『日々の映像』

2010年01月06日(水) 市民レベルの啓蒙運動

報 道

1、社説:2010再建の年 暮らし 誰も見捨てない社会に
                      2010年1月6日  毎日
2、社説:2010再建の年 経済 心のデフレに負けるな
                      2010年1月5日  毎日
3、デフレ脱却へ成長戦略実行を 経済3団体トップ年頭会見
                      2010年1月6日  日経
4、10年度予算:閣議決定 一般会計92兆2992億円
                      2009年12月27日  日経

 新聞は主に経済の傾斜した報道が多いが、もっと重要な問題があるように思う。社説1では「この国の人々の生活を脅かす大きな危機は長期的には子育て、短期的には医療と介護だと思う」とある。特に、子育ては社会の基盤そのものにかかわり、この勢いで少子化が進めば日本の未来はないような気がする。

 社会のありようで特に目につくのは、「自殺者が年間3万人を超える事態がもう12年も続いている」いることである。子どもの自殺も依然として深刻だ。2008年の学生・生徒の自殺は972人に上った。人間関係がうまく築けないことによる孤立が背景にあるのではないかとよくいわれる。

 今日の19:00NHKのテレビで一人暮らしの痛ましい問題を報道していた。
我田引水で記述するわけでないが、いろいろな問題の背景に、人間学の貧弱さが横たわっていると判断している。講座の「やさしい人間学」は昨年12月1〜7まで進んだ。受講者が全体的に明るくなってきたのである。今日はコンサルタントの先生の担当であった。途中で先生は「こんなに話しやすい受講生はいません。素晴らしいです」とのお褒めをいただいた。

やさしい人間学・・すなわち生きる基本が整理されると、人は変化してくることが目前に展開されている。日本の社会の様々な問題の立ち向かく基本は「人」の生き方・認識に関する市民レベルの啓蒙運動であると思っている。

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社説:2010再建の年 暮らし 誰も見捨てない社会に
                      2010年1月6日  毎日
 「生きていくことに疲れた」という遺書を残して昨年秋に自殺した13歳がいる。学校を欠席することもなく、クラブ活動に熱心で、いじめの兆候もなかった。硫化水素を発生させ、助けようとした父親も巻き添えになる痛ましさだったが、何が原因なのかよくわからないまま世間から忘れられようとしている。
 こんなことが珍しくない時代になるのだろうか。自殺者が年間3万人を超える事態がもう12年も続いている。子どもの自殺も依然として深刻だ。08年の学生・生徒の自殺は972人に上った。人間関係がうまく築けないことによる孤立が背景にあるのではないかとよくいわれる。
 
◇少子化対策だけでなく
 若者の引きこもりが社会問題になって10年余になるが、現在その数は100万人とも推定される。最近は長期化と高年齢化が問題で、40代の引きこもりも珍しくなくなった。国連児童基金(ユニセフ)が07年に発表した先進国の子どもの「幸福度」に関する調査で、「孤独を感じる」と答えた日本の15歳の割合は29.8%に上り、2位のアイスランド(10.3%)をはじめフランス(6.4%)、英国(5.4%)などに比べ飛び抜けて高かった。事態が改善に向かっているとは到底思えない。

 「コンクリートから人へ」というのが民主党政権のキャッチフレーズである。なるほど、来年度予算案には暮らし関連の項目があれこれ盛り込まれた。だが、公約を履行することに四苦八苦した印象が強く、どのような国家像を描いているのかが伝わってこない。この国の人々の生活を脅かす大きな危機は長期的には子育て、短期的には医療と介護だと思う。特に、子育ては社会の基盤そのものにかかわり、この勢いで少子化が進めば我々の生活の未来はない。

 子ども手当は目玉政策のはずだが、アピール度に欠けるのではないか。財政難の折、巨額の予算を投じることに異論もあるが、この国を再生するための「号砲」と位置づけ、説得力のある強力なメッセージを政権は発信すべきだ。少子化対策だけではない。自殺や引きこもりのほか、貧困世帯の子どもは必要な医療や教育から遠ざけられている。いじめ、うつ、親からの虐待も深刻だ。財源だけでなく社会的関心も、人材も、政策立案の知恵もここに傾斜しなくてはならない。

 子ども手当は家族ではなく子ども自身のためのものだということを忘れてはならない。「生きていくことに疲れた」と自殺した中学生にも支給されるはずだった。子育てや若者支援に必要な産業を育て、雇用も創出しよう。保育サービス、出産や育児が安心してできる職場づくりは手当だけではどうにもならない。ここは自治体や企業や非営利組織(NPO)の出番だ。自らの責任を棚に上げ、子ども手当が全額国庫負担ではないことを批判する自治体は情けない。子育てや若者支援を競い合い、熱心な自治体や企業を国民全体が支持する潮流をつくりたいものだ。

 もう一つの危機についても触れておこう。膨張し続ける医療費を抑制したために医療現場の疲弊を招いたという説が主流を占める。特に高齢者医療の改革は喫緊の課題だ。年を取れば誰しもさまざまな疾患を持つようになり、それを医療で治癒する体制を強化するほど医療費が膨らむのは必然だ。疾病だけでなく生活を支えることを考えれば、看護や介護の受け皿が圧倒的に不足している現状の方にも目が向くだろう。

 ◇社会保障の思想変えよ
 地域で暮らすお年寄りにとって、今の介護保険は家族介護を補完するものでしかなく、これでは家族が疲弊するばかりだ。老いた母親を介護し続けた歌手の清水由貴子さんの死を思い起こさずにはいられない。

 では、どうして子育てや医療・介護の危機から抜け出せないのかといえば、その原因の根底には日本の伝統的な社会保障の思想がある。父が稼いだ金で家族全員を養い、その父が勤める会社の保険や年金制度の傘の下で家族全員が守られることを前提とする考えである。子育てや介護は家族内でやるべきで、父の失業や病気、離婚など例外的な場合だけ国家が補完するというものだ。ところが、母子家庭や父子家庭、高齢者だけの世帯も珍しくなくなった。結婚しない人も増え、伝統的な家族観は変更を迫られている。また、パートや派遣などの非正規雇用が全労働者の3分の1を占めるまでになった。古い制度のほころびを赤字国債や埋蔵金で繕っているだけでは、いずれツケが回ってくる。家族や社会の変容に合わせ社会保障や雇用制度を変えなければならない。

 今、子育てや地域医療・福祉を担う小さな事業所では、主婦や企業を退職したシニア、引きこもりの若者、障害者らが支える側として働いている姿を見ることができる。地域の実情や働く側の事情に合わせた多様な事業体が子育てや介護を担い、それが雇用の創出や地域おこしにつながっている。潜在的な雇用の受け皿や労働力はある。この国に生まれた子どもは社会が責任を持って育て、どのような状況の人も就労や社会活動に参加するチャンスと支援が目の前にある。そんな社会を目指したい。

2、社説:2010再建の年 経済 心のデフレに負けるな
                      2010年1月5日  毎日
 日本経済は今、ひと時代前に戻ったかのような規模の縮小に見舞われている。モノが売れず、売れても金額が伸びない。主な販売統計について、2009年の見込みを調べると「○年ぶりの低い水準」のオンパレードである。

 軽を除く新車販売台数は38年ぶりの300万台割れとなる見通しだ。エコカー減税や新車買い替え補助金も効果は今ひとつだった。
 全国の百貨店売り上げは24年ぶりに6兆円台に落ち込む。にぎわっているように見えるデパ地下の総菜の売り上げも18カ月連続のマイナスだ。輸入高級ブランド市場は21年ぶりに1兆円を割るとみられる。

 ◇広がる賢い選択
 新設住宅着工戸数は45年ぶりに80万戸を下回る。特に分譲マンションの建設に急ブレーキがかかり、首都圏のマンション販売は17年ぶりの低水準になる。
 モノを買わなくなった消費者の間では「共有」や「シェア」をキーワードに新しい動きが始まっている。
 1台の車を複数の会員が共同で使う「カーシェアリング」が、都市部を中心に拡大している。30分や1、2時間といったレンタカーより短い時間で使える。時間貸しの駐車場だけでなく、ガソリンスタンドやコンビニを拠点にしたり、自治体の公用車の空き時間を利用したりと、さまざまな形態が生まれている。
 高級ブランドのバッグやアクセサリーなどを会員に貸し出すビジネスは、主婦を中心に利用が急増している。住まいでは、共同住宅のようなシェアハウスや、賃貸マンションなどを共有するルームシェアが若者を中心に広がりつつある。

 こうした動きは収入の減少などをきっかけにしているが、成熟社会の「賢い選択」と言える。
 所有し独占することへのこだわりが薄れ、モノを大切にするのはいいことだ。ずいぶん前から叫ばれてきた循環型の社会に近づき、地球温暖化の防止にも役立つだろう。何かを共有する作業は、現代人が忘れつつあるコミュニケーションの復活にもつながるに違いない。
 しかし、困ったことに賢い選択は、今の日本経済には打撃になる恐れがある。モノを買ってほしい企業の売り上げは低迷し、買わなくても済むのなら消費者の購買意欲はますます落ちるだろう。結果的に日本経済はさらに縮んでいくかもしれない。理にかなったこと、時代が求めることをすれば、経済の低迷を招くという「わな」から抜け出す道を見つけなくてはいけない。
 ヒントはすでに日本の中にある。地方では若者が流出を続け、企業誘致もたいてい絵に描いたもちに終わった。そして、時代の求めで公共事業が縮小され、地方交付税も減らされた。お金の回り方が鈍くなると、道路沿いに相次いで開店した大型店舗などはシャッターを下ろし始めた。いち早く経済縮小に見舞われたそんな地方で今、少しずつ変化が起きているという。
 食環境ジャーナリストの金丸弘美さんは各地の実例をまとめ、「田舎力」(NHK出版)として昨夏出版した。国内外からの民泊客でにぎわう長崎県の離島・小値賀町、コウノトリの復活を目指し「環境の町」のブランドを確立した兵庫県豊岡市などの取り組みを紹介し、ネット書店アマゾンの売り上げランキングの「地域経済部門」でほぼ首位をキープするヒット本になった。
 ◇眠れる力の再認識を
 全国800の農山漁村を見てきた金丸さんは語る。
 「だれかではなく、自分たちの手で産業づくりをしていく。それが持続可能な活力につながると気づき、行動を起こしたところが多い。人を含めた眠っている力を組み合わせ、100年後を見通す発想を持つと可能性が見えてくるもんです」
 共有の時代だからこそのビジネスも芽吹いている。不要になった衣類やゲームソフト、英会話教材、ベビー用品などを会員同士で貸し借りするインターネットのサイト「シェアモ」は会員数が3万人を超えた。サイトを通じて出品・申し込みをする仕組みで、着払いの送料負担だけで利用できる。運営者は広告収入を主な収益源としている。
 ゆるキャラや一過性のイベントで地域は元気にならないように、「成長戦略」が掲げる美辞麗句や政府による経済対策の効果はたかがしれている。経済を語ろうとする時、私たちは企業や国家、政治を主語にしがちだが、実際に経済を動かしているのは人の力である。
 だから、本当に怖いのは景気の二番底や急激な円高ではなく、「どうしようもない」「何をやってもどうせだめだ」と熱意や意欲を低下させてしまうことだ。そんな「心のデフレ」に陥ってはいけない。
 私たちは実感をおぼえない経済指標に必要以上に振り回されたり、その変化に気持ちまで支配されたりしてはいないだろうか。自分と、自分の周りの眠れる力の大きさを過小評価してはいないだろうか。
 一人一人の気持ちや行動の集積が大きな経済活動を形作り、生活の基盤となっていくことを改めて言い聞かせ、行動を起こしたい。


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3、デフレ脱却へ成長戦略実行を 経済3団体トップ年頭会見
                    2010年1月6日  日経
 日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体トップは5日、新年の合同記者会見を開いた。日本経済の大きな課題であるデフレからの脱却については成長戦略の具体化で需要を創出すべきだとの認識で一致。企業業績がなお厳しい中で春季労使交渉は定期昇給抑制も議論になるとの見方を示した。
 経団連の御手洗冨士夫会長は脱デフレに関して「成長戦略を実行し規制改革を進める。イノベーションの推進や成長センターであるアジアとの関係強化も必要になる」と強調。日商の岡村正会頭は「政府は為替相場の安定に目配りし、日銀は景気動向次第で国債をさらに買い取ってほしい」と注文をつけた。同友会の桜井正光代表幹事は「日本企業は価格競争で首を絞めている。付加価値の高い商品を技術革新で実現しないといけない」と指摘した。
 労使交渉の行方については「定昇抑制の議論もおこりうる」(岡村会頭)との認識を示した。御手洗会長は「賃金より雇用維持が交渉の軸になる」との認識を示している。(05日 21:13)

10年度予算:閣議決定 一般会計92兆2992億円
                     2009年12月27日  日経
 政府は25日の臨時閣議で、10年度予算案を決定した。全体の規模を示す一般会計総額は、09年度当初予算比4.2%増の92兆2992億円と、2年連続で過去最大を更新。子ども手当創設など、衆院選マニフェスト(政権公約)関連施策の計上で歳出が膨らむ一方、経済危機の影響による税収急減の結果、新規国債発行額も33.1%増の44兆3030億円と過去最大に達した。当初予算段階で国債発行額が税収を上回るのは戦後初めて。事実上、借金頼みでのマニフェスト実現となった。
 政策に充てる経費を示す一般歳出は、3.3%増の53兆4542億円と過去最大になった。鳩山政権の掲げる「コンクリートから人へ」との基本理念を踏まえ、公共事業を18.3%減の5兆7731億円と、過去最大のマイナスとした。一方、マニフェスト関連では、子ども手当に1兆7465億円、高校授業料の無償化に3933億円など、概算要求段階6.9兆円とした必要額のうち計約3.1兆円を盛り込んだ。
 10年ぶりの診療報酬増額もあり、社会保障費も9.8%増の27兆2686億円と過去最大に膨らみ、初めて一般歳出に占める割合が5割を超えた。教育・科学関連予算も5.2%の大幅増になった。また、景気や地方への配慮として、社会資本整備や中小企業対策に活用する「経済危機対応・地域活性化予備費」1兆円を計上した。
 歳入は、税収が18.9%減の37兆3960億円と84年度以来26年ぶりの低水準にとどまった。国債発行を政府目標の「約44兆円以内」に抑えるため、特別会計の積立金、剰余金などの「埋蔵金」を積極活用し、税外収入を15.8%増の10兆6002億円と過去最大規模に積み増した。
 鳩山政権の掲げる「無駄排除による財源確保」では、11月に実施した行政刷新会議の「事業仕分け」結果の反映などで、2.3兆円分の予算を廃止、縮減した。さらに、独立行政法人や公益法人がため込んでいる基金を返納させることで1兆円の財源を生み出した。しかし、子ども手当の支給額倍増など、11年度に必要なマニフェスト関連経費12.6兆円をすべて無駄排除でひねり出す水準には届かなかった。【

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石田ふたみ