ナナとワタシ
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今日は、きょんとなっちゃんと花火を見に行ってまいりました。 けっこう大きな花火でして。 早めに仕事を終わりにしてしまって、3人で仲良く出掛けて。 場所を取った後、屋台を巡って、ビールも買って、レジャーシートの上で飲んだり食べたりしながら花火を待ち。
大きいこうもりがばさばさと飛び始めた頃に、花火が始まりまして。
見てるウチに首が疲れるんですよね。 途中から3人で川の字になって、ごろんと寝転んで。 きょんとなっちゃんの間で花火見ながら、蒸し暑さに参っちゃったなこりゃなんて思ったりして。
花火を見ながら、ワタシの意識はタイムトリップ。 この蒸し暑さ、ナナと夏祭りに行ったときとよく似てるなあ、なんて。
中学2年の夏。 部活が終わって帰ろうとしていると、ナナがやってきて 「今日、じょりぃの家の近くの××神社で、夏祭りがあるでしょ?」と。 「知らない」 興味なかったもんで。 「あたし、行きたい」 「一緒に行く?」 「うん。 で、じょりぃんちにそのまま泊めてもらえないかな?」
どっきり。
その頃にはもう、ナナのことは好きで好きで仕方なかったですし、中2ともなると性的にもいろいろとドキドキしてくる頃であります。 「泊まる」なんて、けっこう一大事でありました。
「・・・・うん。いいよ。お母さんに訊いてみる。たぶん大丈夫だと思うよ」 「じゃ、ダメだったら電話して?」 「うん」 「それでさー、あたしんちまで、自転車で迎えに来てくれない?」 「? なんで?」
いったん家に帰ってから、またナナを迎えに行って、それから二人乗りで神社まで? すごく遠回りです。
「あたしね、今日、浴衣で行きたいの。お祭り」にこっ
くらくらくらっ。
ゆ、ゆかた?
血圧高めだったら、鼻血だしてたかものじょりぃまだ13歳。もうすぐ14歳。
「浴衣だと、自転車こげないじゃん?」とナナ。 「そ、 そうだね」 「だから迎えに来てよ」 「うん。 いいよ」
当時から「おまえ何様だよ」的態度のナナでありますが。 ナナの浴衣姿を見るためなら自転車遠回りくらい。 どってことないです。
帰ってから、おそるおそる母におうかがい。
「あのね、今日××神社でお祭りがあるらしいんだけど・・・」 「あるみたいね」 「ナナがそれに行きたいから、今日うちに泊めてって言うんだけど、いい?」 「おうちの人は知ってるの?」 「たぶん」 「ナナが来てから、おかあさんがナナの家に電話して、おうちの人とお話できるのならいいよ」 「う・・・たぶん大丈夫だと思うけど。 でね、今日、浴衣で来るんだって」 「(笑) ナナはホントにませてるね。 じょりぃも着る?」 「ううん(ふるふるふる)。ワタシはいい(ぽ)」
たまに部活の子がみんなで泊まりにきたりしていたし、うちの親はすごくオープンでフレンドリーな人なのでたいてい心配ないのですが、ナナのことは「もしかしたらじょりぃに悪影響を与えるかもしれない娘」と認識していたフシもあり、ワタシとしてはびくびくしながら母におうかがいをたててました、このとき。 実際「つきあいを控えた方がいいんじゃないの?」と注意を受けたこともありましたし。(大きなお世話ですね今思えば)
で、シャワーを浴びて、ナナを迎えに行って。
ワタシ、ものすっっっっっっっっっっっごく緊張していたんですよこのとき。 アタマの中は、常にナナでいっぱい、なんて頃です。 お祭りなんかも、いつもは仲間みんなと一緒に行くのに、今日はふたりっきりで。 しかも、ナナは浴衣姿。 なんと言いましょうか、恥ずかしいですけど、ホルモン全開の頃ですしねえ。 興奮からくる緊張で、耳が遠くなっていたことを思い出しました。
そんなわけで、ナナの浴衣の色も覚えていないんですけどワタシ。もったいないなあ。
でも、はっきりと覚えているのは、初めて見る、ナナのうなじ。
後ろでひとつに縛れるほども髪の長さがなかったくせに、オシャレ娘だったナナは、「おねえちゃんに手伝ってもらった」と言って、手品みたいなことして髪をアップにしてきたのです。 アップ姿も初めて、浴衣姿も初めて。おまけにちょっとお化粧までしてるナナ。 ワタシが舞い上がって記憶がほとんど吹っ飛んでしまっていてもムリはありません。 と思いませんか。 思ってお願い。
浴衣の襟のところって、ぐいっと後ろに引っ張ってあって、うなじがすごく強調されるじゃありませんか。 そこに、初めて見る上げた髪。後ろ髪の生え際。長くて特徴のある、ナナの首筋。
人間の首って、こんなにいやらしいんだ。こんなにキレイなんだ。と。 この日がワタシの「首・肩フェチ」の始まりの日でございます。
お祭り自体はですね、田舎の小さい神社のお祭りですから、たいしておもしろいこともなくてですね。 なんだか、ワタシが異常に緊張していたせいか、ほとんど会話もなくて。 まだ子供のワタシは、「手をつなぎたいな」とか「髪に触ってみたいな」とか、そんなことばっかり考えてまして。 「今と一緒じゃん」というツッコミは控えていただいてですね。 顔はお化粧うっすらしていたので、ちょっと見るのがあまりにも恥ずかしくて、もう、ホントに首ばっかり見ていたので、もしナナが気付いていたとしたら相当気味が悪かったと思います。
気付いてなかったろうな。今になって心配ですが。
帰りは家までずっと上り坂。 二人乗りで上りは大変つらかったのを覚えております。
家に着きまして。
ワタシの部屋に入って「着替える」とナナが言ったので、適当に着替えてもらって。 見ないようにはしましたけど、「じゃ、部屋を出てるから、着替え終わったら声かけて」なんて気の利いたことを言う年頃ではまだなかったので、ワタシがそっぽ向いてる後ろでごそごそ着替えてましたけど。
パジャマになって、まだ髪がアップになったままで。 なんだかちぐはぐ。 アンバランス。 でもすごくオトナっぽく見えまして。
「寝る前に、ピンを取らないとアタマが痛くなっちゃう」とナナが言って、長くない髪を無理矢理まとめていたピンを外し始めました。
びっくり。
いくつ出てくるんだろう。 と、固唾を呑んで見守ってしまいました。 途中まで数えてましたけど。たしか25本くらいまで。 ワタシの中には、そこまでしてオシャレしたいなんていう感覚は皆無だったので、とにかく驚きまして。
「そんなにピンをとめてて、頭痛くなかったの?」 「痛いよ。つれるし」 「でもしてたんだ」 「髪を上げて、浴衣を着たかったの」
そして、髪がぱらりぱらりとほどけていくほどに。
シャンプーの香りが。
くらくらくら。
そのあともやっぱりお互いあまり話をせずに「おやすみ」と。 当時は無邪気に、当然のように、ワタシの小さいベッドにふたりで潜り込んで。
ナナはすぐに、ワタシに背を向けてしまいました。 ワタシは寝られるはずがなく。 キスしたいな、しちゃったらどうなっちゃうのかな、寝てるときならしてもバレないのかな、なんて考えながら。
一晩中、ナナのうなじを見つめておりました。
陽に灼けて、産毛の多い、今のナナのものよりずっと若くて青いうなじ。
蒸し暑い夜でした。とにかく暑かったです。
翌朝、ナナを家まで送って、帰ってきたら、ベッドの宮のところにナナのピンがごっそりと。 忘れて行っちゃったのか。お姉ちゃんのって言ってたのに、今頃怒られてるのかな、なんて思いながら
両手にピンをすくうように持って、やっぱり匂いをかいでしまいますよね、誰だって。 と、みなさんも巻き込んでみましたけど。
ちょっぴり鉄くさい匂いと、うっすらとナナの髪の匂いが。
どんっ どんっ と上がる花火を見ながら、 蒸し暑さの中、何十本ものピンのビミョーな香りを思い出していたじょりぃでありました。
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