『日々の映像』

2009年09月09日(水) 人の話しを聞き広角的な視点を持とう(2)

社説:新政権に望む 国民との約束は重い       9月3日 毎日
社説:小沢幹事長 鳩山氏は内閣主導貫け       9月5日 毎日
社説:「鳩山内閣」人事 脱官僚が命運を握る     9月8日 毎日

 人は一つの出来事にあるイメージを固めると、人の意見を聞かない傾向が強いと思う。「話し聞く姿勢」は人の美徳の最たるものではないかと思う。社説を読む・・これは人の話を聞く最たる行為ではないか。しかし、社説など見向きもしない人が多いように思われてならない。「人の話(見解)しを聞く姿勢」の貧弱さが起因していると思う。

 民主党の圧勝から新聞各社の社説はこのテーマが中心である。このような新聞の扱いはかってなかったことで、テーマの大きさを証明している。このテーマについて、各自はイメージを固めていると思うが新聞各社の見解に目を通すことは「人の話を聞く」に他ならない。今日は中道的な論調を掲げる毎日の社説3題以下に引用した。

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社説:新政権に望む マニフェスト実現が大原則 国民との約束は重い                        2009年9月3日 毎日
 せっかくの民意の表れを軽視していないだろうか。
 怒濤(どとう)のような選挙から5日。圧勝した鳩山民主党が政権発足に向け歩を進める中、国内外メディアを中心に早くも同政権に対するさまざまな注文が出されている。多くは期待の表れであるが、民主党マニフェストに対して政策の継続性などを理由に中身の変更を求める論調も見受けられる。特に、外交・安保政策の軸となっている「日米関係の対等化」に対しては、いささか冷静さを欠いた反発があるようにも取れる。マニフェスト選挙を強調しておきながら、308議席の支持を取り付けた政権公約を選挙後1週間もたたないうちに考え直せ、とはいかがなものであろうか。

 ◇「継続」打破も効能の一つ
 一部新聞の社説が「基本政策は継続性が重要だ」「鳩山政権は対米政策で『君子豹変(ひょうへん)』せよ」と書いている。民主党がマニフェストで示したいくつかの問題について、政策の継続性、実現可能性という観点から見直すべきだ、とする議論である。具体的には、補正の組み替え、温室効果ガス削減25%目標、高速道路無料化、日米対等化などが俎上(そじょう)に載せられている。確かに、政策によっては結果的に継続性を重視することもあるし、相手のある外交・安保政策では君子ならずとも国の最高責任者としてマニフェストを超えた政治決断を求められることもあろう。

 しかし、ちょっと考えてみたい。マニフェスト選挙とはいったい何だったのか。各政党がそれぞれに自分たちが政権を握ったらどんな日本を作るのか、そのためにどういう政策を展開しようとしているのか。その政策実現の段取りから財源までをすべて一つのパッケージにした未来設計図たる政権公約の競い合いであったはずだ。

 日本国民は民主主義のルールに従って、民主党の設計図を選んだのである。このことの持つ意味は重い。なぜならば、民意の後押しがなければこの設計図も単なる紙切れでしかなく、二つがセットになることによって、従来の政治力学では困難だった問題もまた前に進めることができるからだ。その中では、制度疲労した政策や制度を新しいものに切り替える選択肢も出てくる。継続を打ち破るのもまたマニフェスト選挙の一つの効能である。

 もちろん、マニフェストで約束したことをすべて変えてはならない、といった極端な主張をするつもりもない。例えば、マニフェストに盛り込んだものの、その後その問題をめぐり大きな環境変化があった時、または、実は間違った主張をしていることに気づいた時、などは英断をもって修正すべきである。ただその時は、なぜ修正するのか、明確な説明と検証が必要なことはいうまでもない。政策論争を否定するものではないが、マニフェスト選挙の意義も大事にしたい。

 ◇「反米的」が独り歩き
 もう一つ気になることがある。8月27日付ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に掲載された鳩山由紀夫氏の論文をめぐる議論である。元になったのは、鳩山氏が9月号の雑誌「Voice」に寄稿した「私の政治哲学」だ。鳩山事務所が日本文と英訳をホームページに載せたところ、これに米紙が着目し要約を掲載した。転載の了承はしたが「寄稿」とされた。鳩山氏はこの中で、米国主導のグローバリズムや市場原理主義を批判し、アジアに位置する国家としてのアイデンティティーを強調、経済、安保両面でのアジア共通の枠組み構築を提起している。

 この論自体をどう評価するかは考え方が分かれよう。露骨な米国批判を慎むべきだ、との声もあるだろうし、米国に対等に物申すスタート台と受け止める向きもある。

 問題は、この論文が、「反米的」と受けとめられその印象論が独り歩きしていることだ。論文では、あくまでも「日米安保体制が日本外交の基軸であり続ける」ことを前提にしているにもかかわらず、である。民主党の外交・安保政策は、むしろ我々がこれまで指摘してきたように「日米対等化」の方向性のみあるだけで具体的な中身に乏しいところに特徴があった。なのに「反米的」との決めつけは早すぎはしまいか。

 我々が懸念するのは、両首脳の肉声による対話が始まる前にこういった両国間の論調のキャッチボールが、実態以上に膨れあがり、そのこと自体が新たな政治問題を生むことである。オバマ大統領が約10分といえども首相になる前の鳩山氏に電話をして日米基軸を相互に確認したのは、この空中戦に対する米政権の賢明な配慮であると受け止めたい。

 我々はいま初めてのマニフェスト選挙による政権交代を経験しようとしている。できるだけその芽を大事に育てて果実を得たいものである。
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社説:小沢幹事長 鳩山氏は内閣主導貫け      9月5日毎日
             
 「鳩山政権」発足に向けた民主党の新体制作りがスタートした。鳩山由紀夫民主党代表は、党運営の中心となる幹事長に小沢一郎代表代行の起用を決定、官房長官には鳩山氏側近の平野博文・党役員室長が内定した。岡田克也幹事長は外相となる見通しで、菅直人代表代行らも重要閣僚として処遇するという。

 注目されるのは、やはり小沢氏の幹事長起用だ。さっそく「実際には小沢氏が支配する二重権力構造になる」と懸念する声が出ている。だが、そうであってはならないのは鳩山氏も十分承知だろう。政策決定は首相主導の下、内閣に一元化するという方針を貫いてもらいたい。

 小沢氏は幹事長に就任することで従来の選挙対策だけでなく、国会対応などを含めた党運営全体を担うことになる。民主党が今回の衆院選で獲得した308議席のほぼ半数を占める新人の多くが小沢氏の影響を受けており、小沢氏の党内基盤が強固になったのは間違いない。

 ただし、小沢氏が新政権を主導する二重構造になると直ちに決めつけるのは早計だ。幹事長はまさに党の「表」のポストだ。責任ある役職に就かず、裏で差配する「闇将軍」的な存在にならないために、小沢氏が表のポストに就任したと見ることも可能だからだ。

 93年誕生した細川政権の時には、小沢氏は内閣に入らず、当時の新生党代表幹事として与党代表者会議を取り仕切って、政府の政策決定もリードした。だが、この二元的な意思決定の仕組みが、与党と官邸との関係をぎくしゃくさせると同時に、小沢氏の強引な手法が、その後連立与党の瓦解を招いたのは事実だ。その反省は小沢氏にも当時官房副長官だった鳩山氏にもあるはずだ。

 鳩山氏は「幹事長は政府の中に入って仕事をするわけではない。政策の決定はすべて政府の中でやる」と話している。新政権は官僚支配を排して政治主導、官邸主導の政策決定を目指している。まだ政権はスタートもしていない段階だ。ここは鳩山氏のリーダーシップを期待して、今後を注視していくことにしたい。

 一方、小沢氏には国民に開かれた党運営を心がけてもらいたい。幹事長になれば記者会見などの機会も増える。民主党は情報公開の必要性を訴えてきた政党だ。党の決定についても透明性を確保していくことが「二重構造」や「陰の支配」という懸念を解消していく道にもなる。

 小沢氏の公設第1秘書が政治資金規正法違反罪で起訴された事件の公判もいずれ始まる。鳩山氏も個人献金の虚偽記載問題を抱える。この問題についても、改めてより丁寧な説明が必要なのは当然だ。
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社説:「鳩山内閣」人事 脱官僚が命運を握る  9月8日 毎日

 「鳩山内閣」の主要閣僚人事が固まってきた。鳩山由紀夫・民主党代表が選択した布陣は、副総理兼国家戦略局担当相に菅直人代表代行、外相には岡田克也幹事長、官房長官には鳩山氏の側近である平野博文役員室長をそれぞれ起用するというものだ。先に決定した小沢一郎代表代行の幹事長就任も含め、鳩山氏は党内のバランスを考慮すると同時に、政権交代に対する国民の不安を解消するため、党内の実力者を配置したとみられる。まずは順当な人事といっていいのではないか。

 中でも注目されるのは新しく設置する国家戦略局の担当相に菅氏が就任することだ。予算の骨格や政策の優先順位、外交の基本方針をこの新組織で決めるという戦略局は、「脱官僚主導」「脱官僚依存」を目指すという民主党の目玉組織であり、この新組織がうまく機能し、政策決定の仕組みを根本的に変えられるかどうかが、新政権の命運を握っているといってもいいからだ。

 戦略局の設置には法改正が必要で、実際に始動するのは10月召集予定の臨時国会で関連法が成立した後となり、具体的な制度設計もこれから詰めていくことになる。民主党は省庁の縦割り行政を改めると同時に、今の経済財政諮問会議は財務省主導だと総括し、同省の予算編成機能を官邸に移すことを考えているようだ。メンバーとして民主党の国会議員や党の政策スタッフ、官僚、民間の有識者に加え、自治体の首長らもかかわる構想が練られている。

 菅氏はかつて自社さ政権で厚相を務め、薬害エイズ問題ではそれまで隠されてきた関連資料を大臣主導で暴き出した経験を持つ。期待されているのはその突破力だろう。絶えず鳩山氏と連携を保ちながら、官僚の抵抗を排する、いや、官僚をしたたかに使いこなすことを目指してもらいたい。

 菅氏が党の政調会長を兼務するのも大きなポイントだ。そこには官僚と族議員の事前調整で実際の政策が決まってきた自民党政治の「二元構造」を転換し、首相官邸と党が一体となって政策決定を進めていく狙いがある。閣議を事前に取り仕切ってきた事務次官会議の廃止などを含め、政治主導を目指して仕組みを変更していく点は大いに評価したい。

 16日の首相指名選挙を前に、社民党、国民新党との連立協議をまとめる一方で、他の閣僚人事も決まっていきそうだ。言うまでもなく仕組みを変えさえすれば済む話ではない。脱官僚を目指すということは、民主党の個々の議員の能力が試されるということだ。鳩山氏には、実力のある中堅や若手も積極的に登用してもらいたい。


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石田ふたみ