『日々の映像』

2009年06月12日(金) 金融危機のマクロのデーター


報道
1、「日本の輸出依存度は小さいのに世界金融危機の影響はなぜ大きいのか」                     2009/06/08日経
2、中国も日本並みの輸出減
             http://ameblo.jp/syogai1/entry-10278903300.html

1、2009年1〜3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、米国が前期比年率マイナス6.1%、ユーロ圏がマイナス9.8%なのに、日本はマイナス15.2%。なぜこんなことになっているのだろうか。
2、日本の輸出依存度(輸出/GDP)は16.3%で、ドイツの45.6%や中国の45.8%に比べるとむしろ低い。欧州でもアジアでも輸出依存度は20%以上が普通だし、香港183.9%、シンガポール219.2%という例もある。なぜ日本は輸出依存度が低いのに、世界危機の影響が大きいのだろうか。
上記1、2の疑問に対する回答が欲しい方は報道1をご覧下さい。

 中国の輸出依存度は45.8%と高い。資料2に通り1ヵ月で3兆円を超える輸出減であるから、中国政府は外需の落ち込みを内需の振興で穴埋めしようとしている、埋めきれるものでない。

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「日本の輸出依存度は小さいのに世界金融危機の影響はなぜ大きいのか」                     2009/06/08日経
日本の景気は最悪
 世界金融危機は米国から始まった。日本の金融機関が抱える不良債権は少ないにもかかわらず、日本の景気は世界の中で最悪である。2009年1〜3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、米国が前期比年率マイナス6.1%、ユーロ圏がマイナス9.8%なのに、日本はマイナス15.2%。なぜこんなことになっているのだろうか。
 日本が外需に依存しているからだという議論が多い。確かにそうだが、金融的理由もあると、本欄第80回「資本市場と銀行の両方を破壊した今回の金融危機」でも書いた。そこでは指摘しなかったが、金融政策ショックの側面もある。金融危機の後デフレに陥るのを防ぎ、景気を刺激するために全世界の中央銀行が金融を緩和している。米国では資金供給量(マネタリーベース)が2倍以上に、他の国も順調に増加しているが、日本はほとんど増えていない。世界で資金供給が拡大しているとき、日本で伸びていなければ、通貨と通貨の交換比率である円の為替レートは上昇する。すなわち金融ショックが円高ショックになる。
 もちろん、本欄第79回「世界経済危機で日本のダメージが大きい理由」でも書いたように、日本が外需に依存していることが大きな理由であることは間違いない。ただし、日本より輸出依存度の高い国は多いのに、なぜ日本への影響が大きいのかという疑問もある。表に見るように、日本の輸出依存度(輸出/GDP)は16.3%で、ドイツの45.6%や中国の45.8%に比べるとむしろ低い。欧州でもアジアでも輸出依存度は20%以上が普通だし、香港183.9%、シンガポール219.2%という例もある。なぜ日本は輸出依存度が低いのに、世界危機の影響が大きいのだろうか。
真の輸出依存度を考える
 輸出するために輸入しなければならない国は、実は輸出依存度が高くない。中国が輸出するには、多くの部品や材料を輸入しなければならない。輸出が減れば、輸入も大きく減って、国内の付加価値が受ける影響は小さくなる。ところが、日本は原料を輸入しているが、それを高度に加工して製品にしている。輸出のうちの付加価値の部分が大きい。そうであれば、輸出が減れば賃金も利潤も大きく減少してしまう。一方、中国は輸出の付加価値を高めようとしていたが、結果的には付加価値が低かったことが幸いした。では輸出のうちの付加価値を取り出して、本当の輸出依存度を測る方法はあるだろうか。厳密には難しいが、簡略化した方法はある。
 前掲の表には、輸出と品目ごとの純輸出(輸出−輸入)の対GDP比も示している。ここで輸出が輸入より大きければ、当然、海外景気の影響を大きく受けることになる。しかし今回考えようとしているのは、実質的な付加価値がどれほど外需に依存しているかである。そのためには輸出と輸入がつり合うように調整しておかなければならない。そこで、すべての輸入項目に「全輸出/全輸入」を乗し、輸出と輸入が等しくなるようにした。表には、その結果得られた品目ごとの純輸出の対GDP比を示した。
 当たり前だが、表からは日本、ドイツ、韓国、中国などが素材・原燃料の純輸入国であり、インドネシアやロシアが純輸出国であることが分かる。加工品(鉄、セメント、化学製品など)でも、純輸入国と純輸出国の顔ぶれはあまり変らない。部品においては日本が純輸出国であり、中国やマレーシアが純輸入国である。消費財では日本はわずかに純輸出国であり、中国やタイが大幅な純輸出国である。資本財においては日本、ドイツ、イタリア、フィンランド、韓国、マレーシア、タイ、フィリピン、中国が純輸出国となる。中国は素材や加工品、部品を輸入し、消費財と資本財を輸出している国であることが分かる。素材は付加価値をわずかしか含まないので、素材の輸入が減少しても国内の付加価値に置き換わることはない。そこで付加価値に着目した輸出依存度を考えるには、付加価値を多く含むもの、すなわち加工品、部品、消費財、資本財の純輸出を足し合わせればよいだろう。これらの純輸出を足したものの対GDP比を見ると、日本3.7%に対して、ドイツ5.7%、香港10.4%、韓国10.4%、シンガポール11.4%、中国8.6%と、いずれも日本との対比でその差が小さくなる。
 これらの数字は、各国・地域が受けている影響を、単純な輸出依存度よりも正確に表しているだろう(本稿の分析においてはアジア経済研究所の熊谷聡氏の助力を得たことを感謝する)。

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石田ふたみ