『日々の映像』

2010年05月08日(土) ギリシャ財政破綻の第3のモデルになるか

ギリシャ:国民に渦巻く怒り 「薄給の行員なぜ犠牲に…」
                     2010年5月6日   毎日新聞
ギリシャ:財政危機、世界に波及 景気回復にも影
                     2010年5月6日   毎日新聞

 過去20年内の起こった国家破産はアルゼンチンとロシアである。ギリシャが財政破綻(国家破産)の第3のモデルになる可能性が出て来た。財政危機からの脱却を図る政府の緊縮財政に抗議するゼネストで、3人が死亡する事態に発展している。ユーロが売り込まれて、日本などの株価が急落した。混乱が長引けば、市場での動揺が拡大する気配である。

 ギリシャ議会は6日、財政再建の関連法案を採決する方針で、パパンドレウ首相は「(法案が通らなければ)国が破産するだけだ」と理解を求めている。フランス・ドイツなどの主要国の債権者が、ギリシャ国債の一部を放棄する必要があるとの報道もある。各国の金融機関が3〜5割の債権カットに応じる必要があるようだ。こうなれば国家破産と同じである。

 ギリシャの国債を750億ドル(約7兆円)保有するフランス、450億ドルを保有するドイツなど、欧州の金融機関は大きな打撃を受けることになる。
アジア各国の市場からは「もはやギリシャ一国の問題ではなく、事態収拾のめどが立たない」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏)との悲鳴が上がっている。
「財政赤字が大きい米英に危機が波及するのが最悪のシナリオ」(アナリスト)も警戒の声が上がる段階なのである。
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20100508

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ギリシャ:国民に渦巻く怒り 「薄給の行員なぜ犠牲に…」
                       2010年5月6日   毎日新聞
 財政危機からの脱却を図る政府の緊縮財政に抗議するゼネストで3人が死亡したギリシャ。ストから一夜明けた6日、ギリシャ発の信用不安は世界を駆けめぐり、ユーロが売り込まれて、日本などの株価が急落した。ギリシャ議会は財政再建関連法案を可決したが、混乱が長引けば、市場で動揺が拡大しかねない。
 「こんな事が起きるなんて、もうここはギリシャじゃない」ーー。デモ隊の一部過激派による放火で行員3人が死亡したアテネ中心街の銀行では6日朝、焼け跡で鑑識作業が続いていた。ビルを取り囲んだアテネ市民は一様に暗い表情で怒りと困惑を口にしていた。当局は同日、市内で厳戒態勢を敷いた。
 銀行正面の事務所で働く労働省職員イレーネ・パパスさん(32)は「私と同じせいぜい月800ユーロ(約9万6000円)ほどの薄給の人がなぜ殺されなくてはならないのか」と沈んだ表情だった。
 死亡したのは妊婦を含む女性2人と男性1人でみな30代。デモに乗じて騒乱を広げる黒覆面の極左勢力への怒りもあるが、パパスさんは社会的・政治的な背景に矛先を向けた。
 ギリシャは戦後政治のトップをパパンドレウ、カラマンリス両家が交互に握り、数十のファミリーが経済的特権を維持してきた。貧富の格差が大きいところに、国民は増税と歳出削減を強いられる。
 財政危機は、昨年10月に就任したパパンドレウ首相がデータを精査して発覚。09年の財政赤字見通しが国内総生産(GDP)比で3.7%から12.7%に跳ね上がった。金融危機後の不況に苦しんできた大半の国民には「寝耳に水」。「国民の多くはなぜこんな事態になったのかわかっていない。物価高と給与削減で生活は悪化し、社会そのものを変えなければという声が強まってきた」とアテネの出版社勤務、アキレス・モルディティスさん(45)は不満をぶつける。
 政府は昨年末から3回にわたって財政再建策を発表し、付加価値税(日本の消費税に相当)引き上げや酒・たばこ増税、公務員給与凍結など3年間で赤字300億ユーロ(約3兆6000億円)を削減する計画を打ち出した。財政再建は、ユーロ圏諸国(16カ国)と国際通貨基金(IMF)の大規模支援(3年間で総額1100億ユーロ)を受ける前提だからだ。
 財政危機でギリシャ国債が急落し、市場からの資金調達が困難になって、国債の償還不能(デフォルト)の恐れが高まった。ギリシャ財政が破綻(はたん)すれば、景気低迷で巨額財政赤字を抱えるポルトガルやスペインにも信用不安が波及し、ギリシャが加盟するユーロの信用も失墜しかねない。
 ユーロ圏とIMFはギリシャ危機が欧州全体に連鎖することを警戒。ただ、ギリシャは脱税などの「闇経済」規模がGDP比で推定25%に上るとされ、負担を迫られるドイツなどは「放漫財政が危機の原因」と主張し、財政再建を強く求めた。
 支援の調整が手間取る中、4月下旬には、欧州連合(EU)統計局が「(実際の)ギリシャの09年の財政赤字はGDP比で13.6%に上り、さらに0.5%増える可能性がある」と発表。米スタンダード・アンド・プアーズはギリシャ国債を投機的水準に引き下げ、ポルトガル国債も格下げした。ギリシャの財政再建策を受け、ユーロ圏諸国とIMFは今月2日に支援を決めたが、市場では「ギリシャはデフォルトを回避できるのか」との疑念がくすぶり、「局面はギリシャ危機からユーロ危機に変わった」との見方が広がった。
 ギリシャ議会は6日、財政再建の関連法案を採決する方針で、パパンドレウ首相は「(法案が通らなければ)国が破産するだけだ」と理解を求めた。支援を正式承認する7日のユーロ圏首脳会合までにギリシャは法案通過を目指しているが、信用不安がユーロ圏全体に広がる中、ギリシャ支援策だけでは市場の混乱に歯止めがかけられる保証はない。【アテネ藤原章生、ロンドン会川晴之】

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ギリシャ:財政危機、世界に波及 景気回復にも影
2010年5月6日 毎日新聞
 ギリシャ危機が世界同時株安にまで至ったのは、市場が「ユーロ圏諸国が、他国を救済する政治的意思に欠けている」(欧州系金融大手エコノミスト)と見透かしたためだ。各国政府の対応が後手に回る中、ギリシャ危機は、まずポルトガル、スペインなど他の欧州諸国に飛び火。さらに世界各国の株式市場を急落させたことで、今後、世界的な景気回復にも影を落とす、との懸念が強まっている。【清水憲司、大久保渉、ロンドン会川晴之】
 欧州連合(EU)のファンロンパウ大統領は「根拠のないうわさで市場が理性を失っている」と述べるなど、沈静化に躍起だが、6日の市場でもギリシャ国債などが売られ、信用不安の封じ込めは図れていない。
 ギリシャは、14年までの5年間で財政赤字を国内総生産(GDP)比で11%削減する厳しい計画をまとめた。だが、5日にはデモによる騒乱で3人の死者が出るなど国民の反発は激しく、計画の実現が危ぶまれている。
 市場は、債権者がギリシャ国債の一部を放棄する債務再編案などの追加策実施を求め、各国の金融機関が3〜5割の債権カットに応じなければ、計画達成は難しいとの見方も出ている。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先週、ギリシャ国債を投機的水準である「BBプラス」に格下げしたが、これは債権回収率が3〜5割にとどまる水準を意味する。債権放棄を迫られた場合、発行額の4分の1を保有するギリシャだけでなく、750億ドル(約7兆円)を保有するフランス、450億ドルを保有するドイツなど、欧州の金融機関は大きな打撃を受ける。各国は新たな金融救済策を迫られる可能性もあり、市場の混乱を増幅する一因となっている。
 ユーロ圏諸国(16カ国)は2月11日の首脳会合で、ギリシャ支援で一致したが、支援決定に2カ月半の時間を要した。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は6日の会見で、「ポルトガル、スペインは、ギリシャとは同じではない」と述べ、市場の動きをけん制した。しかし、実際の支援までにさらに時間がかかれば、ポルトガルやスペインの国債なども売り込まれ、欧州信用不安が一層高まりかねない。
 ユーロ圏議長のユンケル・ルクセンブルク首相は、2日の会見で「私もしびれを切らしかけたが、文化や、手続きの違いがある」と、地方選を控えたドイツなどの国内手続きに配慮したとの考えを示す。
 ◇各国市場「調整局面に」
 日経平均株価が6日、前週末比361円安と今年最大の下げ幅となり、世界同時株安の様相を見せ、アジア各国の市場からは「もはやギリシャ一国の問題ではなく、事態収拾のめどが立たない」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏)との悲鳴が上がった。企業業績の回復を受け、楽観ムードが漂っていた株式市場では「調整局面に入った」(アナリスト)との見方が強まっている。
 ギリシャより経済規模が大きいスペインなどに危機が波及すれば、「ユーロがさらに下落し、ユーロ危機の可能性が高まる」(三菱UFJ信託銀行の酒井聡彦氏)。
 日米の企業にとっても、「新興国市場で不利に働く」(矢嶋氏)ことから、業績の押し下げ要因となる。このため、欧州の危機が、世界経済の後退につながる恐れも指摘されている。
 金融市場の不安心理の高まりから、欧州域内では、ギリシャやポルトガルの国債が売られ、価格が下落(利回りは上昇)する一方で、ドイツ国債の価格が上昇するなど、安全資産を購入する「質への逃避」の動きが強まっている。
 欧州域外でも株から国債に資金が流れた。6日の東京債券市場では長期金利の指標となる新発10年債の利回りが一時1.25%に低下。5日の米国市場でも一時3.5%を割り込み、それぞれ約4カ月半ぶりの水準に低下。6日の市場でも欧米の株式市場が下落する一方で、国債が買われる展開が目立っている。さらに金の価格も一時、上昇するなど、投資家がリスクを回避する動きは今後も続きそうだ。
 市場では、「大幅株安の要因は従来の楽観ムードが修正されたため。日米の経済指標は改善し、新興国経済も好調」(みずほ証券の瀬川剛氏)との楽観的な見方もあるが、「財政赤字が大きい米英に危機が波及するのが最悪のシナリオ」(アナリスト)との強い警戒の声もぬぐえない。

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石田ふたみ