ナナとワタシ
ナナとワタシ
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2004年07月28日(水) さびしくないかも

ナナが落ち込んでいた昨日、デニーズでビミョーな味のコーヒーを飲んでいたときの会話です。


いろいろな雑談の中で、ワタシの今後の仕事の展開などを訊かれまして。
それに伴って「海外って、いつ行っちゃうの?」とナナ。

これは、ワタシの今後の仕事が海外がらみ、なんて華々しい話ではなくて、先日のナナの妊娠騒動でドライブしていたときに、「いずれは海外で暮らしたいと思ってるんだー」と、ワタシが漠然とした希望を述べたことについてなんですが。


で、「海外っていつ行っちゃうの?」となったわけです。

「(笑)まだ全然決まってないよ」
「なんだ。 あたしはもう、何年かのうちに行ってしまうのかと思ったよ。人騒がせだな」
「スミマセン」
「もしそうなったら、きょんさんはどうするの?」
「・・・別に、来たければ来ればって感じ」 <カッコつけてます。
「ふうん」
「きょんはそれでいいんだけどさ、ワタシとしてはなっちゃんに対しての方が責任感じるかも」
「どうして?」
「学生時代から、ワタシの独立を信じてその頃から『手伝うから』って言っててくれてさ、実際独立したときは、結構な給料で勤めてた会社辞めてほとんど無給で手伝いにきてくれてさ」
「うん」
「なんだか、自分の勝手で、日本を脱出してはいけないような気がしてしまうんだよね」
「なっちゃんはだって、じょりぃがいなくても、どこでもお勤めできるんでしょ?」
「うん。優秀だからね。だから余計にさ」
「なるほどね」

「親のこともあるしさ」とワタシ。
「どんな?」
「今は元気だけど、これからどんどん弱っていくだろうし。置いてはいけないよね」
「ふうん。 いいよ。あたしが面倒みてあげても」

ナナ、真顔です。

「マジ?」
「うん」

ナナは先日、パパのおかあさまが具合悪くしたときも、ものすごく一生懸命だったんですが。
義理とはいえ親孝行したくて奮闘していたのですが、気づけば「ナナは蚊帳の外」的扱いをされていて、ずいぶんと傷ついておりました。
そのときに「ああ、この人、自分の親に対する罪滅ぼしをしたくて仕方ないのかな」とつまらない分析をしていたワタシだったのですが。
今日も、そんな心境で申し出てくれたのかもしれません。わかりませんけどね。

「じゃあ、そのときはお願いするよ」 しませんけどね。ワタシだって、そこまで人非人ではありません。
「いいよ」
「     でも、莫大な額の請求書が送付されてきそうな気が」
「(笑)それは当然だよね」

やっぱり。

「でもさ、実の親の介護って、すごくしんどいと思うよ。精神的にさ」とナナ。
「そうだろうね」
「体が弱ってるのを見るのもつらそうだし、なんか、いろいろとね」
「うん。 ワタシなんて今だって、親の頭脳がだんだん衰えていくのにすごくイラつくんだ」
「え。 ひどくない?それって。 あんなにシャッキリしっかりしているご両親なのに」
「そうなんだけどさ。 それでもやっぱ衰えてくるじゃん? あんなに頭の良かった人が、何についてもワタシより知ってた人が、なんでこんなことと思うことが覚えられなかったりぐずぐずしてたりするのを見るとさ、腹が立って来るんだよ」 やっぱり人非人です。
「つめてーよそれ(笑)」
「ワタシ、冷たいんだよ」
「ふうん」

間。

「たとえばその冷たさってさー、それは誰に対してもなの?」とナナ。
「誰に対してもというか・・・・。 ワタシがその人に期待している価値に裏切られると・・・あ、『その人に裏切られる』んじゃなくて、『価値に裏切られる』と、なんだけどね?」
「うん」
「もういいや。この人いらない。と、すぱっと切れてしまう」
「なるほどね」

間。

「その調子じゃぁ、誰かと(恋人として)つきあっても長続きしないわけだ(笑)」 と、ナナ。
「(笑)そうだね」
「結婚できないね(笑)」
「そうだね」
「架空の人は? ケラケラケラ」嘲笑。

ナナはワタシがずっと思い続けている人(って、実はナナのことですが)を、ワタシの妄想状の人物という意味で「架空の人」と命名しているのです。

「(笑)架空だから。妄想だから。価値が裏切られることないの」とワタシ。
「でもさ、やっぱそれって架空だからだよね。 その人と一緒に暮らせば、きっとあっという間にがっかりして、あっという間にすぱっと切るのだろうね」
「どうなのかな」
「だって、一緒に生活してると、相手のイヤな部分とかいっぱい目の当たりにしなきゃならないじゃん」

それはもう、きょんを相手に毎日経験しておりますが。
それでも10年以上一緒におりますが。

「そうだね」 と、一応。
「ダメだね」
「うん。ダメだね」



「それで、海外に行くとして、きょんさんはどうするの?」 しまったまだその話を引っ張るか。
「だから、来たければ一緒に来ればいいしって感じだってば」
「ふうん」

無言。

「とかカッコつけて言ってるけど、実際のところは『お願いっ。一緒に来てっ。さびしいよー。お願いしますー』とか頼み込んでいるような気もする」 カッコつけずに正直に打ち明けてみるじょりぃ。
「(笑)絶対そうだよ」 それが言わせたかったのか?

ふたりではははははと笑った後に

「でもワタシがいなくなったら、実はキミが絶対さびしいよ」

と、へらへらと冗談めかして、ナナを指までさして言ってみるずうずうしいじょりぃ。
心の中では、ガクガクブルブルで見えない汗をびっしょりと一気にかきましたが。
なんだか文法も変です。

言ってすぐに、バツが悪くてナナから視線を少し外したまま、へらへらし続けるじょりぃ。
ていうか、言わなきゃよかった。なんだか陳腐でした。


ちょっと間があいた後に


「そうだろうね。たぶん」


ナナが静かに言いました。



びっくりしました。
が、へらへらはキープ。 せざるをえないですよ恥ずかしくて。


へらへらと緊張した数秒後



「でもやっぱり、さびしくないかも」 薄くにっこりと、ナナ。


がく。
やっぱり。
そうだと思ったけど。

ちょっとさびしそう(たぶん)に笑うじょりぃ。


間。


「だって、なんていうか、距離の問題じゃないんだよ」とナナ。
「・・・・・・・」
「どんなに離れちゃっても、あたしの空想上の距離が近ければ、さびしくないの」
「空想上?」
「気持ちの問題っていうか・・・いつも心の中にちゃんとしっかりいてくれてれば、あたしはきっとさびしくない」
「・・・・・・・・・」
「なんか、夢見る少女のようなこと言ってるけどさ、あたしも(笑)」
「(笑)」
「あたしの頭の中で、あたしの気持ちを満たしてくれていれば、あたしはきっとさびしくない」
「それこそ架空じゃん(笑)」
「(笑)そう。架空の話。でもそれが大事なの。  あたしはだから、じょりぃがどこに行っちゃっても平気、きっと」


ちらっとナナを見て。
相変わらずへらへら笑いながら。


嬉しいような。
さびしいような。


たぶん、どちらかというとさびしかったんだと思いますワタシ。
「さびしい。行かないで」と、陳腐なセリフで返してほしかったんです。たぶん。
それって果てしなくカッコ悪いですけど。
それでも言ってほしかった。
ほしかったんですけど。


このナナの(意外な)強さは、ワタシをとても安心させました。
そして、ワタシは「ワタシがいなくても大丈夫な人」が好きなのです。皮肉なことですネ☆



でもきっと。

と、それでもワタシは思ってしまうのだよナナ。


キミ、ワタシがいなければ、きっとさびしくて


泣くぞ。 ずっと泣いてるはず。


てか、泣け。1mgくらいは。
それくらいでいいから。



でもやっぱ、泣かない方がいいかな。<こんなことまで優柔不断


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