(仮)耽奇館主人の日記
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2005年12月07日(水) 闇胎道のこと。

私のことをよく知らない人たちの中の、とびきり安直な輩は、私がお寺の息子だからという理由で、悪霊などを祓う霊能を有していると思い込んでる。その理屈で言うなら、中国人はみんなカンフーの使い手だと言わんばかりだ。呆れたことに、半年に一度は、至極真面目くさった文体で心霊現象の相談のメールを寄越したり、果ては直接お寺に来たりするのがいる。
当然、私は鼻で笑って、追い返すのを常とする。
ここではっきり申し上げよう、私は確かに神秘的なことは大好きだが、一度たりともそれを現実のものとして信じたことはないのである。頭から信じ込んでいるんじゃあ、どうかと思うぜ、全く。
すべての神秘的な事柄は、ほんとうに、それが好きか嫌いかというだけで、真面目に信じたり、語ったり、祭り上げたりするものではない。
そもそも、オカルト、即ち、隠秘学は、その字面が表しているように、人間の心の中だけの学問なのである。
呪文を唱えれば、鬼や悪魔、死人を呼び寄せるだなんて、確かにほんとうに出来れば素晴らしいことだろう。
その素晴らしさを思い浮かべられる豊かな心を育てること。
実は、それがオカルトの奥義と言っても過言ではない。
というわけで、雰囲気作りとしてのお祓いなら、いつでも受け付けます。
簡単だよ、得体のしれねえ文句を並べ立てられるより、得体のしれる雰囲気での方がよっぽど心の手術になるんでね。
例えば、以前、旧い日記にも書いた、佐渡島の秘法、エトリ。
これは、お互いの手のひらを刃物で切って、滴る血と傷口をぴったり合わせるようにして、握り締めるというものだ。
そうやって、穢れた血を自分の血で清めようという、実に、雰囲気たっぷりな心の手術なのである。
私の母方の、祈祷師だった大叔母が得意としていたやつで、私自身も榊の葉っぱで頭を撫でてもらったり、そんなことをやられたりで、すっかりやり方覚えちゃった。
で。
今回は、最近不運続きの紅蜘蛛お嬢様と、これまたマイナスぎみの紅胡蝶の二人のために、世に言う、「胎内くぐり」をアレンジしたお祓いをすることになった。
「胎内くぐり」を経験したことがおありだろうか?
下に引用した画像をごらんになれば、ああ、これかと思い当たる方がいらっしゃるかもしれない。
そう、母の胎内に見立てた「それ」をくぐり抜けることで、もう一度生まれ変わって、きれいな心身になるという雰囲気作りだ。
私は茅の輪くぐりも体験したし、善光寺の真っ暗な胎内くぐりも経験した。果ては、京都精華大学にて、三好隆子女史の作品も拝見した(ウレタン製のちくわみたいなのがそれ)。
で、私の見聞したものをひっくるめて、編み出した秘法。
名づけて「闇胎道」。「あんたいどう」と読む。
市川には、ここの自宅の他に、去年亡くなった祖母と母が住んでいた実家があるのだが、現在は無人で、寒々とした空き家。これを利用して、真夜中にこの家に入って、続き間に山積みにした布団の山の奥に入っている、仏像を取って来させると。
要は肝試しなのだが、冷え冷えとした、真っ暗な廊下を行って、障子を開けて、山盛りになった分厚い和布団の中に潜り込んで、仏像を取って、戻ってくる。このプロセスがなかなか心に効くはずである。
ただ、二人はやはり、私の性格を熟知していて、私がおとなしく見守っているわけがない、絶対、どこかで仕掛けてくると用心しているのだが、私は今回は悪ふざけは無しだよと申し上げることにしている。

闇の中 ただ我ひとり 光の矢

とにかく、なんでもいい、それなりの雰囲気に身をさらして、心に光の矢を。
合掌。
今日はここまで。








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