ネタ帳

コノハナ【MAILHOME

人の頭脳加えたときに 6
2005年12月28日(水)

富士山麓にオウム鳴くでおなじみの富士山麓。
この日本を代表する美しい山のふもとにある光子力研究所では、シロー少年が伝書鳩を使って通信文を飛ばす事を計画していました。
それを聞いて、この科学の時代に伝書鳩なんて、と笑うさやかさんと甲児くん。
兜博士と弓博士の血を引く二人は、科学を信じる人々でした。
そんな甲児くんの目下の関心ごとは、どうすればマジンガーZが空を飛ぶか、いつになれば、マジンガーが空を飛べるようになるかということ。
一足先に飛行能力のある機械獣を開発したドクター・ヘルに、空を飛べないマジンガーZはここのところずっと苦戦を強いられているのです。
マジンガーZが空を飛べたら、マジンガーZが空を飛べたら!
甲児は何度そう思ったことでしょう。
ああ、マジンガーZは空を飛ぶ翼を持っていなかったのです。
これまで度重なる空飛ぶ機械獣の襲来は、甲児の機知と操縦技術で辛くもくりぬけてきたものの、いよいよそれも限界に近づいてきました。
マジンガーも空を飛べなければ、この先勝利はないのです。いよいよマジンガーZも空を飛ぶときが来たのです。
神にもなれば悪魔にもなる“魔人”を受け継いだ遺産相続人は、幽体離脱だ空中浮遊だ、などという非科学的なことに心奪われる間ではありませんでした。
そうです、兜甲児は、科学の人だったのです。

いやあ、おもしろいですね、マジンガーZ。
こんなに何遍もレビュー書いている私はもしかして、マジンガーにはまっている?

まあ率直にいうと、このアニメは今見てもおもしろいかというと、必ずしもそうとは言えないのではないかと思いますよ。

古いアニメ、キッズアニメを褒めるときに、今観ても少しも古さを感じさせないとか、時代を先取りした先見の眼があるとか、大人が見ても鑑賞に耐えられるという賛辞がありますが、この作品は、今観れば、絵も古いし、話も古いし、価値観も古臭い。ストーリーも単純で構成も単調、謎もなければ、キャラもステレオタイプ、さらに人気番組の宿命で、話数も多く引き伸ばし感もいなめない。けして完成度が高いというわけではありません。はっきりいえば、子供向きアニメとしかいえないのではないかと思います。

この話には革新的な事象がら多数登場するのですが、それはあくまで放映時のことであり、その時には画期的だったことがらも、今の目からみると、驚くに値することではありません。なぜなら今日の作品に、それは珍しくもなく、当たり前のように存在しているからです。

このアニメは時代の波に乗りすぎており、時代の要求にマッチしすぎており、そのため、当時は優れたアニメであっても、その時に生きていなかった人々が、今鑑賞するには、物足りないんじゃないでしょうか。
当時を懐かしむ、レトロな世界を楽しむ、歴史を知る、先人の遺産を紐解く、時代を振り返るという意味では、大変貴重で意義深い作品であることに少しも疑問の余地はないのですが、今、2005年の今、今見ておもしろいかと尋ねられると、必ずしも、イエスとは答えられる作品ではないと思うんですよ。
つまりは博物館に収められている宝のようなもので、パイオニアとしての価値や、のちのクリエイターたちに与えた影響という点では、偉大すぎるほど偉大ですが、じゃあ、今の子供や少年少女がこれを見てよろこぶかというと、それは補償の限りではない。これが楽しいのは、オールドファンやスパロボファンや豪ちゃん信者ぐらいじゃないでしょうか。マジンガーZはオールドファン向けのアニメといっていいでしょう。

けれど、けれどですね、ドクター・ヘルが一足先に空飛ぶ機械獣を開発して、空を飛べないマジンガーZが苦戦するあたりから、話が急におもしろくなってくるんですよ。このあたりは、今観ても、非常に面白いです。
毎回毎回ピンチに陥ったZが、それを「操縦する者の知恵」とそれを「開発する者の力」で克服していくところがかなりいい印象です。
私も見返すまで知らなかった/忘れていたのですが、マジンガーZは空を飛べません。
これが大変話を盛り上げてくれるわけです。
最初のうちは機械獣も飛べないので、静岡県の片田舎(沼津・富士・裾野・御殿場・伊豆限定 私の家があるところだ!毎週毎週破壊されるあたくしの町!そして翌週には復興しているあたくしの町!)で、ボカボカ殴りあうというのんびりした話が続くのですが、ひとたび、ドクター・ヘルが飛べる機械獣の開発に成功すると、とたん光子力ファミリーは苦戦しだすのです。
そこで、甲児は毎回、いろいろ工夫して、飛べないマジンガーで勝利をおさめるのですよ。
あるときは飛べないZに代わって、ホバーパイルダーでドッグファイトして射程内に誘い込んだり、あるときは目を怪我して包帯をしたままの目くら操縦で、無線誘導だけを頼りに、兜邸から研究所まで飛行したり、またあるときはおっぱいミサイルをカタパルト代わり使用して、空を飛んで見せたり。
おかげでどんどん操縦技術があがるわけですが、そうすると今度は、マジンガーZの性能が彼の能力に追いつかなくなってくるのです。
そうしているうちにも、ドクター・ヘルは次々と強力な空飛ぶ機械獣を導入してくるのです。
つまり、甲児の操縦能力やドクター・ヘルの技術力はのびているのに、それにZの性能とと光子力研究所の技術が追いつかなくなってくるのですよ。
ドクターヘルに光子力研究所が追いつかないというところも面白いのですが、甲児の腕がマジンガーZの性能を上回ってマジンガーを凌駕していくところがとにかく面白いっす。

同じ時期に放映されたデビルマンが、薄汚れた東京の街で、不健康そうに悪魔街道ひた走っているのに、マジンガーZは、美しい富士のふもとで健康的に科学の道を進んでいるというこのベクトルの相違が、非常におもしろいですね。同じ作者が書いて、同じ源泉なのに、2つはどんどん、かけはなれていっているところが、なんともいえずナイスですね。

さあ、いよいよ、来週は、マンジンガーZ最大の見所、ジェットスクランダー登場の回です。
まちにまったマジンガーZが空を飛ぶ話。兜甲児も光子力ファミリーも30年前のお茶の間の子供達も、みんなが待っていたこの瞬間。
当初マジンガーZを上手く操縦できなくて苦労していた甲児の能力が、マジンガーZに追き、そして、今度は、光子力研究所の技術がマジンガーZと甲児に追いつくのです。
祖父が残した遺産と、甲児の能力と、光子力研究所の技術が、いよいよ次回一つにドッキング!

合言葉はデビルウィング!(声・田中亮一)じゃなくて、スクランダークロス!(声・石丸博也)

これでようやく、マジンガーZもデビルマンと一緒に空のツーリングを楽しめるぞ。よかったな、マジンガーZ。



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