心中おだやかならぬ私に店長さんが、語りかける…… トコからですわ。
店長「いいえ、大丈夫です。ありますよ。 少々お待ちいただく事になりますが、 それでもよかったら」
店長さんは、私の心の動揺を知ってか知らずか、 明るく、親切に答えてくれる。
私「どれくらいですか?」
バイトくんはすでにレバーの串を焼きはじめている。 機嫌良さ気に。 待つといっても、普段待っている、 焼いてある串を温めなおすのを待つ時間と 大差があるようには思えない。
店長「2、3分くらいです」 私「じゃあ、2本お願いします。後、ステーキ串を一本」
私は心の中の動揺を悟られまいと、 穏やかな気持ちのヒトを装って、 店の前のプラっちっくの椅子に腰かける。 プラっちっく……もちろん、プラスチックの事である。 しかしこの時、私の心はすっかり、ボケ老人。 自分に都合のイイ事や、悪口しか耳に入らないボケ老人としては、 プラスティックはプラっちっくと言わねばなるまい。 表面的に穏やか気持ちのヒトをよそおうボケ老人…… ややこしいな、我ながら。 しかし、なかなかの演技派、でもある?
私は何をいったい動揺していたのか? バイトくんは私の顔を見て、こうつぶやいたのだ。
「……あっ、レバー……」←そのいち(昨日参照) …………ふふっ。こんなん言うてた。
バイトくんは確かに私がオーダーする前に、私の顔を見て 「……あっ、レバー……」と、つぶやいた。 そして私は動揺した。
「……あっ、レバー……」 「……あっ、レバー……」 「……あっ、レバー……」 「……あっ、レバー……」以下、百回くらいエコー続く 私の顔………見たよねぇ?つぶやく前に………。
『ひょっ、ひょっ、ひょっとして…… 私の顔みて、レバー、思い出したん? 私のコト、“レバーのヒト”って覚えているの? “レバーのヒト”って?』←そのに(昨日参照)
わたしゃー、彼らの頭の中で“レバーのヒト”として、 インプットされとんかい……? そ、そ、そんなんめっちゃイヤァーーーーー!!!
私は“レバーのヒト”って、覚えられているのでしょう……か? 誰か教えて? そんなん、イヤや。どうせ覚えられるんやったら “ステーキのヒト”のんがエエぇ〜〜〜〜〜!!! ………ええかなぁ? いや、なんか小金持ってそうかなって……ふっ。
『まっさかぁ〜、自意識過剰じゃなくって?』 頭の中に住む、妖精さんのつぶやきもあった。
『アナタの顔を見てレバーって、 つぶやいたんじゃぁなくってよ。 たまたま、レバーのお皿をみてカラだな、 って思った時にアナタが行ったのよ。るるるるるぅ〜』 例によって、例のごとく一瞬のうちに頭によぎる。 相変わらず、痛いな、自分よ。
プラっちっくの椅子に腰かけ、 頭の中の妖精さんとお話し中の私に、 店長さんが声をかけてくれた。
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