2010年03月22日(月) |
小沢幹事長・生方氏解任の顛末は |
1、社説:民主・生方氏解任 党を暗く閉ざすのか 2010年3月2日 毎日 2、社説1 「小沢民主党」に言論の自由はないのか(3/21) 2010年3月21日 日経 3、社説:生方氏解任―幹事長室に風は通らない 2010年3月21日 朝日
今日は春の彼岸の中日に当たる春分の日である。立春から数えると既に春半ばだが、「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、ようやく春が実感できる季節に入る。春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日とされている。春分の日を境に昼が夜より長くなり、生物は目に見えて生気に満ちてくるのである。季節は皆が歓迎する春なのに。経済・政治は実の暗いニュースが多い。
政治面では小沢幹事長の生方氏解任だろう。生方氏は解任されたことによってすっかり有名になったことは小沢陣営にとっては苦々しい傾向だろう。小沢幹事長は世論の代弁と言うべき社説の指摘に対した見解を述べるべきでないか。 これをしないのであれば、奥の院に陣取る陰湿な権力者として、国民の支持を失うことは時間の問題と言わねばならない。
社説の一部を引用したい。 ・これが鳩山由紀夫首相の言うところの「民主党らしさ」とは、とても言えまい。生方氏をいきなり解任する行動はあまりに強権的で、議員の自由な発言すら封殺しかねない愚挙と言わざるを得ない。(毎日) ・生方氏の言動が特に問題視されるような内容だったとは思えない。強権的にいきなり解任する手法には違和感があり、党内には反発がくすぶっている。これでは民主党に言論の自由がないと批判されても仕方があるまい。(日経) ・ 愚挙としか言いようがない。 民主党が、生方幸夫副幹事長の解任を決めた。産経新聞に掲載されたインタビューで、生方氏が小沢一郎幹事長らを批判したからだという。しかし、解任までしなければならないような発言内容とは考えられない。(朝日) ――――――――――――――――――――――――――――――――
1、社説:民主・生方氏解任 党を暗く閉ざすのか 2010年3月2日 毎日 これが鳩山由紀夫首相が言うところの「民主党らしさ」とは、とても言えまい。民主党は小沢一郎幹事長の党運営などをめぐり批判を展開していた生方幸夫副幹事長の解任を決めた。 鳩山内閣の支持率が急落する中、党のあり方をめぐりさまざまな議論が党内で起きることは、むしろ自然とすら言える。生方氏をいきなり解任する行動はあまりに強権的で、議員の自由な発言すら封殺しかねない愚挙と言わざるを得ない。 何とも異様である。解任の直接の原因とみられるのは産経新聞が掲載したインタビューだ。この中で生方氏は「民主党の運営は中央集権。権限と財源をどなたか一人が握っている」と事実上、小沢氏による党支配を批判、首相に小沢氏を注意するよう促した。これに反応したのが小沢氏に近い高嶋良充筆頭副幹事長だ。「外部に向かっての批判は問題」と生方氏に辞任を迫り、副幹事長会議で解任方針を確認した。小沢氏も「残念だ」とこれを了承したという。 唐突な解任には伏線がある。生方氏は小沢氏が廃止した党政調の復活を求めるグループの中核的存在で、小沢氏に対する不満の受け皿だった。このまま生方氏を放置すれば「政治とカネ」をめぐる小沢氏の幹事長辞任論が拡大しかねない、との思惑が働いたのだろう。 だからといって、いきなり排除する手法はまったく理解できない。小沢氏の資金管理団体を舞台とする事件や党の運営をめぐり党内で自由な意見があまり聞かれない党の閉鎖性や体質にこそ国民はむしろ、不信を強めているのではないか。 国会議員は有権者の代表として自らの所見を語る責任があり、メディアへの発信もその一環だ。政党幹部の言動として問題があると執行部が判断したのであれば十分に事情を聴き、必要に応じ注意をするなど、対応は他にいくらでもあるはずだ。そもそも生方氏は役員会や常任幹事会のメンバーでもなく、党内で意見を言う場もほとんどない。問答無用とばかりの解任は、小沢氏批判を含む自由な議論を封じるための威嚇とみられても仕方あるまい。 生方氏は反発を強めており、党内対立は深まりそうだ。閣僚にも解任を疑問視する声が出ているが、今回の事態は国民の民主党への強い失望を招きかねず、深刻だ。従来の政治にない清新さを期待し政権交代を選択した有権者の目に、古い体質の締め付けはどう映るだろう。 党のイメージを決定づけかねない局面にもかかわらず、首相は「外でさまざまな声を上げれば、党内の規律が守れない」と解任を支持した。これでは見識が問われる。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 2、社説1 「小沢民主党」に言論の自由はないのか(3/21) 2010年3月21日 日経 民主党は生方幸夫副幹事長を解任する方針を決めた。近く党役員会と常任幹事会で正式決定する。執行部の一員でありながら、党外で小沢一郎幹事長の党運営への批判を繰り返したという理由からだ。
生方氏の言動が特に問題視されるような内容だったとは思えない。強権的にいきなり解任する手法には違和感があり、党内には反発がくすぶっている。これでは民主党に言論の自由がないと批判されても仕方があるまい。
解任劇の発端は、生方氏が産経新聞のインタビューで「今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている」などと述べ、小沢氏を批判したことだった。
小沢氏に近い高嶋良充筆頭副幹事長は18日、生方氏に辞表の提出を求めた。生方氏は「党内には元秘書らが3人も逮捕されても何もならない方もいらっしゃる」などと反発して、辞職を拒否した。
この後、生方氏は記者団に、政治資金規正法違反事件で元秘書ら3人が逮捕・起訴された小沢氏の責任論について「国民にもう一度説明し、納得が得られなければお辞めになるのが当たり前」と語った。
一方、高嶋氏は18日に緊急の副幹事長会議を開いて生方氏解任を決め、小沢氏も了承した。
生方氏は、鳩山政権発足の際に廃止された党政策調査会の復活を目指す中堅・若手有志の会の世話人を務めている。政調の廃止は小沢氏が主導して決めたものだ。党執行部は政調復活を目指す動きに神経をとがらせていた。
鳩山由紀夫首相は生方氏の解任について「党の中では黙っていて、党の外で様々な声を上げることになれば、党内の規律がなかなか守れない」と述べ、支持する考えを示した。
首相をはじめとして、生方氏がメディアで発言したことをとがめているが、それは筋違いだろう。政権交代してから、民主党内で自由に議論ができる場や機会がなくなったことこそが問題なのである。
小沢氏を批判すると人事で冷遇されるという意識が強まれば、党内の議論はますます少なくなり、不満だけがうっ積していくに違いない。各議員が執行部の顔色ばかりうかがうようでは、民主主義が窒息する。
自民党など野党は鳩山政権の現状を「小沢独裁」と批判してきた。今回の解任騒動はこうした批判を裏付けるものとなろう。内閣支持率や政党支持率はさらに低下する可能性があり、鳩山政権の政策遂行力を弱める結果にしかならない。 ――――――――――――――――――――――――――――― 社説:生方氏解任―幹事長室に風は通らない 2010年3月21日 朝日
愚挙としか言いようがない。 民主党が、生方幸夫副幹事長の解任を決めた。産経新聞に掲載されたインタビューで、生方氏が小沢一郎幹事長らを批判したからだという。しかし、解任までしなければならないような発言内容とは考えられない。 生方氏は、小沢氏の政治資金の問題について「しかるべき場所できちんと説明するのが第一。それで国民の納得が得られなければ自ら進退を考えるしかない」と述べた。当然の見識だ。 「民主党の運営はまさに中央集権です。今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている」とも語った。 皮肉まじりの辛口発言ではあるが、的外れな言いがかりではない。 小沢氏が選挙の公認権と政党交付金などの配分権を握っているのは紛れもない事実だ。元秘書ら3人が逮捕・起訴されても、党内から小沢氏批判の声はなかなか上がらない。陰では「小沢独裁」への不満が高じているのにだ。 解任の理由は、発言の中身というよりも、副幹事長職にありながら党外で執行部を批判した点にあるらしい。そこにいささかの傷を認めるにしても、処分の重さはいかにも均衡を欠く。 生方氏はかねて幹事長室への権限集中に異を唱えてきた。小沢氏が廃止した政策調査会の復活をめざす会も立ち上げ、鳩山由紀夫首相や小沢氏に直接訴えてきた。 それが気に障るから今回の挙に出たのだとすれば、常軌を逸している。「言論封殺」との批判を免れまい。 首相も解任に同調しているようだ。内部からの批判を許容しない体質に、実は首相も染まっていたのだろうか。見識を疑う。 生方氏解任を主導したのは、小沢氏に近い高嶋良充筆頭副幹事長だった。小沢氏は高嶋氏に「円満に解決できないのか」と語ったが、結局は「任せる」と応じたという。 上に立つ者が考えを示さなくても、下の者がその意向を忖度(そんたく)し、成り代わって行動する。意に沿おうと思うあまり、度を越すことも多い。抜きんでた権力者と、その取り巻きがしばしば見せる典型的な「側近政治」である。 それによって昨今の民主党は、風通しが悪く、暗い印象が強まるばかりだ。自由闊達(かったつ)を旨とする「民主党らしさ」はすっかり色あせた。 かつて自民党全盛時代の幹事長室は多くの来客が自由に出入りし、「歩行者天国」と言われることすらあった。自民党でも幹事長をつとめた小沢氏がそれを知らないはずはない。しかし、いまさら氏に改心は期待できまい。 党風を刷新するなら、内側からマグマが噴き上げてこなければならない。もう待ったなしのタイミングである。それができなければ、さしもの民主党への追い風もやむことだろう。
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