ナナとワタシ
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「あたしって、落ち込むのが好きなんだと思う」
先日、メソメソナナとドライブしていたときのナナのセリフです。 とはいえ、この会話が出た頃は、もうかなり元気になっていたのですが。
「そうかもしれないね」 「やっかいだよね」 「やっかいだね。 でも、いいんじゃないの。落ち込みたいときは思い切りいけば」 「うん。 ていうかさ、家の中だと、落ち込みたくてもその場所がないのだよ」 「ふむ」 「みんなが自分の部屋に行ってしまえば、まあ、リビングで落ち込んでればいいんだろうけどさ」 「なんかピンとこないよね、リビングだと」 「そうなんだよ。 もっとこう、どっちかというと狭めの部屋で、どよーーんとしたいのだよ」 「わかるけど」 「あーあ。 家建てたとき、なんであたし自分の部屋をつくっておかなかったんだろー」
ナナの家は自由設計で、ナナが間取りを決めたのです。 末子ちゃんの手が離れたら、土日だけの住宅展示場の営業でもいいから住宅関係の仕事がしたいな、と言っているくらい、そっち系のことが好きみたいで。
「そうだよ。 なんで作らなかったのさ」 「必要ないと思っちゃったんだよー。浅はかだった」 「(笑)」
しばらくして。
「愛人でもつくるかな」とナナ。 「え!」
突然すぎます。 ていうか、愛人つくるなら、ワタシがいるじゃありませんか。(むなしい主張) 対象外なのは知ってますけど。
「愛人て。 年下のツバメとか?」 とワタシ。 この人は、年下のかわいい系にけっこう弱いんですよ。
「ツバメを持つには経済力がなさすぎますからあたし」 「そりゃそうだ」 「こう、あたしにやさしくしてくれてさ」 「うん」 「いつでも部屋に来ていいよ。 落ち込んでいいよ、って言ってくれるの」 「うん」 「で、その人は『ゆっくり落ち込んで』って言って、自分は部屋から出ていってくれるの」 「???????」
それって、愛人?
「もしかして、部屋があればいいのではないですか」とワタシ。 「どうもそうみたい(笑)」 「それって、愛人じゃなくて大家とか家主とか言うんじゃないの?」 「そうか(笑)。でも違うんだよ。家賃は払いたくないんだもん」 「なるほど」 「で、あたしと一緒にいたがらないというか、放っておいてくれる人がいいの」 「かわいそうな愛人」
「じょりぃはさー、前に、ひとりでこもれる避難用の部屋を借りたいって言ってたじゃない?」 「うん」
ていうか、前にもナナがこんなようなことをグチっていたことがあったので、どこか小さな部屋でも借りれば、ワタシも逃げ場があるし、ナナもひとりになれる場所ができていいかなと思って、「部屋借りたいな」なんて言ってみたことがあったんですが。
「あれはどうなったの?」 「この不景気ですから。 そんな余裕なくなりました」 「そうか。そうだよね。このへんだって、どんなに安いちゃちいところでも3万はしちゃうもんね。毎月だと大変だ」
間。
「それならさ、ワタシがキミ用に部屋を借りてあげるよ」 じょりぃ、「不憫な愛人」立候補宣言。 「え! ウソ! マジ?」 「(笑)」 「すごく小さいところでいいんだけど☆」 「はい」 「あ、でも、トイレは水洗じゃないとイヤです」 「・・・・そうやって、さっきは『3万くらい』とか言ってたくせに、気づけば8万くらいの部屋を借りるハメになる気がする」 「きゃはははははははははそうだよ絶対」 「ワタシがたまに行くと、すごく迷惑そうな顔される気がするし」 「かもね(笑)。で、いつのまにか、家財道具が全部あたしのものになってんの」 「ははははは」 絶対そうなりますよ。 「いつのまにか、1Kとかの狭い部屋に、家族で越して来ちゃってたりしてね(笑)」 「『居心地いいんだよねー』とか言ってね」 「あるかもーーーーー。『狭いと落ち着くんだよねー』みたいな。すごく貧乏性の家族って感じ。きゃはははははは」
こんな話してても、お互い実際に部屋を借りられるなんてことは思ってはいないんですが、たぶん。 架空の話でも、ナナにはなんだか楽しかったらしく。 空想上の逃避部屋。
そんなもんでメソメソがちょっとでも解消できるなら、いくらでも部屋を借りてさしあげましょう。 何しろ空想ですからね、お金かからないですし。 どんな太っ腹なことだって言えますしね。
と言いながら、ふたりしてやっすい部屋の空想しかできないあたりが、やっぱり貧乏性だったりします。
ああ、でもホントにワタシも欲しいです。逃避部屋。 ていうか、アジト? 子供時代から憧れのアジト。
・・・・・ワタシひとりのアジトなら、天袋で十分か。
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