺこぺこし。
そして、これから向かう場所の説明をしましたら、案の定
「M公園ーー? 斎場の近くでしょ?」と顔をしかめるナナ。
「いや、M公園の下の、典礼会館が良いと思うのだ」 住宅地よりも、ワタシはこっちのほうが良く見えそうで推していたんです。 「典礼会館て、そういう場所でしょ? ヤだよー。怖いよー」 「怖くないって」 「ヤダ。 あなた怖くないの?」 「全然」 「あたしはイヤ」
ち。 ではプランBです。
「じゃあさ、その下に新しくできた住宅地あるの知ってる?」 「あ、うん。わかる。いいんじゃない?そこ」 「ではそこを目指す」 「てか、なんでそこになったの?」 「地図に線まで引いて、角度と山並みを考えてくれた人がいたもんでね( ´_ゝ`)」 「実家か(笑)」 「そう(笑)」
ぶっぶーーーーと車を走らせまして。 なんでもナナは家族に内緒でこっそりと家を出てきたらしく。 ということは、皆が起き出す前にこの人をまた家まで送り届けねばならないわけです。 ちぇー、初日の出のあとにコーヒー飲むくらいのこともできないのかよーぅ、と思いましたが、でも一緒に初日の出見られるだけでもうれしいからいいや。
山道に入りまして。 斎場へと続くこの道、ずいぶん久しぶりに通る上に、真っ暗で道の様子がよくわかりません。 うっかり典礼会館とか斎場のほうまで行っちゃうと、ナナが怖がってしまってせっかくのデートな雰囲気がぶち壊しになってしまうーと思ったワタシはなんだか不安になりまして。 あれー? こんなに登っていいんだっけー? もしかして、もう住宅地過ぎちゃった? もしかして、もう典礼会館?
と思い、車を停車。
「ちょっと!なんでこんなところで停めるの?」 ビビるナナ。 「ここ、どこ?(・_・)」 「やだー!怖いこと言わないでよー」
しかも、あれだけ「斎場なんて怖くない」とのたまっていたじょりぃだというのに、ここに来てにわかに、かつての真っ赤っか道路の恐怖がよみがえってきてしまいましてね! 斎場怖い! ここどこよ! なんかもう進みたくないし! というヘタレぶり。
「道に迷った」
迷った ってアナタ。ていうかワタシ。 ここまで道が一本しかないのに、迷うもクソもないんですが。
「迷うなよ」とナナ。「とりあえず、ここを左に入ってみよ?」と。 「ひ、左に入って、斎場だったらどうしよう」 「斎場はもっと上でしょ。いいから曲がれ」 「はい」
曲がってみたら、住宅地の最北だったようです。
「よ、よし。 東の端を目指すぞ!」とじょりぃ。 住宅地をくるくるし始めますが、2年前に来たときと違って、あたりまえですがすごい数の家が建ってまして、しかも真っ暗でして、もはや何がなにやらわかりません。 方向音痴ふたりで、あーでもないこーでもないと言いながら車を走らせておりましたら、ナナが良い場所を発見。 まだ家が建っていない土地だったので、「すんませーん」と言いながら、敷地に車を乗り入れ、不法侵入の違法駐車。 ふう(・∀・)-3 と安堵したところでナナ「喉が乾いた」と。
「なに?」 「もっと早く言えよって思った?」 「思ったけど、いいよ。すぐ下にあるセブンに戻ろう」 「やっぱいいや。ガマンする。せっかく場所見つけたんだし」 「でもあと1時間あるよ、日の出まで」 「げ。 やっぱり戻ってください」 「あなた、この場所、覚えていられる?」 「・・・自信ない・・・」 「ワタシも・・・」
しかし風邪っぴきと一緒の車に乗せて、喉を乾燥させるのは酷ですので、いったんセブンに向かいまして。 お茶買って、ふたたび暗闇の住宅地へと車を走らせます。 真っ暗でわからないながらも、そろそろ東の空が色づいてきまして、それを目安にできるのがありがたい。 オマケにナナは割と道を覚えてまして、ナナの言うとおりに走りましたら、もとの場所に難なくつきましてね。
「よし、じゃあここに停めy」 「ちょっと待って」
はい。
「何か、さっきちらっと視線の端に入った場所に、もっと良いところがあったような気がする」とナナ。
ナナの指図通りに車を走らせまして。 そしたらホントに、ここはいいんじゃないのー、という空き地が見つかりましてね。 そこに路駐することに。はーやれやれ(・∀・)-3 この頃には空の色がだいぶ変わってきて、ふたりでお茶を飲み、ナナは一服しながら「きれいだねー」とふたりしてひたすら東の空を眺めまして。
「すごい!空の色がみるみる変わってくよ!」大はしゃぎじょりぃ。 「そだねー」 「降りようよ! 降りて見に行こうよ!」 「寒い。イヤ」
つまらない女だな!
そうこうしているうちに、この住宅地のみなさまが、ちらほらと私たちが車を停めている空き地の先に集まり始めましてね。
「ねえ、ここって、もしかしてすごく良いスポットだったのではないかな」とナナ。 「うん。みんな来てるってことはそうだねきっと。キミすごいじゃん!お手柄だ」 「へへへ」
車の中からでもバッチリ見られるように、前の日にスタンドでがっつりと洗車してもらったんですが。 こうやって刻々と変わる空の美しさを眺めていると、じょりぃとしては煙くさい上にガラスが曇ってきた車の中でじっとしているなんてもったいなくてですね。 腹の中の虫が尻のあたりでうずうずしてきてしまうわけですよ。
「降りようよう」 「やだ」 「じゃあ、ワタシちょっと見てきてもいい? 様子見るだけ」 「どうぞ」
上着を着るのもそこそこに、すったかたったったーーーっと空き地の端へ走るじょりぃ。 いやー、全力疾走しなくてよかった。 行ってみたら、端は絶壁状態でした。 暗いうちに進んでたら、土地勘のないワタシでは落ちてましたよ!
で、端に立って眺めてみましたら、こんな眺望です。
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なんか! 地平線ギリギリが、チリチリと燃えてますよ! うわー!すんごいキレイ! 携帯の画像だと、美しさが半分も伝わらなくて残念なんですが。 これはナナにも見せないと! 車からじゃ見えないよこれーーーーーー。
と、満面の笑みでもって車まで転げる勢いで走るじょりぃ。 足場悪いので本当に転びそうになりましたが。
車のドアを開け「降りよう!降りて見ないとダメだ!」とワタシ。 「えーーーー。イヤだーーーーー」 「絶対降りた方がいいって!チリチリだから!」 「チリチリと言われても」 「降りようよーーー。お願い。頼む。一緒に見よ?」 「えーーーーーー」 「早くしないとチリチリが終わっちゃうってば!ヽ(`Д´)ノ」 「わかったよーーーーー(´д`)」
無理やり連れ出されたナナ、まずは「うわっ、こっち側、こんなにすぱっと土地が切れてたのか!(笑)」と驚きまして。 その後おひさまを見て「うわーー」と。「うん、これはきれいだ」と。
「でしょ? ほら、チリチリしているのだ」 「してるね(笑)うん、確かにすごい」
やっと出たー。
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まぶしー。
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端っこが怖いワタシは、このように階段のところに立ってました。 それでも急な階段で怖い。
ワタシたちの隣で、じーーーっと黙って日の出を待っていたおじさんは、おひさまが顔を出してからしばらくの間、手を合わせて拝んでました。 逆光のシルエットになったその姿が、なんかカッコ良かったです。
そんなこんなで、初日の出ウォッチは大満足でございました。
帰り道、「コーヒーでも飲んであったまってから帰らない?」とワタシ。 「んー。 コーヒーは飲みたいけど、パパにも黙って出てきちゃったからなあ・・・」 「そっか」 「でもパパ、まだ起きないだろうし、大丈夫かな? やっぱ飲んでいこ」 「んー。 でもやっぱ、もしパパが起きてママがいないと何事かと思うだろうし・・・。 せっかく美しい初日の出を見られて良い気分だから、トラブルの可能性は避けよう。このまま送るよ」 「んー。わかった」
冷静かつ品行方正な自分が憎い。 普通の人ならこの後ホテルとかに連れ込むんだと思います。どんな普通の人なのかわかりませんが。 そういえばナナがまたアホなこと言ってまして 「こんなに日の出がキレイなら、ここにラブホ作れば流行るんじゃないかな。ホテル名はそのままズバリ『朝日』でどうだ」と。 「せめてサンライズくらいにしないかい?」 「いやいや。いっそ『朝日旅館』とかでも良いかも」 「それなら『連れ込み宿 あさひ』のが良くない? でもさ、ラブホに来るような人が、朝日を拝むかなあ」 「それどころじゃないか」 「うん。ほかにやることいっぱいあるし」 ていうか、ヤることひとつしかないし。 カラオケとかね☆
この人、人が集まりそうな場所を見るといつも「ラブホにどうか」と言うんですが。 そんなにラブホが好きかねキミは。
ナナの家に着きまして。
「ちょっと待ってて。パパにじょりぃとコーヒー飲みに行ってくるって話してくるから」 「起こしちゃうと悪いんじゃない?」 「でもまあ、とにかく様子を見てくるから待ってて」
なんだなんだ。 そんなにワタシとコーヒー飲みたいのか。マイッチャウナー(*´∀`*)
結局パパ、起きてまして。 ナナが部屋のドアを開けたら「あけおめー」と声がかかったらしいです。 ワタシは日頃から良い子ですので、ナナが事情を話したらパパも「おう、行ってらっしゃーい」と快諾。 ナナとファミレスに行き、モーニング食べて久々にマターリと過ごしてから帰ってきました。
「なんか、今日の日の出は特別キレイだった気がする」とワタシ。他の日の出、よく知らないくせに。 「すごく良い1年になるんだよきっと!」とじょりぃ、どこまでも上機嫌ですよ。 「(笑)良い1年になるんだろうなーって思いながら、ずーっと思うだけで1年終わっちゃったりしてね」とナナ。 「でもそれってさ、結局すごく良い1年じゃない? いいことありそう!って思いながら1年過ごせちゃうんだよ?」 「確かにそうだ。それはかなりしあわせだ。良い1年だ」
そしてふたりで、場所が良かったよねー、ラッキーだったよねー、なんて話したんですが。
あれだけ「斎場怖い」とか騒いでいたワタシたちだったじゃないですか。 その結果、暗闇の住宅地を、不審者のごとくぐるぐるうろうろと走り回って、やっと見つけた良い場所で、ぽつんと車を停めて暗い中待機していたわけですが。
車を降りて歩いて行って明るい中で見てみたら、その空き地、墓地でした。 どーりで家が建たずに開けていたはずです。
知らない、気づかないって、強い。 という大事なことを知った、2008年最初の日。
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