ナナとワタシ
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「パパはさ、あたしに内職をやめてほしいみたいなんだよね」とナナ。
「なんで?」
「あたしが時間を気にしながら、きりきり働いている姿を見るのが『らしくなくて、なんだかなー』と思うんだって」
「ああ(笑)。気持ちはわかるよ」
「なんかねー、あたしがだらだらしてると『ママはまったく』とか言うくせに、結局『だめなヤツだなあ。やっぱオレがいないと』って思っていたいんだろうね」
「だめなヤツなんて思っていないと思うけど」
「思ってるよ。頼りなくて、何やらせてもダメーって。バカにされてる」
「パパはさ、ママのことすごく頼りにしているみたいだよ」
「え? まさかー(笑)」
ホントなんです。
パパと話すようになってまだ日の浅い頃、ナナが子供とお風呂に入っちゃったかなにかで、パパとワタシでじっくりとお話したのですけど。 ワタシはもう、ひたすらにこにこと話を聞いているだけだったのですが、それが話しやすかったのか、パパはいろいろとお話してくれまして。 ていうか、パパはいつもひとりでしゃべっているんですが。
「あのね、『なんだかんだ言っても、舵取りはアイツがしてるんだよなー』って言ってたよ」とワタシ。
「うそーー。 だいたいパパ、あたしのこと『アイツ』なんて言わないと思うけど」
「言ったんだもん。最近だって言うよ。アイツって」
「へー。意外。 でもそれにパパは『舵取り』なんて言葉使わないと思うよ」
・・・・ちまちまとうるさいな。
「『舵取り』は言わなかったかもしれないけどさ。でも、最終的にはナナが決定権を持ってるって言ってたよ」
「うそだーーーー」
「ホントだーーーー」
なんでそんなに意外なの? 自覚しているのかと思ってた。 だって、パパ、いつもナナの顔色をうかがっているし。
「パパがねえ・・・・」 まだ半信半疑のナナ。
「『土壇場では、絶対オレよりアイツのほうが強いだろうし』とも言っていたよ」
「え! どういうこと? 全然わかんない!」
「あのね、『結婚するときも強気だったんだよなーナナは』って言ってたよ」
「あたしが? どんな風に?」
「『パパの今の職業では、安心して結婚できない。子供も産まれるんだから、よく考えてみて』って言われたから、そうかーと思って転職したんだって」
「それは・・・・・言ったかも」
「強いねーそれって」
「あたしなんだかイヤなヤツだ(笑)」
「でもパパはねー、『あのときにナナがそう言ってくれたから、今の自分があるんだから、アイツすげーよな』って言っていたよ。ワタシはそれを聞いて、パパもすごいなー、えらいなーと思ったんだ」
「そうだねー。パパえらーい」
「『オレは案外ダメージに弱くてがっくりきちゃうことがあるかもしれないんだけど、そんなときはナナが強さを発揮するだろう』とも言っていたよ」
「パパがじょりぃにそんなことまで話したんだー」
パパは、プライドが高いので、自分の「弱さ」を人に話したりするようなタイプではないのです。 ましてや女性相手に。
「すごくキミのことを認めて、根っこの部分では頼りにしているように感じたよ。すごいじゃん」
「ホントだねー」
「パパがだよ」
「ああ(笑)。 そうだよ。 パパがすごいんだよそれは」
「幸せだね」
「うん。幸せだね。 パパ、そんな風に思ってくれてたんだー」
・・・・・・・・・・。
あーあ。 パパの株、上げちゃった。
まあ、いいか。
幸せな毎日を過ごしておくれ。
そしてその幸せの中に、ちょろっとワタシとの時間も入れといて。 そしてたまにはやさしくするよーに。
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