『日々の映像』

2009年11月14日(土) 日米首脳会談


 報 道
1、日米首脳会談―新しい同盟像描く起点に
                2009年11月14日  朝日
2、社説:日米首脳会談 連携の舞台が広がった 
                  2009年11月14日  毎日
3、社説 首脳会談が覆い隠した日米同盟の現実(11/14)
                     2009年11月14日  日経
4、毎日新聞世論調査:日米密約の存在「認めるべきだ」60%
                    2009年10月30日 毎日

 鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領は、選挙公約と現実との落差に苦悩する政治的立場にある。 オバマ大統領は、「テロとの戦い」の主舞台と位置づけたアフガニスタンが泥沼化しつつある。 鳩山首相は総選挙で訴えた沖縄・普天間飛行場の県外、国外への移設の問題で苦境に立つ。 そのために幅広い領域での合意を成果として強調したが、日米関係をきしませている普天間問題は先送りした。
 
 半世紀に及んだ自民党政権にとってかわった鳩山民主党政権にとって、日本の安全保障と外交の基本を米国との同盟に置くこと、地球規模の課題でも信頼できる同盟パートナーであり続けること、の2点を米大統領と確認しあった意味は大きいとおもう。

 報道4の通り「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則は日本の国是とされ、核搭載艦船の寄港や領海通過も「持ち込み」として禁じている。しかし実際は持ち込まれていたのだ。従来の政府が認めてこなかった、核兵器を搭載した米艦船の日本への寄港を容認した日米間の密約の存在について、毎日の世論調査で「認めるべきだ」と回答した人は60%を超えている現実がある。もはや隠す必要がないだろう。
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1、日米首脳会談―新しい同盟像描く起点に
                    2009年11月14日 朝日
 ニューヨークでの初顔合わせから2カ月。鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領が初の本格会談を行った。
 ともに国民の支持を得て政権交代を果たしたが、今は選挙公約と現実との落差に苦悩する似たような政治的立場にある。
 大統領は、医療保険制度の改革で議会説得のまっただ中。「テロとの戦い」の主舞台と位置づけたアフガニスタンは泥沼化しつつある。
 首相は「コンクリートから人へ」の予算の組み替えの真っ最中。総選挙で訴えた沖縄・普天間飛行場の県外、国外への移設の問題で苦境に立つ。
 そんな両首脳にとって、今回の会談は失敗が許されないものだった。そのために幅広い領域での合意を成果として強調したが、日米関係をきしませている普天間問題は先送りした。
 だが、そのことはこの会談の意義を損なうものではない。
 さまざまな分野で協力を強化する日米同盟の「深化」。半世紀に及んだ自民党政権にとってかわった鳩山民主党政権にとって、日本の安全保障と外交の基本を米国との同盟に置くこと、地球規模の課題でも信頼できる同盟パートナーであり続けること、の2点を米大統領と確認しあった意味は大きい。
 中国の経済的、軍事的台頭が著しいこの地域にあって、日米が同盟を基礎に連携し、結び合うことは双方の国益にかなう。地域の安定を保ち、繁栄を続けるためにもそれが欠かせない。両首脳が語り合った同盟強化の根底には、そんな共通理解があるはずだ。
 中国自身も地域の安定は望むところだ。来週、中国を訪れる大統領には、良好な日米関係を基盤としつつ、中国とどのように連携していくか、大きな構図で語ってもらいたいと思う。
 首脳会談では、地球温暖化対策や「核なき世界」への取り組みなどで一致してあたることを合意した。
 鳩山首相が選挙で訴えてきたテーマでもある。従来の、安保と経済に偏りがちだった日米協力が新しい次元に入るということだろう。日本の有権者は歓迎するに違いない。21世紀の同盟のあり方を描き出す起点としたい。
 同盟とは、互いの国民が納得感を持ち、信頼しあえるものでなければならない。その点で、普天間をめぐる合意を検証するため閣僚級の作業グループができたことには意味がある。3年前に合意された辺野古移設以外の選択肢がありえないのかどうか、日本の新しい民意を背景に協議できることになったからだ。
 首相は普天間問題の難しさについて、大統領に直接、説明した。一方で、できるだけ早く結論を出す考えも伝えた。同盟の根幹にかかわる問題だという認識に立って、首相にはその言葉通りの取り組みを求めたい。
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2、社説:日米首脳会談 連携の舞台が広がった 
                  2009年11月14日  毎日
 鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領が首相官邸で会談し、来年の日米安保条約改定50年へ向け同盟関係を発展させていくことを確認した。日米両国やアジア・太平洋地域の安定に寄与してきた同盟関係を、地球温暖化やエネルギー問題、核拡散など21世紀の世界が直面している地球規模の課題に対処するために強化しようという試みは時代の要請に沿ったものだ。両首脳の合意を評価したい。
 ◇「変化」訴える両政権
 日米同盟の再構築が必要とされる背景には国際環境の大きな変化がある。日米安保は冷戦終結を受けた1996年の日米共同宣言で再定義された。だが、21世紀に入り国際テロやイラン、北朝鮮などの核問題、さらには国際社会での中国の急激な影響力増大といった新たな状況が生まれている。気候変動やエネルギー、貧困への対応も急務だ。
 こうした中で、「変化」を訴える政権が両国に誕生した。両首脳が掲げる理念と目指す目標は同じ方向にあるように見える。日米同盟の信頼性を高め21世紀にふさわしい協力関係をつくるための同盟再構築は時宜にかなったものといえるだろう。
 「緊密で対等な日米同盟」を唱えている鳩山首相は、会談後の記者会見でも「大統領から『対等な日米関係であるべきだ』との話があった。私から核廃絶の問題を聞き、対等な思いで疑問を提起した」と語った。
 圧倒的な軍事力を持つ米国との協力関係では、日本は軍事以外の分野での役割を広げる中で相互補完的な関係を構築することを模索すべきだろう。鳩山首相も会見で「日米同盟は安全保障のみに限らない。防災、医療・保険、教育、環境問題など、さまざまなレベルで日米がアジア・太平洋地域を中心に協力していくことによって深化させることができる」と述べた。
 アフガニスタン復興のために日本が決めた民生支援(5年間で50億ドル)はその一環に位置づけられよう。現地の治安悪化で本土への要員派遣が困難である以上、現段階では資金拠出が中心になるのはやむをえない。
 両首脳が「核兵器のない世界」へ向けた連携強化や地球温暖化対策での協調行動で合意し共同文書として発表したことも評価したい。
 「核兵器のない世界を目指す」と宣言したオバマ大統領のプラハ演説以来、核廃絶・核軍縮へ向けた国際的な機運はこれまでになく盛り上がっている。9月の国連安全保障理事会首脳会合では米国が提案した「核なき世界」を目指す決議が全会一致で採択された。
 鳩山首相もこれに呼応し、唯一の被爆国として果たすべき道義的責任を強調し、世界の指導者に広島、長崎への訪問を呼びかけた。来年11月に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に予定される大統領再訪日の機会での実現を望む。
 地球温暖化対策は、12月にデンマークで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、法的拘束力を持つ「ポスト京都議定書」の採択が来年に先送りされることが確実になっている。温室効果ガスの大幅削減案を示した鳩山首相と国際協調を志向するオバマ大統領は今回の合意に沿って「ポスト京都議定書」の枠組みづくりを主導する責任を負った。
 ◇残った「普天間」問題
 一方、安全保障が同盟の重要な柱であることは論をまたない。同盟の基盤である日米安保条約は、日本による基地提供によって米軍の前方展開を保証し、その抑止力のもとで日本の安全を確保することを前提にしている。しかし、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題がこじれ、その前提が揺れている。
 この問題は閣僚級作業グループによる協議を通じ早期に結論を得ることで一致している。会談でも鳩山首相が「作業グループでできるだけ早い時期に解決する」と述べたのに対し、オバマ大統領も「迅速に作業を終わらせたい」と語った。
 しかし、米側は名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設という現行計画案の実施を求める姿勢を変えていない。一方の日本側は岡田克也外相が普天間の米軍嘉手納基地への統合の可能性をさぐるなど政府方針を決め切れない状態だ。
 同盟関係を発展させるには日米安保体制の信頼性を高めることが不可欠である。普天間問題について首相が「最後は私が決める」と言うだけでは国民の不安や米側の疑心をぬぐうことはできない。
 また、日本は「核の傘」を中心とする拡大抑止に依存する一方で、鳩山首相が非核三原則の堅持を表明している。日米同盟の下での東アジア共同体構想の位置付けも不明確だ。発足後2カ月がたつ鳩山政権は、こうした点を含め総合的な外交ビジョンを提示すべきである。


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3、社説1 首脳会談が覆い隠した日米同盟の現実(11/14)
                     2009年11月14日  日経
 「首脳会談に失敗なし」という言葉がある。鳩山由紀夫首相とオバマ大統領との日米首脳会談は典型だった。それは必ずしも「成功」を意味しない。周到な準備が同盟の最前線にある現実を覆い隠した。

 首相は10日に大統領と電話で話し合い、東京での首脳会談を「未来志向の日米関係強化に向けた機会としたい」と述べた。「未来志向」が奇異に響いた。

 歴史問題で日中、日韓関係がぎくしゃくした時に使われた言葉だったからだ。現状から視線をそらすのに使う外交表現である。10月のゲーツ米国防長官との会談の冷たい空気を考えれば、首相がこの言葉を選んだのは自然だった。

 両首脳は13日の会談で、アフガニスタン支援や地球温暖化対策などでの協力を話し合い、温暖化問題と核軍縮で共同文書を発表した。鳩山、オバマ両氏の初の出会いとなった9月のニューヨークでの会談でも、環境や軍縮など総論で合意がしやすい問題を取り上げた。

 日米首脳会談は、2回続けて両国関係の中核である安全保障問題に正面から取り組むのを避けた。日米関係は安保問題だけではないし、安保問題は沖縄の普天間基地の移設問題だけではない。が、意見調整を要する最も重要な問題が、今回は普天間問題だった。

 日米の外交当局は事前に閣僚級の協議機関を設ける合意をし、それを首脳会談の主要議題からはずした。首脳会談は外交の場である。意見が違う問題があれば、最終決着させるのが本来の機能である。一致できる問題だけを取り上げるのは、外交よりも「社交」に近い。

 外交修辞を取り除いて眺めれば、日米同盟の最前線は、問題解決の見通しを立てようとしない鳩山首相に対する不信感を強めていた。今度の首脳会談は、それをぬぐい去る結果になっただろうか。儀礼に近い首脳会談が2回も続けば、両首脳の外交的な言葉とは裏腹に日米同盟には距離感がでてくる。

 それは鳩山政権にとって「対米追随」からの脱却かもしれないが、危機に助け合うのが同盟である。重要なのは「同盟の深化」といった美しい言葉よりも、具体的行動である。それなしの同盟は、危機に機能しない、絵に描いたモチになる。

 首相は普天間問題を「できるだけ早く解決する」と述べた。具体的行動とは、この言葉の実行である。遅くとも年内に解決できなければ、既に始まっている日米同盟の空洞化は止まらない。

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4、毎日新聞世論調査:日米密約の存在「認めるべきだ」60%
                    2009年10月30日 毎日
 毎日新聞は民主党政権が発足した9月、憲法や外交・安全保障に関する全国世論調査を面接方式で実施した。従来の政府が認めてこなかった、核兵器を搭載した米艦船の日本への寄港や領海通過を容認した日米間の密約の存在について、「認めるべきだ」と回答した人は60%で、「認める必要はない」の32%を大きく上回った。非核三原則については「堅持すべきだ」が72%を占め、「見直すべきだ」は24%だった。
 核持ち込みを巡る日米間の密約は、1960年の日米安全保障条約改定時に結ばれたとされ、米公文書などで存在が明らかになっている。民主党は衆院選前、密約を裏付ける文書を公表すると公約したが、世論調査では民主党支持層の59%が密約を「認めるべきだ」と答え、自民党支持層でも56%に達した。
 「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則は日本の国是とされ、核搭載艦船の寄港や領海通過も「持ち込み」として禁じている。非核三原則については、20、30代の約8割が「堅持すべきだ」と答え、若い世代ほど守る意識が強い傾向がうかがえた。また、密約を「認めるべきだ」と答えた人も、「認める必要はない」とした人も7割以上が「堅持すべきだ」と回答した。
 鳩山由紀夫首相は衆院選前、「(核兵器を持ち込む)必要性があったからこそ(密約によって)現実的な対応がなされてきた」と述べ、密約公表と併せて三原則を見直す可能性に含みを持たせたが、首相就任後は国連安全保障理事会の会合で三原則の堅持を明言した。【須藤孝】





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石田ふたみ