『日々の映像』

2009年09月11日(金) 3党連立の合意に達する

1、社説:連立合意―政権に加わることの責任      9月10日 朝日   
2、社説:3党連立合意 日米同盟の火種とならないか  9月10日 読売
3、社説:3党連立合意 民意に沿う政権運営を     9月10日 毎日
4、社説 連立政権で政策をゆがめない配慮を      9月10日 日経

 衆院選で圧勝した民主党だが、参院では単独過半数の議席がない。連立合意によって参院でも過半数の議席を確保し、安定的な国会運営ができる基盤を整えたのだ。最後まで調整が続いた在日米軍基地問題や郵政民営化の見直しなどの重要課題は「火種」を残す決着となっている。

 忘れてはならないのは、衆院選で示された民意は、民主党に308という圧倒的な議席を与えたということだ。社民党は7議席、国民新党は3議席にすぎない。両党は政権内で発言力を示そうとするだろうが、3党が対等とは言えない。あくまでも民主党が中心となって政権を運営する原則に徹するべきである。

 国民新党の3議席にために「郵政改革基本法案を速やかに作成し成立を図る」との文言を入れたことに強い違和感を感じる。政権が変わるたびに、大きな政策の基本が変わることはやや問題でないか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1、社説:連立合意―政権に加わることの責任 
                         9月10日  朝日                             
 民主、社民、国民新の3党が連立内閣を組むことで合意した。
 特別国会初日の16日、3党は足並みをそろえて民主党の鳩山代表を新首相に選出する。「鳩山連立内閣」には社民党・福島、国民新党・亀井の両党首が入閣する。
 衆院では圧倒的多数を手にした民主党だが、参院では過半数に少し足りない。予算や法律をスムーズに成立させるために社民、国民新両党の協力を取りつけ、安定した政権基盤を築こうということである。
 社民、国民新の両党にとっては、そんな民主党の事情を利用して、自らの主張を新政権で少しでも実現させようということだろう。総選挙前から連立を前提に共通政策を掲げてきた以上、連立合意は自然な流れではある。
 ただ、両党と民主党との議席数の差はあまりにも大きい。連立内閣が総選挙で圧倒的な支持を得た民主党の主導で動いていくのもまた当然である。
 総選挙で示されたのは、政権交代を望む民意の熱いうねりだ。社民、国民新の両党もそう主張して現在の議席を得た。つまり、政権交代で誕生する新政権を維持し、国民の期待に応えられるように運営していく責任も両党は担うということだ。
 むろん、党が違うのだから、すべての意見が一致するわけはない。原則を主張するのはいいが、反対するならその後をどうするのか、現実的な対応策を示さねばならない。それが野党時代とは違う「政権党」としての義務である。その自覚を社民、国民新の両党には持ってもらいたい。
 その意味で、入閣する両党首が加わる「基本政策閣僚委員会」を内閣に設け、3党協議の場とすることにしたのはよかった。意思決定は内閣に一元化するという民主党の原則が貫かれた。
 期待したいのは、民主党の議員たちとは違う「目」を政権のなかで利かせることだ。巨大政党になった民主党が暴走したり、独善に陥ったりしないかをチェックする役割である。
 民意は必ずしも民主党の政策を全面支持しているわけではない。朝日新聞の世論調査では、民主党の政策に対する有権者の支持が総選挙大勝の大きな理由とは「思わない」という人が52%に達した。両党が政権に入ることで政策がより複眼的になれば、有権者の期待に応えることにもなろう。
 民主党も巨大議席に慢心せず、聞く耳を持つ態度を求めたい。
 政策協議では、外交・安全保障を中心に3党の主張がぶつかったが、最後は抽象的な表現で折り合った。まずは連立政権発足を優先した結果である。
 今後、具体的な政策課題で結論を迫られる時に、対立が再燃する可能性もある。それをどう克服していくか。この連立の意味はそこで試される。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2、社説:3党連立合意 日米同盟の火種とならないか 9月10日付・読売
 鳩山連立内閣の発足に向けて、大きなハードルをようやく乗り越えた。民主、社民、国民新の3党が連立政権を樹立することで合意した。
 政策合意の文書は、消費税率据え置き、郵政事業の抜本的見直しなど10項目で構成されている。
 焦点の外交・安全保障政策では、社民党の求める「米軍再編や在日米軍基地のあり方の見直し」や「日米地位協定の改定の提起」が盛り込まれた。民主党は難色を示していたが、国民新党も社民党に同調し、押し切られた。
 鳩山内閣は対米外交で、この連立合意に一定の縛りを受ける。将来の火種となりかねない。
 米政府は、日米が合意した海兵隊普天間飛行場の沖縄県内移設計画の再交渉に応じない立場だ。沖縄県も、計画の微修正を求めつつ、飛行場の早期返還を優先して県内移設自体は容認している。
 現実的な代案もないまま、米側も地元自治体も納得している計画の見直しを提起することが、政府として責任ある態度だろうか。日米同盟の信頼関係も傷つく。
 民主党は今後、連立政権の維持を優先するあまり、国家の基本にかかわる外交・安保政策などで、社民党に安易に妥協することを繰り返してはなるまい。
 インド洋での海上自衛隊の給油活動については、社民党が「即時撤退」との主張を取り下げたが、来年1月の活動期限を延長しない方向は変わっていない。
 民主党は、給油活動の代案としてアフガニスタンへの人道復興支援の増額などを検討している。
 だが、海自の人的支援とアフガンへの資金支援は本来、「車の両輪」だ。人的支援がなくなることは、日本の国際協調行動の大きな後退を意味する。民主党は、海自の撤退を再考すべきだ。
 連立協議では、社民党が求めていた与党の政策協議機関の代わりに、政府内に3党の党首級協議機関を設けることでも一致した。
 政権内での発言権を確保したい社民党と、政策決定に与党が関与せず、内閣に一元化する体制を目指す民主党の折衷案である。
 今後、懸念されるのは、社民、国民新両党が存在感を示そうとして、独自の主張に固執し、政権を混乱させる事態だ。過去の連立政権でも、少数党が多数党を振り回した例が少なくない。
 社民党は「3党の対等な立場」を強調する。だが、民主党308、社民党7、国民新党3という衆院選の獲得議席数を踏まえれば、その主張には無理があろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3、社説:3党連立合意 民意に沿う政権運営を
                   9月10日 毎日
 民主、社民、国民新3党の連立政権協議が9日まとまった。社民党の福島瑞穂党首、国民新党の亀井静香代表は入閣する見通しで、これで16日の首相指名選挙を経て鳩山由紀夫民主党代表を首相とする3党連立政権が誕生する運びとなった。
 協議は沖縄の在日米軍基地問題などをめぐって民主党と社民党との調整が続いたが、内閣に一元化する政策決定の仕組みも含め、ほぼ民主党のマニフェストに沿った内容となった。おおむね妥当な合意だろう。
 ただし、課題も残った。やはり民主、社民両党間のネックは安全保障問題だということだ。結局、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」との文章で折り合ったが、当初から目指す方向性は大きくは違っていないにもかかわらず合意には手間取った。
 社民党内には連立政権の中で埋没しかねないとの懸念がある。だが、協議に際し、仮に存在感をアピールすることだけを目的にするのであれば国民の理解は得られない。先の衆院選は民主党が圧勝したというのが民意であり、議席数には大きな差がある。無論、民主党は連立政権を組む以上、連立相手の声に十分耳を傾けなければならないが、社民党も今後、抑制的な対応が必要となる。
 一方、国民新党が最優先する郵政事業の見直しでは、郵政改革基本法案を速やかに作成して成立をはかることで合意した。今の4分社化を見直すとはいうものの、これも具体的には今後の作業だ。
 93年の細川政権以降、今の自・公政権まで、日本の政治は一時期を除いて連立時代が続いてきた。しかし、与党内調整に時間がかかり過ぎる一方、各党の主張を「足して2で割る」手法で決着して政策が中途半端になったり、まとまらない難問は先送りする例も多かった。
 政策の実行にスピードも要求される時代だ。民主党は首相直属の機関として新設する国家戦略局を政策決定の中心とし、今回の合意では3党の意見調整も内閣の中に置かれる「基本政策閣僚委員会」が担当することになった。政府と与党の二元的行政を排し、内閣主導を進める仕組みは一応整ったことになる。これがうまく機能するかどうかが政権運営のカギを握るだろう。
 3党合意文書の冒頭には「政権交代という民意に従い、国民の負託に応える」とある。今後もことあるたびにそれを確認し、政権運営を進めてもらいたい。期待されているのは何を具体的に変えてくれるかだ。それができなければ待っているのは「しょせん数合わせ」の批判である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

4、社説 連立政権で政策をゆがめない配慮を  9月10日 日経
 民主、社民、国民新の3党が連立政権樹立で合意した。参院での過半数確保のため調整を急いでいたが、一連の協議では基本政策をめぐる立場の違いが浮き彫りになった。連立が第1党である民主党の政策決定のぶれや遅れにつながらないよう、十分に配慮した運営が必要になる。

 連立協議は衆院選の直後から3党の幹事長や政策責任者で進めてきた。社民党は外交・安全保障政策で独自色をだそうと、在日米軍の法的地位を定めた「日米地位協定」の全面改定要求や沖縄の米軍普天間基地(宜野湾市)の県内移設の全面撤回などを求めた。

 最終的に地位協定は「沖縄県民の負担軽減の観点から改定を提起」と合意文書に盛り込み、社民党へ配慮がにじんだ。基地問題は「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と民主党のマニフェスト(政権公約)を踏襲する表現に落ち着いた。

 連立に参加する以上、社民党がこだわりのあるテーマで発言権の確保を目指して不思議でない。しかし日本外交の基軸は日米同盟だ。同盟関係に直接影響を及ぼす重要課題について、民主党が少数党の主張に引きずられて妥協を重ねるようなことがあれば本末転倒だ。

 外交・安全保障のほか、経済政策でも3党の主張は一致しているとは言い難い。景気の先行きがなお予断を許さないなか、調整に手間取り政策運営が遅れると、企業や家計に負の影響を及ぼしかねない。国民生活という基本を忘れてはならない。

 郵政民営化への対応も極めて問題点が多い。日本郵政など3社の株式売却を凍結する法案と郵政改革の見直し方針を確認する基本法案について合意文書では「速やかに成立を図る」と確認した。

 国民新党の要求に引きずられた面はあるにしろ、民主党は今回の衆院選で郵政事業について明確な将来像を示してはいない。民主党内では「官製金融」を民営化する方向そのものは評価する声も根強い。問題点を整理しないまま、時間を逆戻りさせる議論には疑問を禁じ得ない。

 社民、国民新両党が求めた与党の協議機関について、党首級が入閣して閣僚委員会で議論する方向となった点は評価したい。民主党が掲げる「内閣の下の一元的な政策決定」という目標に沿った決着といえる。

 連立協議の終了を受け、民主党の鳩山由紀夫代表は新政権の閣僚人事を本格化させる運びだ。3党が緊密に連携し、有権者の期待に応える体制を早く国民に示してほしい。

 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ