三十一文字
ナオコ



 


こんな真っ暗な夜の真ん中に
わたしをひとり置いていかないで。


喉の奥で必死に乞うけれど
声を出すことができない。


あなたの寝息が静かに聞こえ始めて
取り残されたわたしは怖くて怖くて
ベッドにい続けられなくてドアを抜け出す。


こんな真っ暗な夜の真ん中に
どうかわたしをひとり置いていかないで。



   *        *



あなたは冷たい穏やかな声で
深呼吸をして、もうおやすみ、と。
なだめる口調で全てを封じ込める。


わたしが欲しいのは腕枕じゃなくて
根拠のない「大丈夫だよ」でもなかった。
話を聞いてください
ほんの少し理解してください
ここに広がる闇に、
一歩だけでいいから踏み込んでください。


声は出ずに
願いは届かずに
わたしは取り残される。


本当は、ずっと前からこの人は
わたし自身に関心がなかったことに
気付いてしまった闇の中
手探りで出口を探しはじめる。
ここは、どこ。
わたしは、一体なぜこんなところに。





2007年01月16日(火)
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