『日々の映像』

2009年12月24日(木) 雲の上の総理


1、首相「責任を痛感」 偽装献金問題、辞任は否定
                    2009年12月24日  日経
2 、社説:鳩山内閣100日 政治主導の足元固めよ
                    2009年12月24日  毎日
3、社説 自ら信頼を傷つけた鳩山首相の100日(12/24)
                      2009年12月24日 日経

 母親からの6億円に上る資金援助を肝心の当人(鳩山首相)が知らなかったことは事実のようだ。庶民感覚から全く遊離した雲の上の総理に見える。この政権が長く続くとは思われない。

 毎日新聞の最新の世論調査でも、内閣支持率は55%と発足直後に比べ22ポイント下落した。国民の期待が失望に転じつつあるシグナルのように思われる。だろう。政策の軸足をより明確に打ち出し取りあえず政治の迷走は避けてほしいものだ。

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首相「責任を痛感」 偽装献金問題、辞任は否定
                    2009年12月24日  日経
 鳩山由紀夫首相は24日、都内で自らの偽装献金問題について記者会見し「検察の判断を重く受け止め、資金管理団体の会計責任者らの起訴に対して責任を痛感している」と語った。自らの進退については「進退を語るなら鳩山内閣に期待する国民の皆さんへの責任を放棄することになる」と述べ、首相を辞任する考えがないとした。
 首相が過去に、他党の議員に対し「秘書の責任は国会議員の責任」と辞任を促したことを巡っては「今回の件では私腹を肥やしたとか、不正な利得を受けたことはない。私の過去の発言と(今回の)事象には違いがある」と釈明した。首相の母からの資金提供に関しては「このお金のことは何も知らなかったので、贈与税を免れようという発想自体もない」と強調。同時に必要な贈与税の申告額が約6億円にのぼることを明らかにした。
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社説:鳩山内閣100日 政治主導の足元固めよ
                   2009年12月24日 日経
 鳩山内閣は、発足100日を迎えた。衆院選の民主党圧勝による歴史的な政権交代から3カ月余、政治の変化を実感させる場面が見られる一方で、政策の決定過程には混乱も目立つ。総じて、改革の試みは迷走し始めている。
 毎日新聞の最新の世論調査でも、内閣支持率は55%と発足直後に比べ22ポイント下落した。国民の期待が失望に転じつつあるシグナルだろう。内閣が本来の政治主導を発揮するためにも鳩山由紀夫首相は態勢の立て直しを急ぎ、政策の軸足をより明確に打ち出さねばならない。変化、迷走の両面示す
 100日の節目を迎えたが、首相はなかなか胸を張る心境になれないのではないか。政権の現状を象徴したのが、さきの衆院選で掲げたマニフェストの見直しである。公約の実現に不可欠な財源対策の甘さが露呈したうえ、ガソリン税の暫定税率問題で道筋をつけたのは党の実権を掌握する小沢一郎幹事長だった。首相が主導しマニフェストを実現する姿には遠い決着だった。
 さきの衆院選で民主党に300を超す議席を与え、自民党が与党であり続けた「55年体制」に終止符を打った原動力は、政治に変化を求める切実な民意である。期待を背に、鳩山内閣がさまざまな新機軸に挑んでいることは評価できる。特に、行政刷新会議が行った事業仕分けは予算の決定過程を国民に開示する画期的試みだった。外務省が対米密約の検証を進めるなど、情報公開を意識した運営は歓迎したい。
 しかし、やはり国民に強い印象を与えたのは沖縄の基地問題や、経済対策を通じて表面化した政権の迷走ぶりではないだろうか。
 年内決着をめぐり混乱した米軍普天間飛行場の移設問題は収拾の方向性を示さず、決着を先送りした。「緊密で対等な日米関係」の旗を掲げ名護市辺野古に移す現行計画の見直しを探るのであれば、相当の覚悟で政治力を発揮しなければならない。にもかかわらずその努力を尽くさず展望が開けぬまま、日米関係全般への影響が危ぶまれる事態を招いた。失点と言わざるを得ない。
 経済対策もそうだ。危機的な財政の下、景気の下支えと財政規律を両立させることは確かに難しい。だが、閣僚の意見が食い違ったまま財政支出を迫られ「コンクリートから人」への政治という、当初の理念もかすみがちだ。安全保障問題で社民党、経済対策をめぐる国民新党という連立2党の発言力の強さも、鳩山内閣の政策の軸足が定まっていないことに起因する。
 混乱の背景には、政治主導が軌道に乗っていないことがある。内閣が掲げた「脱官僚」の実現に向け、閣僚、副大臣、政務官の「政務三役」による政策調整が各省で始動した。だが、官邸で経済対策などの企画・立案を行う機能が稼働していない。特に、菅直人国家戦略担当相、平野博文官房長官による調整力の発揮が不十分だ。これでは各省の負担が増して消化不良を来し、実態は従来の官僚主導のまま、ということになりかねない。
 官邸が調整に二の足を踏み、首相自身の判断も示されない中、目立ち始めたのが小沢氏が発言力を強める「党高政低」の構図である。いったい、誰が本当の決定権者なのか−−。国民の多くが首相の指導力に疑念を抱いたとしても無理はない。小沢氏を意識し過ぎだ
 どう、立て直すか。内閣への権限集中に向け、態勢を再構築すべきである。政策の参謀となる国家戦略室に明確な権限を与え、内閣に副大臣、政務官など、より多くの国会議員スタッフを送りこめるよう、制度を改める必要がある。本来、さきの臨時国会で真っ先に措置すべきことを先送りしたツケが回っている。必要な法整備を次の通常国会で、予算と同等の重視度で急がねばならない。
 小沢氏主導による政権のいわゆる「二重権力」問題は、小沢氏の意向を過剰に意識し、なかなか決断に踏み切れない党の体質にむしろ、問題がある。そもそも「政策は首相、党務は小沢氏」という分業自体に無理がある。努めて意思を疎通し、政権運営に停滞を来さない責任が両氏にある。廃止した党政調を復活させ、内閣と党の政策決定の一体化を図ることもひとつの方策であろう。
 首相自身の政治献金の虚偽記載疑惑をめぐる捜査は、間もなく当局による処分が決まる。米軍基地問題、公約修正も合わせ、自民党からの攻勢もさすがに次期国会では強まろう。首相が党首討論を避けるような逃げ腰では到底、乗り切れまい。
 低下傾向とはいえ、支持率55%はなお比較的高い水準だ。国民の多くには、政権選択で自らが投票し鳩山内閣を生み出したという、参加意識があるのではないか。政治の変化を期待する底流に変化はないはずだ。
 だからこそ、首相はマニフェストの原則を軽んじず、さまざまな課題について国民に語りかけ、理解を得る必要がある。自らが政策実現の気概と覚悟を示すことが今、何よりも肝心である。
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社説 自ら信頼を傷つけた鳩山首相の100日(12/24)
                      2009年12月24日 日経
 鳩山内閣が24日で発足から100日目を迎えた。政権交代への大きな期待を背負っての出発だったが、現実は鳩山由紀夫首相の指導力不足による迷走ぶりが目立っている。行政の効率化などに向けた取り組みはなお不十分であり、とても合格点はつけられない。

 8月末の衆院選での民主党圧勝の原動力は政治と官僚のもたれ合いを断ち切り、政治システムを時代に合った形に作り替えてほしいという有権者の意識だったのではないか。

司令塔不在が迷走生む

 戦後の日本政治を率いてきた自民党は、2006年以降に首相が3年連続で交代するなど統治能力の低下をさらけ出した。民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)の筆頭に掲げた「税金のムダ削減」や「天下りの根絶」は政権交代の必要性を訴える上での旗印となった。

 しかし鳩山内閣が初めて取り組んだ来年度の予算編成や税制改正で、十分な成果があがっているとは言い難い。予算の使途を公開の場で吟味する「事業仕分け」を導入したものの、削減規模は衆院選で掲げた約7兆円に遠く及ばなかった。

 景気の一段の落ち込みを防ぐためには予算の精査と並行し、メリハリをつけた経済対策が必要となった。だが首相や菅直人副総理・国家戦略相が予算編成や税制改正で先頭に立って指示をとばすような場面は見られず、経済財政政策の司令塔が誰なのかはいまだにはっきりしない。

 一方で民主党は16日に小沢一郎幹事長の主導でまとめた予算や税制に関する重点要望を提出した。ガソリン税の暫定税率分の税収確保などに道筋をつけたが、「政策決定の内閣一元化」という原則は有名無実化した。小沢氏の影響力の大きさを改めて印象づける結果となった。

 政府の重要人事でも首をかしげるような対応が目立った。鳩山内閣は日本郵政の新社長に斎藤次郎元大蔵次官、人事院総裁に江利川毅前厚生労働次官を充てた。

 首相は能力本位の適材適所であれば次官OBの起用は問題はないと説明した。だが「脱官僚依存」を強調してきた従来の主張とは相いれず、「天下りや渡りの省庁あっせんを全面的に禁止する」との方針が崩れる懸念が出ている。

 政権交代があれば、国政にある程度の混乱が生じるのはやむを得ない面もある。しかし重要な政策判断で迷走や議論の停滞が目立つのは、詰まるところ首相が十分に指導力を発揮していないからではないか。

 なかでも深刻なのは、外交や安全保障をめぐる基軸が定まっていない点である。

 鳩山内閣はインド洋での給油活動を来年1月の期限切れで中止する。アフガニスタン復興への資金援助は大幅に上積みする方針だが、海外の評価が高い人的貢献策の打ち切りは国際的なテロ掃討作戦からの離脱と受け取られかねない。

 沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)の移設問題をめぐる政府内の対応ぶりは危機的でさえある。名護市辺野古地区への移設という日米合意の見直しで揺れ続けた揚げ句、結論を来年に先送りした。

 首相は11月に来日したオバマ米大統領との会談で「トラスト・ミー(私を信じて)」と発言した。だが翌日には「日米合意が前提ではない」と語って周囲を驚かせた。

 12月17日にはコペンハーゲンでクリントン国務長官に新たな移設先を検討する考えを伝え、記者団に「十分に理解していただいた」と説明した。クリントン長官は帰国後に藤崎一郎駐米大使を呼び、現行案の履行を改めて促す異例の展開となった。

日米同盟を揺さぶる

 国際情勢を踏まえた政策の見直しは主体的に取り組めばよい。しかし総合的な安全保障の戦略もないまま日米合意の撤回に動けば、長年培ってきた同盟関係を危険にさらすことになる。

 民主党は対中関係の強化に動き、ここでも小沢幹事長の存在感は大きい。だが外交は二者択一ではなく、強固な日米関係がアジア・太平洋地域の安定の基盤となるはずだ。

 鳩山内閣の歩みを振り返ると、連立を組む社民、国民新両党の主張に振り回される場面が目立った。与党の緊密な連携は大事だが、民主党の基本政策をゆがめてしまっては本末転倒である。

 政権運営には首相の偽装献金問題や小沢氏の西松建設からの巨額献金事件も影を落としている。新体制になって党首討論が実現していない原因の一つは、野党から疑惑を追及されたくないとの意識が働いているためとみられている。

 来年夏の参院選をにらんで与野党の駆け引きが強まるのは避けられないが、疑惑の解明や政策論争から逃げていては政治の停滞につながるだけだ。それでは鳩山内閣への期待も失望に変わってしまう。






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石田ふたみ