2002年02月05日(火) |
続々・節分のお寿司=『勝手寿司』の謂れ? |
さて、登場しました『勝手寿司』、 『太巻寿司丸かぶり』以上に「何?それ?」であろう。
それは我が家で『太巻寿司丸かぶり』風習を取り入れる以前、 節分の日に食べていた寿司。 簡潔に言ってしまえば、 『ありもん(=冷蔵庫にある残りモン)で作った寿司』だ。
「なんでも有り合わせで、作ったらエエねん」であるが、 ただ一つだけ、守らねばいけないルールがある。
それは『酢を使うべからず』。
『太巻寿司丸かぶり』、 これは海苔業界の人が流行らしたとはいえ、 節分に行う風習としてそれなりに納得する謂れも用意されている。 「丸ままかぶるのは福を切らない為」だの、 「その年の恵方を向いて、福を呼び込む」だの、 後付けにしたってなかなか良くできた謂れだ。
ではなんで酢を使ったらあかんのか?
むかしむかし。 節分の日は「鬼がその辺、歩きまわってんでぇ」なので、 買い物に出かけてはならなかった。 夜に豆まきが行われるまで、昼間の街はひっそりしたものだ。 その日に食卓にあげるべき食材は前日までに買い揃えていた。 とはいえ、わざわざ買うべきは豆と鰯ぐらいだ。 後は「鬼を散らす」という事から、 作られていたチラシ寿司をつくるための材料。
節分の日のチラシ寿司など、鰯があるのだから、 上に豪勢な刺身などのせる必要はない。
干し椎茸、胡麻、シラス、でんぶ等々。 最後に欠かせない錦糸卵と、飾り付けにつかう赤や緑の野菜。 要するに常備されているハズの調味料で酢飯を作って、 常備されているハズの乾物を入れたり上にのっけたりして、 後は卵と、その時にある野菜で彩りを取りゃーエエのだ。
そんな訳で、チラシ寿司については「アレ、アレ!アレ、買っとかな!」 といった緊張感などつゆほどもなかった。 ところがある年の事。 なかったんですねぇ、お酢が。切らしていたんですねぇ、うっかり。
昔の人は律儀です。 「今日は買い物に出かけたら、アカンねーーーーん! 鰯食べてぇ!チラシ寿司食べてぇ!鰯臭と駄洒落で鬼散らしてぇ! 鬼ひとりづつになってぇ!勢力よわぁなったトコに豆まいてぇ! そんな卑怯な手ぇ、使って鬼撃退! 鬼散らす前に買い物行ったらアカンやん!恐いやん!鬼勢力分散させな! 鬼散らしてからやったら買い物に出かけてもエエけど………。 チラシ寿司、作られへんかったらアカンやーーーーん!」 と、焦ったトコロに目についたのが、橙。
そう、正月の御供え餅のお飾りに使われていた橙である。 神棚に御供えしていたのやら、各部屋に御供えしていたお飾りの、 小さめの葉付き蜜柑や橙から処分していっていたので、 鏡餅のドンの上にのっけられていた橙様は、 鏡開きから3週間過ぎてなお、今だ食されていなかったのだ。
「正月の御供え餅にお飾りしてた橙やんか。 コレ、いくらなんでもそろそろ使わな、水気とんでパサパサになんで。 ちょっと酸っぱみ弱そうやけど、コレ、使えるンちゃう? なんやったら、皮を鬼の顔めがけて絞ったら、汁が目に入るかもしれんし……、 アレ、目に入ったらけっこう痛いねん。 (↑かなりセコイ戦術である) そや、そや、皮をとっといてもエエし、果汁で酢飯もどき作ったらエエやん。 お吸いモンの香り付けにも小っさく切ってのっけたらエエし。 あー、コラええわ。あーよかった」 そんなこんなで、酢を使ったらあかんと言うより、 酢を使えない絶体絶命状態の中、 まさにありもんで作ったチラシ寿司。
意外や味は好評であり、節分の日以外にも 家人のリクエストにお答えして作られるようになった。 酢飯もどきを作るにも、橙が必ずあるとは限らず、 その時に家にある柑橘類、時にかぼす、時にユズ、 冬場には必ずちゃぶ台の上の篭にのっけられていたみかん。 夏場には、庭先からもぎってくる夏ミカン。 まさしく、その時々にあるもんで勝手気侭につくる寿司、 ついでにどんなに絶体絶命状態の中でも「鬼に勝って事を成す」という事で、 後々『勝手寿司』と呼ばれるようになったのだ。
===================== 続きがあります。 また読んでくださいね。
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