(仮)耽奇館主人の日記
DiaryINDEX|past|will
私の教え子の一人に、一匹の蝶々がいる。 蝶々だけに、とても壊れやすい羽根をしている。 でも、その存在は美しい。 今日、彼女は十八歳になった。 秘密の名前を呼んで・・・ 「お誕生日おめでとう」。 ・・・・・・ 君にホセ・ドノソの「夜のみだらな鳥」の冒頭に掲げられた、 ヘンリー・ジェイムズの言葉を贈る。
分別のつく十代に達した者ならば誰でも疑い始めるものだ。人生は道化芝居ではないし、お上品な喜劇でもない。それどころか人生は、それを生きる者が根を下ろしている本質的な空虚という、いと深い悲劇の地の底で花を開き、実を結ぶのではないかと。精神生活の可能なすべての人間が生まれながらに受け継いでいるのは、狼が吠え、夜のみだらな鳥が啼く、騒然たる森なのだ。 ・・・・・・ 私は君に言う。 マイナスに呑まれてしまうほど、君は「人間」の形をしていないと。 そこらへんの、普通の、「人間」・・・ マイナスと対峙すると、何も出来ずにマイナスそのものになってしまう、脆弱にして醜悪無残な「人間」たち。 世の中に揉まれることに慣れずに育った彼らは、だからこそ、周囲にも、自分自身にも弱く、醜いのだ。 「人間」であるよりは。 一歩下がって、「人間」を客観的に眺められる「何か」になりたまえ。 自分自身を壊して、新しい自分自身を手に入れるために・・・ まず。 マイナスを呑みこんでしまいたまえ。 そっくりそのまま、創作意欲・・・叫びの材料になるぞ。 君の秘密の名前を呼んで・・・ 吠えたまえ、啼きたまえ、君自身の森を騒がしたまえ。 ・・・・・・ 君の行く道に、この曲を贈る。 スターリンの「ワルシャワの幻想」だ。
オレの存在を頭から輝かさせてくれ! おまえらの貧しさに乾杯! メシ喰わせろ!
今日はここまで。
|