(仮)耽奇館主人の日記
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2006年01月09日(月) ブックバトン、あるいは奇想の果てのこと。

フミ先生から唯一無比のバトンを受け取りました。
まず。
私にとって本とは。
幼少時からの、最大の話し相手、友達でした。
人並みに会話が出来るようになって、血肉を備えた友達が出来るまで、私は文字通り、本で世界を知ったわけです。
それゆえに、読んできた本の量は、我ながら呆れるくらい膨大の一言につきます。

●持っている本の冊数

去年、二年かけて、お寺、実家、ここと蔵書の正確な数量を把握したんだけど、十六万二千七百八冊でした。雑誌も含む。

●今読みかけの本 or 読もうと思っている本(既読、未読問わず)

<読みかけ>

・「魔術はささやく」(宮部みゆき著 新潮文庫)
→魔女ヴィイから借りた本のひとつ。宮部みゆきは、今まで食わず嫌いで敬遠していたんだけど、これは面白い。こんなにそわそわしながら読み進められるのは、高村薫の「マークスの山」以来。宮部みゆきを侮っていたぜ。

・「死刑執行」(ルイ・アラゴン著 新集世界の文学第三十四巻収録 中央公論社)
→ブニュエルの「昇天峠」のプラスαとして、フミ先生に用意していた本。しかし、注文先のネットビデオショップからの連絡で在庫切れとの悲しい知らせが。それでも送るつもりだけど、それまで拾い読み。同時収録されているブルトンの「ナジャ」は幻想的ではあるが、アラゴンの本作は現実的な立場からシュールレアリスムを描いた物語で、なかなか読みごたえがある。

・「エレキング・第六巻」(大橋ツヨシ著 講談社)
→週刊モーニング連載中の四コマ漫画を収録した六冊目の単行本。私は大橋ツヨシの熱烈なファンで、彼の単行本は全部そろえているくらいである。デビュー作は、宮沢賢治の童話(しかも発表先があのガロ)という異色な出だしの人で、デビュー以来、ずっと独特のスタンスでほのぼのと笑わせるのがたまらなくいい。

・「すぐ役立つ家事のコツ・家内安心・暮らしの便利事典」(小学館)
→私は血液型がA型。それをずばり示しているようなセレクト。笑。小さい頃から家事はけっこう好きで、友達の家に遊びに行くと必ず台所の洗いものなどをしていたくらいである。これは最近寝る前に必ず目を通していて、一通り頭に入っていても、おさらいをしながら、明日はあれをやっておこうと気分を引き締める。これが実は私の精神的な健康の秘訣なのである。

<読む予定>

読みたい本・読み返したい本・読まなくちゃいけない本・・・ありすぎて書ききれない。
これはフミ先生の回答だけど、私も全くその通り。
例え読破した本でも、今の年齢で読んだら、全然違う印象になる作品もあることだし。
今度再挑戦したいのが、三島由紀夫の「豊饒の海」四部作。
で、三島文学のあく抜きとして、必ず読んでるのが、開高文学。
私的に、古典文学の峰が三島、現代文学の峰を開高と考えているため。
ベトナム戦争のルポを元にした「輝ける闇」(新潮文庫)は、自分自身をもさまよわずにはいられない現代人に通じるものがあるので、そういう意味でも、開高文学はあまりにも現代的なのである。

●最後に買った本

・「時代劇漫画ジン(刃)2006年2号」(小池書院)
→定期購読している雑誌のひとつ。私は小池一夫の大ファンで、小池ものはほとんど持っていて、現在もコレクション中。この雑誌の目玉は、「レイザー」という漫画作品。主人公が「御用牙」で七十年代を沸かせた板見半蔵。老いた半蔵が、アメリカに渡って、マーカスという名前で相変わらずの、名刀(チンポ)ぶりとかみそり(頭の切れ)ぶりを展開させている。

●特別な思い入れのある本、心に残っている本5冊(まで)

あくまでも、今現在では、ということで。
 
・「世界の恐怖怪談」(荒俣宏・竹内孝夫著 学研ユアコースシリーズ)
→犬神博士こと私自身の人格形成に決定的な影響を与えた、ルーツ中のルーツ。私が持っていた本は中学にあがる前に紛失、長年探し求めたが、去年になってフミ先生とのプレゼント交換で、感激の再会を果たす。ちなみに定価四百八十円がレア価格で、三万近く。レ・ファニュ、ラヴクラフト、ビアスなどの海外の名だたる怪奇と幻想の作家たちを子供向けに書き直したオムニバスで、七十年代独特の濃い挿絵やエッシャーの版画とともに、豪華絢爛の一言につきる本。現在ではこんな本はもう出版不可能。で、私は、それぞれの作品世界に耽りつつ、オリジナルを読もうと、あれこれと収集を始めて、現在のようなマニアに成長したわけである。

・「マルペルチュイ」(ジャン・レイ著 妖精文庫・月刊ペン社)
→私にとって、世界最高の幻想文学作品。この内容に比べたら、あのロード・オブ・ザ・リングもナルニア物語もゲド戦記もかすんでしまうほど。なにしろ、発想が凄い。古代ギリシャの落ちぶれた神々を生け捕りにして、人間の皮に詰めて、マルペルチュイと呼ばれる館に幽閉するという物語である。ここで展開される、主人公とゴルゴーンの娘の恐ろしく、そして悲しい恋愛は非常に私の心を打った。
ヨーロッパ映画界が、ハリウッドに対抗して、本物の幻想映画作品を作るとしたら、この作品が究極のものとなるはず。

・「パンの大神」(アーサー・マッケン著・平井呈一訳 怪奇小説傑作集第一巻 創元推理文庫)
→私が初めて読んだオリジナルの怪奇小説が、創元の怪奇小説傑作集五巻組みだった。その中でも、何回も読み返すほど耽溺したのが、本作。小学生の頃、下手くそながら、水木しげる調に漫画化したくらいである。笑。平井呈一大先生の独特の語り口がたまらない。古代の神に憑依された妖女が、次々と男を篭絡して殺していくという物語だが、それだけではすまない読後感が首筋を撫でるという恐るべき名編。

・「妖虫」(古賀新一著 秋田書店)
→従姉はその昔、ひばり書房からの怪奇コミックスを全部持ってて、私が日野日出志や古賀新一などを知るきっかけになったのだが、古賀新一は「エコエコアザラク」の影響もあって、私の非常に大好きな作家のひとりになった。その中でも、「妖虫」は、マジで映画化を狙っているほど、ベタ惚れに惚れた作品である。蝶々などを採集する孤独な主人公が、「突然変異」を起こして、奇怪な生物に変身を遂げ、周囲に様々な影響を与えつつ、究極の進化を遂げるという、Xファイルも真っ青な内容だ。特に、主人公が「逆成長」を遂げ、胎児に変わっていきながら、絶望と快楽の入り混じった高笑いをあげるシーンが忘れられない。

・「火星人ゴーホーム」(フレドリック・ブラウン著・稲葉明雄訳 ハヤカワSF文庫)
→私のお茶目さ、しゃれっ気、ユーモアぶりの原点が、フレドリック・ブラウンである。シニカルな笑いを好むのも、ブラウンの影響が大きい。ブラウンと出会っていなかったら、私は恐らく、嫌味たっぷりの、意地悪な、根暗なオタクになっていたに違いない。それくらい、ブラウンの本作は、ほんとうに私の精神的成長に貢献してくれた。ティム・バートン監督の「マーズ・アタック!」よりもシニカルな内容で、火星から瞬時移動してきた、人を食った緑色の小人の群れが、人類を大混乱に陥れるという内容で、その結末はあまりにも衝撃的である。

●バトンをまわす人

今、ここエンピツにおいて、本を読む量とそれにともなう知識のマニアックさにかけては、私とフミ先生しか見当たらないので、残念ながらまわせる人はおりません。

今日はここまで。


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