(仮)耽奇館主人の日記
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2006年01月26日(木) |
伴侶としてのにゃんこのこと。 |
教え子の紅胡蝶が、猫を飼いたいというので、お目当てのスコティッシュ・フォールドの飼い主である藤沢の知り合いに当たったり、ペットショップ、友人、知人と連絡をとったりしている。 ただ今、布団の中で静養中だが、「おそいひと」でダークサイドにすっかり火がついて、ただでさえひどい癖の歯軋りがさらにエスカレートして、枕に血痕を残すほどになったので、心機一転、頭を明るい方向へ持っていくことにした。 犬もいいが、猫はもっといい。 私が猫の方を特に好むのは、犬のようにベタベタしてこないことだ。 気まぐれで、甘える時はこれでもかというくらい、男心をくすぐる。 私が初めて飼った猫は、高知市の女の子からもらった雑種の黒猫で、羽田空港のロビーが初対面だった。 まだ子猫で、市川の実家で運搬用ケースから出したら、それこそ、ものすごい勢いで、天井まで駆け回り、本棚の後ろに隠れてしまった。 で、私は相手が落ち着くまで、じっと待って、エサと猫用ミルクの入った二つの皿を部屋の真ん中に置いて、またじっと待ち続けた。 そのうち、空腹に耐えられなくなったのか、子猫はそろそろと出てきて、私の顔をじっと、用心深く見つめたまま、上目遣いでミルクをぴちゃぴちゃ舐め始めた。 「おまえの名前は何にしようかね?」と私。「メスだってえから、女の子らしい名前にしないとな」 当時まだ生きていたオヤジは、黒猫だから、クロと勝手に呼んでいたが、そのうち、ロクと呼ぶようになった。いたずらばかりするので、ロクデナシのロクとして、ロクと呼んだわけである。 私はオヤジのセンスを頭から拒否していたので、オヤジの呼び方を消去するつもりで、心を込めて、ニーナと呼んだ。 今思うと、ニーナはどっちの名前でも反応していたが、最初はほんとうに、私たちに慣れるのに時間がかかった。 まず、ミルクを舐めているところを、頭を撫でようとしたら、もうザンコクに、ザックリと引っかかれた。 四針も縫ったくらいで、現在でもうっすらと傷跡が残っている。 で、私は妙案を思いついて、エサとミルクの皿を、一週間着通したTシャツの上に置いて、私の匂いに慣れてもらおうとした。 このアイディアはうまくいって、だんだん、ニーナは寝る場所を私に近づけていった。最初は布団の足元、次は股のくぼみ、そして、胸の上。 最後に、一緒に布団の中で眠るようになった。 一緒に暮らすようになって、まず困ったのが、トイレのしつけ。 ちゃんとトイレではするのだが、性格が私に似てきて、興奮すると布団の上でおしっこを盛大に噴出するのである。 その度に、布団を買いなおすのだが、何回もやるので、とうとう一年以上もおしっこだらけの布団で寝とおした。 そこで、さすがに、ニーナはその臭さに耐えられず、やっとトイレのみで用を足すか、外に行ってやってくるようになった。 それを確かめて、やっとこ新しい布団を買ったのだが、今度は私が臭いのない布団になじめなくてなかなか眠れなかった。 腹が減ると、ニーナはほんとうにうるさかった。 これも私にそっくりで、ストレートに、猫パンチを食らわす。 寝ている私の顔をぺちぺちと叩き続けて、それでもなかなか起きないとみるや、おでこにザックリと爪を食い込ませる。 そのうち、子猫だったニーナの胴体がやたら長くなって、女っぽくなってきたので、赤い鈴つきの首輪をつけてやった。 のみ除けの首輪は、首がかぶれると聞いていたので、薬を垂らす程度にとどめておいた。 さて、成長したニーナがまずやったことといえば。 ハンティングである。 猫の飼い主の皆さんも覚えがあるだろう、とった獲物を見てくれと見せびらかしにくるあれだ。 その日も早い朝で、何か生臭い匂いがするなと思ったら、枕元でニーナがおすわりしていて、前足で何かをコロコロさせている。 よくよく見たら、雀の生首だった。 ウヒッと悲鳴を上げて、後頭部を本棚に激しくぶつけて、こめかみに、落ちてきた国書刊行会のハードカバーの本の直撃を食らってしまった。 それ以来、ヤモリだの、ゴキブリだの、半分に千切れたドブネズミだの、あまつさえ、当時飼っていたハトまで見せびらかしに来た。 教え子の紅胡蝶は、そういう「残骸」を崖の上から投げ落としていたそうだが、私は全部ちゃんと庭の片隅に埋めてやった。 現在はその埋めたところに、グミの木が植わっている。 そんなニーナの猫としての本能を少しでも発散させようと、私はこんな遊びをした。毛布ごしに手をモゴモゴさせながら、ニーナに飛びかからせるというやつである。 ニーナ、ニーナと呼んで、毛布ごしに手と指でモゴモゴ。 ニーナはハッとして、毛布の一点をじっと見つめつつ、体勢を入れ替えて、おしりをフリフリさせて、くわっと飛びかかる。 しかし、その瞬間、手を引っ込めたので、ニーナにとって「何か」は消えてしまっている。 しかし、この遊びはある日の惨劇をきっかけに、終わってしまった。 ある日の朝。 私は突然、チンコに猛烈な痛みを覚えて、ウギャー!と悲鳴をあげてしまった。 飛び起きてみると、毛布ごしに、朝立ちしたチンコにニーナが噛みついた挙句に、爪をザックリ立てている。 このバッ・・・とうめいて、ニーナをはらいのけて、トイレにこもって、チンコに赤チンを塗った。 それ以来、私はうつぶせに寝るようになった。 現在でもうつぶせに寝るが、こういうことがあったからである。 そんなこんなで、ニーナが車にはねられて逝くまで、実に楽しく暮らしたものだ。 猫は伴侶である。 犬と違って、ベタベタせず、甘える時は甘える。 そういう関係が一番望ましい。 紅胡蝶の伴侶は、じっくり選ぼう。 今日はここまで。
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