(仮)耽奇館主人の日記
DiaryINDEX|past|will
2004年12月20日(月) |
MY SWEET LORD |
十九日の日曜日、母が亡くなった。 享年五十五歳。 死因は心不全。 母方の一族は、全員、何かが足りなかったり、足りすぎたりするという特徴があったが、母は生まれつき心臓が弱く、生涯において五度も大手術を受けていた。 元々長生き出来ない身体だったのである。 それが、ここまで生きながらえたのは、奇跡に近いと医師は驚嘆していた。 息子として・・・ 私は辛い立場のはずなのだが、そんなに辛くはなかった。 ほんとうに辛いのは、先日、籍を入れたばかりの再婚相手の旦那さんだ。 全く予想もしなかった急死に、ただ狼狽するばかりで、私に向かって心臓のことを何故教えてくれなかったと怒ってみたり、畳にうつ伏せになるように嗚咽したりしていた。 私はただ黙っているだけだった。 息子として・・・ 私は母を愛していたのだろうか? 答えはイエスである。愛していなければ、私は母の再婚に賛成するわけがない。 母である前に、一人の女性として、好きなことをして生をまっとうして欲しかった・・・ それで十分、私は母を愛していたと言えるだろう。
・・・・・・
籍を入れた以上、喪主は再婚相手の旦那さんが務めた。 しかも、宗派がうちとは違うので、私はお寺としては一切ノータッチだった。 ただ、ほんとの、生身の息子として喪主に続いただけであった。 告別式が終わっても涙は出なかったが・・・ 家に帰って、母が大好きだったビートルズを一通り聴き、その中でもとりわけ好きだったジョージ・ハリスンのアルバムを聴いたら、涙が溢れた。 「ALL THINGS MUST PASS」の「MY SWEET LORD」を繰り返し、繰り返し聴いていたのだ・・・
My sweet Lord I really want to see you I really want to be with you I really want to see you Lord but it takes so long My Lord My sweet Lord I really want to know you I really want to go with you I really want to show you Lord that it won`t take long My Lord
私の愛しい神 おまえに会いたい おまえとともにいたい おまえに会いたいと心から思う しかしそれには多くの時間が必要だ ああ 私の神よ
私の愛しい神
おまえのことを知りたい おまえとともに歩いていきたい 神よ おまえに見せたい そんなに長くはかからんことを ああ 私の神よ
・・・・・・ 私は誤解していた。 母がジョージ・ハリスンのこの曲を愛していたのは、キリスト教に傾倒することで、オヤジのお寺への当てつけにしていたわけではないのだ。 そもそも、ジョージ・ハリスンは熱心なキリスト教徒ではなかった。 どちらかと言えば、インドの神秘主義にかぶれていた方だ。 私は今こそ理解した。 母が探し求めていた神とは、母自身だったのだ。 ・・・・・・ 私も私自身の神と巡り会える時が来るだろうか? 私の愛しい母よ。 今日はここまで。
|