| 2002年11月01日(金) |
今の生活にこだわるな |
昔の職場の卒業生が集まりまして、品川で飲むことになりました。
昔の職場というのは、製鉄機械を作る事業部の生産管理あるいは 事業部管理をしていた部門です。そこにいた人たちが今では会社 から切り離され別の会社になったところにいたり、本社の事業管理 にいたり、別の事業部にいたり。東京近辺にいる人間だけを誘い、 集まったのは11人。もちろん男ばかりです。
最高で50過ぎ、若いのが20代後半という年齢層。 久しぶりに昔話に花を咲かせたというだけのことですが、こういう ことをするのが結構大事なんです。古いつながりにこだわっている ということではなくて、いわゆる情報交換の場になる。
同じ職場の先輩後輩、上司と部下の関係でしたが、今は別々なので そういう意味じゃ仕事の軋轢はほとんどない。ほとんどないという のは、例えば本社の事業管理の人と自分とは事業部の業績という 関係ではつながりがあるし、営業的には扱い品目が近い営業マンも いるということでね。
我々事務屋は長くて4年、短くて3ヶ月という期間でローテーション されますから、重なったものもいればそうでない者もいる。でも話題 の多くは製造拠点であった工場での出来事。思い出が多いから。
自分の場合だと89年の夏から93年の夏までだったから、バブルの 走りで景気が良かった時代からバブル崩壊で受注が激減した時代に 所属していたわけで、たった4年で工場の浮き沈みを見てしまった わけです。業種的な不況で87年、88年は大幅な人員カットを しており、バブル崩壊後はその削減のおかげでさらなる人員削減は 回避された歴史があります。それが理由かどうかは分かりませんが、 人員カットを切り抜けた人たちは、自分は選ばれた人だという勘違い をしてしまっているフシがあり、バブル崩壊後の円高のときに、その 円高の恩恵を受けることなく輸出で海外勢に負け続けたという苦い 過去もあります。要するにコスト削減を怠ったために価格競争に ついていけなかったということです。
製造業の宝は、熟練した現場の作業員ですが、彼らは昔ながらの 職人気質で効率というものを考えない。知りたかったら教えてもらわ ずに見て覚えろというのが典型です。当然、マニュアルも無し。 生産技術としてはマニュアルはあるんですが、現場ではそんなものは 無視してしまって、今まで培った熟練技術を大事にする。それじゃ コスト削減を必要としても同じ製造法であれば同じ工数が必要に なってしまうわけで、コストは下がりません。いくら営業が価格を 下げないとダメだと力説しても、それは営業が頼りないだけで、 自分らが悪いわけじゃないと変に自負してしてしまい、要するに コストの硬直化を引き起こしていました。(社員が変わらなければ、 給料のアップが伴うわけですから上方の硬直化です。)
バブルが崩壊した頃から価格競争の時代に突入しており、これは デフレの始まりです。ということは、インフレ時代には許されていた コストの上昇はその時点で許されなくなっていたということです。 その認識が現場にはなかった。もちろん営業や商務でもそのあたりは 重大なポイントだとは認識していなかった。営業は多少の赤字でも 受注することが是とされ、製造は仕損を発生させずに製造することが 是とされてきましたから。昔で言うマーケットいんではなくて プロダクトインの世界です。作って売れた時代はとっくの昔に過ぎて しまったというのに。でも実績と経験がモノを言う世界ですから、 新人が口出しする隙間は全く無し。本当に硬直していました。
これはまさしく今我々が苦しんでいるデフレの状況と同じで、硬直化 した経済は下方に向かっているのに生活は下がることを望まないと いう我々の願望とのギャップがある状況なんです。仕事は無いのに 生活は変えたくないという無理な願望があるわけです。そこで借金 して生活を変えなかった人が今苦しんでいる。借金が返せないから。
不良債権を処理するには景気が良くならなければ進まないというのが もっぱらのコンセンサスになっておりますが、景気対策を今まで 何十兆円もやってきたのに改善しなかった歴史を知りながら今もなお 景気対策を叫ぶのはいかがなもんかと思います。自民党のご老体や エコノミストと呼ばれるひとの多くはそのようなことをしないと 不良債権処理も成功しないと声を大にして叫んでおりますが、自分は 別の意見で、一度ボトムまで景気を後退させて、そこから再生させる プロジェクトを構築する(言葉では簡単だけどね)方法を選ぶ方が 経済の健康化という観点からは成功すると思う。自分の首を締める ことになるのは目に見えておりますけどね。
飽和した経済をさらに成長させるのは難しい。成長を是とするならば、 一度飽和状態を崩すしかない。パンパンに張った風船を一度萎ませて もう一度膨らませる。そこで生き残った産業に人員をシフトさせる。 再生が見込まれる産業には国が資金援助をする。銀行に限らず資金の 注入を行う。もちろん返済計画と企業ガバナンスは問われるけど。
今は銀行だけが議論の対象になっているけど、思い切った政策とは 民間の企業にまで手を入れることではないでしょうか。
ただ、これはあくまで建前の話で、本音は経済政策に失敗した官庁の 役人、代議士に辞めてもらうことが前提だと思います。これこそ国の ガバナンスの問題だと思います。こちらが先のような気がします。 特にバブルを作りだし、崩壊させた日銀の当事者連中には、それ相当 の責任を取ってもらう。現職の日銀の責任者にも辞めてもらう。
これは個別にはそうですが、大きな目で見ると役所の構造改革です。 不良債権処理はひとつの目玉ですからこれはこれで生かしてもらって、 その財源は役所の改革から捻出できると思う。これは立教の斎藤教授 と考えは近いかも。野村の植草くんやリチャード・クー氏とは違う。 どちらかというとミスター円の榊原氏も近いかも。
小刻みで小手先の方策では見切られます。また同じことやってると。 であるならば、国か国民のどちらかが痛い目にあうしかない。 国民の同意を得るにはどちらも同時に行うことになるのかな。 やはりこの問題は政治色が強いので、聡明な政治家がリーダーシップ を持って引っ張っていくしかないな。政治家が聡明でないならば、 竹中くんのような民間人が政治家から煙たがられようともがんばって いけるような雰囲気作りを我々国民が後押ししてあげることが必要 なんじゃないかな。腐ったご老体にはお辞めいただくということでね。
今の生活にこだわっている限り、我々の10年後は無いと思います。
はい。今日は曇りのち雨のち晴れ。(東京地方)
|