『日々の映像』

2010年01月15日(金) 小沢一郎のガードが甘すぎた


1、小沢氏側に強制捜査 土地疑惑、陸山会などを家宅捜索
2010年1月14日 産経新聞
2、社説 いつになれば小沢氏は説明をするのか(1/14)
                     2010年1月14日  日経
3、社説:小沢氏会見―実力幹事長の説明責任
                     2010年1月13日 朝日新聞
4、社説:小沢氏会見 説明責任の放棄では
                     2010年1月13日  毎日

 民主党の政治の目指すものの一つの「官僚組織の力を弱め政治主導の政治」を目指している。この考え方の首領が小沢一郎である。管の組織からみれば、100年来続いて来た官僚組織の弱体化を進める首領が小沢一郎なのである。一連の動きを見ていると、管組織は口には出さないが小沢一郎を「不俱戴天」と位置づけている印象だ。この視点に立つと、管の組織が「小沢を倒す」との決意を固めているのではないか。

 小沢一郎はこれだけの政治改革を目指すなら、政治資金に関して一切の不明瞭があってはならないのである。大改革を目指せば、そうはさせないとする既存組織の反撃があるのは歴史が証明しているところであり、人間社会の必然なのである。この観点に立つと、小沢一郎のガードが甘すぎたと言わざるを得ない。

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4億円の素性、徹底解明を 土地購入で強制捜査
                      2010年1月14日 産経新聞

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入問題をめぐり、東京地検特捜部が元秘書の石川知裕衆院議員を任意で再聴取するとともに、小沢氏の個人事務所や陸山会、ゼネコンなど関係先の一斉捜索に踏み切った。小沢氏が党本部で余裕の表情すら浮かべながら記者会見に臨んだその翌日、捜査は急展開することになった。

 政治資金規正法違反の疑いが持たれている石川氏は検察にこう説明してきた。小沢氏から現金4億円を受け取り陸山会の土地購入に充てたが、自分の「単純ミス」で収支報告書に記載しなかった、と。だが検察は、不記載を隠すため偽装工作をするなど悪質で、不透明な資金の流れを解明するには強制捜査が不可欠と判断したとみられる。

 小沢氏は前日の記者会見で「国民の皆さまに誤解を与えた」と陳謝しながら「意図的に法律に反するような行為はしていないと信じている」と強調。さまざまな疑問を投げかけられても「捜査が継続中であり、弁護士にすべて一任している。いろいろ申し上げることは差し控えるべきだ」と、一切の説明を拒んだ。

 だが、そのような姿勢では誰一人として納得しないほど事態は深刻になりつつあるのではないか。そのことを重く受け止めるべきだ。検察は、小沢氏が石川氏に手渡したという4億円の素性を徹底解明してほしい。それなしには、土地購入問題で噴き出した不信や疑惑は何一つ解消しない。

 4億円はどういうカネか。言うまでもなく、小沢氏が自ら説明すべきものだ。しかし、土地購入問題や西松建設違法事件をめぐって小沢氏本人や事務所による一連の説明にはほころびが目立ち始めており、額面通り受け入れるのは難しい。

 土地購入問題が最初に表面化したのは、2007年のことだ。陸山会の収支報告書の事務所費に多額の不動産取得費が計上されていると疑問の声が上がった。民主党代表だった小沢氏は記者会見し、土地の売買契約書や領収書を示し「国民の政治不信を払拭(ふっしょく)する」と透明性をアピールした。
 西松事件でも昨年、政治資金について「すべてオープンにしている」と胸を張ったのも記憶に新しい。ところが、4億円ものカネが簿外で動いていた。さらに小沢氏が出したという4億円で支払いが済んだのに、わざわざ銀行融資を組んだり、政治団体からの架空の寄付を計上したり、と偽装工作の疑いまである。

 しかも石川氏も含め小沢氏側は否定しているが、岩手県でダム工事に参入するため小沢氏側に2回に分け計1億円を裏献金したと建設会社幹部らが供述。うち5千万円の提供が土地購入時期と重なる。検察はこの供述を重視しているようだ。

 また、小沢氏が03年に自由党を解散した際、政党助成金を自らの関連団体などに寄付して使い切った形をとり、ほぼ独占したとの批判もくすぶっている。違法ではないが、解党時には助成金を国庫に返納するのが筋だろう。小沢氏自身のこれまでの発言とは裏腹に、不透明さは増すばかりだ。
 石川氏が小沢氏から4億円を受け取ったとしたのも、小沢氏の手元にあった現金にすれば、素性をたどりにくいと計算したのではないかとさえ思えてくる。


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1、小沢氏側に強制捜査 土地疑惑、陸山会などを家宅捜索
2010年1月14日 産経新聞
 
民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が平成16年に購入した土地をめぐり、小沢氏の元私設秘書で会計事務担当だった民主党の石川知裕衆院議員(36)が政治資金収支報告書に4億円を記載していなかった疑いが強まり、東京地検特捜部は13日、政治資金規正法違反容疑で、東京都港区の陸山会事務所や小沢氏の個人事務所、衆院議員会館の石川事務所、大手ゼネコン「鹿島」本社など関係先を一斉に家宅捜索した。特捜部は4億円の原資にゼネコンからの裏献金が含まれている疑いが強いとみており、任意捜査では疑惑の全容解明は困難と判断した。
 小沢氏側をめぐっては、準大手ゼネコン「西松建設」の違法献金事件で昨年3月、陸山会会計責任者だった公設第1秘書、大久保隆規被告(48)=公判中=が規正法違反容疑で逮捕された際、陸山会などが捜索されており、10カ月余りを経て再び小沢氏側が強制捜査を受ける事態となった。
 一方、特捜部は13日、石川氏から2度目の任意聴取を行い、改めて土地代金の原資や不記載の経緯など、不自然な点について説明を求めたとみられる
関係者によると、石川氏は16年10月、陸山会の会計事務担当者として、東京都世田谷区の土地を約3億4000万円で購入。この際、簿外で調達した4億円を土地代金に充てたにもかかわらず、収支報告書に記載しなかった疑いが持たれている。
 小沢氏側は、4億円の定期預金を担保に金融機関から借りた4億円を土地代金に充てたと説明していたが、陸山会が土地代金を支払ったのは融資を受ける前だったとされる。
 石川氏は先月の任意聴取に「小沢先生に相談し、小沢先生の個人資金4億円を借り、土地代金に充てた」と説明した。しかし、特捜部はこの説明は虚偽との見方を強めており、国発注の胆沢(いさわ)ダム工事受注をめぐり、石川氏が水谷建設から受けたとされる5千万円など、同工事を受注したゼネコンからの裏献金が、土地代金の原資に含まれているとみている。

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2、社説 いつになれば小沢氏は説明をするのか(1/14)
                  2010年1月14日  日経
 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入にまつわる政治資金規正法違反容疑で、東京地検特捜部が陸山会や小沢氏の個人事務所さらにゼネコンの鹿島本社などを家宅捜索した。

 捜索を知った小沢氏は「私どもはこのような問題で法に触れるようなことをしたつもりはない」と語ったが、政治資金の動きや自身のかかわりなど具体的な説明は拒んだ。

 国民から強い支持を得て政権をとった民主党の最大の実力者である小沢氏に求められるのは、捜査対象になった石川知裕・元秘書(現衆院議員)らの規正法違反容疑についての見解・弁明ではない。これまで繰り返してきた「政治活動費はすべて公表している」との言葉を多くの国民が信じられなくなった現状に「国民に誤解を与え、申し訳ない」(12日の記者会見)だけで済ませたのでは、政治家としての責任から逃げたことになる。

 今回の捜索は、陸山会が東京都世田谷区の土地を秘書寮用地として購入した資金の出所を突き止めるのが目的と考えられる。

 陸山会の会計事務担当だった石川氏は特捜部の事情聴取に対し、政治資金収支報告書の記載と異なり、実際には小沢氏から個人資金4億円を受け取り購入資金に充てた、と述べたという。

 特捜部は石川氏の供述の裏付けをとるために、小沢氏に参考人聴取に応じるよう要請したとされる。事実の解明には当然にして不可欠の手順であり、小沢氏が捜査に協力しないのは極めて遺憾である。

 小沢氏の政治資金を巡っては、西松建設の巨額献金事件でも公設第1秘書が規正法違反に問われ、裁判が進行中だ。この裁判で検察は、地元岩手県などの公共工事受注を望むゼネコンから小沢氏側が政治的影響力を背景に政治資金を集めてきたと主張している。

 鹿島の本社、東北支店を小沢氏側団体と同時に捜索したのは、土地購入資金の4億円も、小沢氏の個人資金といいながら、実は西松事件と同様の手法でゼネコンから獲得したカネではないか、との疑いを検察が持つからだろう。

 公共工事の受注を狙ってゼネコンが不明朗な資金を政治家に提供する昔ながらの利権構造に、小沢氏はつかっている。そう、2つの事件の捜査を通じて検察は指摘したわけだ。自民党長期政権を批判して政権交代を訴え実現した小沢氏には、カネと政治の問題で説明を尽くす、他の政治家に増した責務がある。


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3、社説:小沢氏会見―実力幹事長の説明責任
                     2010年1月13日 朝日新聞

 「誤解を与え、ご迷惑、ご心配をおかけしていることを大変申し訳なく思っている」
 民主党の小沢一郎幹事長はきのうの定例記者会見で「国民のみなさま」に向けてわびた。自らの資金管理団体である陸山会の土地取引をめぐる、資金の流れの問題についてだ。
 秘書の寮用に購入した土地代の原資4億円がどこから出たのか、政治資金収支報告書に記載されていなかった疑いが持たれている。東京地検特捜部は、小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員を政治資金規正法違反で在宅起訴する方向で検討中だ。小沢氏にも事情聴取に応じるよう要請している。
 きのうの会見は「誤解」を解く機会だったはずだ。なのに、小沢氏は「意図的に法律に反する行為はしていないと信じている」と述べただけで、あとは捜査中であることを理由に一切の具体的な説明を避けた。「区切りがついたら」説明したいという。
 小沢氏がふつうの民間人なら、そうした対応もありうるだろう。しかし、与党民主党の幹事長、政権一の実力者である。刑事責任を問われる立場になくても政治責任は重い。
 石川氏は地検に対し、4億円を小沢氏から受け取ったと説明しているというが、出どころはどこか。土地購入後に、小沢氏が銀行から4億円の融資を受け、陸山会に貸すという複雑な処理をしたのはなぜか。
 小沢氏は、事情聴取に応じるつもりかという問いにさえ、差し控えたほうがよいで通した。
 公設秘書が逮捕・起訴された西松建設からの違法献金事件を受けて、小沢氏は昨年5月、党代表を辞任した。それと比べても、問題は決して小さくない。西松事件では収支報告書への虚偽記載を問われたが、今回は不記載、つまり報告書に記さない裏のカネの疑惑だからだ。
 にもかかわらず、小沢氏の政治責任を問う党内の声が、今回はほとんど聞かれない。小沢氏が鳩山政権への影響力をますます強め、夏の参院選や党運営を一手に仕切る。その威勢を前に、小沢氏にものを言いにくい空気が強まっているのではないだろうか。
 自民党は小沢氏らの国会への参考人招致を求めているが、民主党は応じない方向だ。政権公約に掲げた企業・団体献金禁止のための法改正について、鳩山由紀夫首相は通常国会には提出されないとの見方を示している。
 首相と幹事長にカネにまつわる問題が続いているのに、自浄作用を働かせようとしているとは思えない。
 そんな姿には失望せざるを得ない。まずは、小沢氏がすみやかに全容を語る。参考人招致にも応じる。それが政権交代を選択した人々の期待に応える道だ。

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4、社説:小沢氏会見 説明責任の放棄では
                      2010年1月13日  毎日
 これで納得しろという方が無理である。民主党の小沢一郎幹事長の資金団体「陸山会」をめぐる会計処理について小沢氏は12日、定例の記者会見で言及したが、まだ東京地検特捜部の捜査が継続中であることを理由に質問にはほとんどまともに答えず、特捜部の事情聴取に応じるかどうかさえ明らかにしなかった。
 なぜ、疑問に答えようとしないのか。これでは説明責任を放棄しているに等しく、国民の不信は広がるばかりだろう。
 疑問点を改めて整理する。陸山会は04年10月、東京都世田谷区に土地を購入した。不動産会社への支払いなどに当たったのは近く政治資金規正法違反(不記載)で在宅起訴される見通しの小沢氏の元私設秘書、石川知裕衆院議員だ。
 小沢事務所側は昨年秋には、資金は会の定期預金を担保に金融機関から借りた4億円を充てたと説明し、会の代表である「小澤一郎」名義で借りたことが政治資金収支報告書にも記載されている。しかし、実際には石川氏が小沢氏から提供された別の4億円が土地代金の支払いに充てられたことが、特捜部の捜査や石川氏の説明などから判明している。これは報告書に記載のない金だ。
 やはり、おかしな話だ。石川氏は4億円の定期預金を作るため、土地代金の支払いと同じ日に小沢氏の複数の政治団体から1億数千万円を集め陸山会の口座に入金している。なぜ、こんなややこしい処理をする必要があったのか。小沢氏からの資金だったことを隠すための偽装工作だった疑いが出ている。
 土地購入は小沢氏の指示だと石川氏も認めている。ならば、小沢氏は一連の不可解な金銭の出し入れについて本当に何も知らなかったのか。そもそも小沢氏は4億円もの大金をどういう経緯で用意できたのか。その原資は何か−−。
 それらについて小沢氏は会見で、「計算上のミスやらはあったかもしれない」と話す一方、「意図的に法律に反する行為はしていない」と語った。不記載は認めているのかもしれないが経緯を見れば単なる記載漏れというには説得力が乏しい。一方で昨年の西松建設事件の際に繰り返した検察批判は、この日は控えめで「検察当局においてすべてご存じのこと」などと語るだけだった。
 この問題に関して一括して記者側から質問させたうえ、当初、1社1問に限定しようとしたのは国民にきちんと説明する気持ちが元々ないのではないかと疑う。18日からの通常国会で野党が鳩山由紀夫首相の政治資金問題とともに追及するのは確実だ。鳩山政権に大きな火種を残す会見となったのは間違いないだろう。









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石田ふたみ