日常些細事
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庭に昆虫の死骸が落ちていた。 体長およそ3センチ。全身が黒い。羽根をぴったり体に貼りつけ、6本の足が凍えるように縮かんで、大きからぬ体が一層小さく見える。 うちの庭で幼虫を育てていた母親蜂である。 この種の蜂の寿命がどれほどなのか、私はまったくわからない。 おのれの使命を終えて命をまっとうしたのだろうか。 それとも朝夕肌寒くなった10月の季候に耐え切れず、子育て半ばに倒れてしまったのだろうか。 庭の主である私としてはそのほうが有難いのだが。蜂の子供らに、春になって敷地内をブンブン飛びまわられてはたまらない。 けれど虫の本能とはいえ、しばしも休まずエサの芋虫を捕まえては巣に運んでいた、あの努力が報われないとすれば不憫であるなあ。 骸のまわりをもう蟻がうろついている。 かつて巣の存続をめぐり攻防をくりひろげた好敵手。それが蟻たちにたかられる姿を見るのは忍びないぞ。 母親蜂をひろってビニール袋に入れた。 かわりに『蟻の巣コロリ』を置いておく。
ひら仮名は凄まじきかなはははははははははははは母死んだ
仙波龍英
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