武ニュースDiary
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2003年06月03日(火) |
「恋する惑星」のエピソード・3 |
「恋する惑星」の話を、続けてもう1つだけ。 少し重複する部分もありますが、こちらの方がより詳しく書かれています。
金城武、ウォン・カーウァイと出会う ――千里馬と伯楽がそれぞれの長所を伸ばし合う
金城武は萎縮してしまって手が伸びず、 エキストラのインド人を力をこめて殴ることができない。 エキストラも申し訳程度にはむかうかっこうをするだけだ。 「カット、カット、カット!」 監督のウォン・カーウァイは飛び出していくと、エキストラをつかみ、大声で怒鳴った。 「殴るんだ、本気で殴るんだ、打ちのめせ!」 金城武は横でそれを聞いて震え上がった。 彼は考えた、このエキストラは本気で自分を殴ってくるだろうか、 自分はどうしたらいいだろう? 考えがまとまらないうちに、監督は号令を出していた。「アクション!」 もう間に合わない。金城武の自衛本能は飛びかかってくるエキストラに、こぶしを炸裂させた。 2人は一瞬もつれあい、全力で攻撃しあった。 土ぼこりがおさまったとき、武演じる刑事は、エキストラを押さえ込み、 見事、この「悪者」の頭に銃を突きつけていた。
監督のウォン・カーウァイは昨日、この迫真的なシーンに話が及んだとき、 得意げな笑みを口元に浮かべて言った。 「俳優の心理を理解すれば、簡単に彼らの内心にあるもの(情感)を 表につかみ出すことができるのさ」 このシーンの金城武のアクション演技における、彼の内心の情動とは、メンツの問題である。 つまり、みんなが見ている前でエキストラにたたきのめされたくないということだ。
ウォン・カーウァイは「即興」のスタイルでチームを組織していく。 カメラマンのジェフ・ラウはウォンのやり方をジャズの演奏のようだと言っている。 各人はみな、自分が何をしなければならないか、大まかに知っていて、 実際の成果は、カメラが回り始めてようやく明らかになる。 金城武は「恋する惑星」の撮影の後半には、すでにこの種の即興演技をのみこんで、 自由自在に演じていた。電話をかけに急いで走っていく場面を撮ったときのこと、 彼はあまりにあわてて走ったので、靴が脱げてしまったほどだった。 ウォン・カーウァイはそれがすごくいいと思ったが、 撮り終わったあとで金城武が得意そうに駆け戻ってきて、 こう言うとは思ってもいなかった。 「ぼくの靴の脱げ方、よかったでしょ?」 なんと、自然な感じで脱げたように、武がわざとしたものだったのだ。
ウォン・カーウァイは言う。 「金城武はもっと大人になったら、きっと監督いじめの俳優になるだろう」 ウォン・カーウァイは、フェイ・ウォンも、金城武と似た素質を持っていると見ている。 レスリー・チャンは、ウォンの監督した映画のNG回数記録保持者だ。 「欲望の翼」で42回のNGを出したのである。 (聯合報 1994.8.20)
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