『日々の映像』

2009年03月27日(金) 臭いものに蓋をする

報道
1、日本の失業者「給付なし」77%ILO調査
                      2009年3月25日  日経
2、失業手当:不受給77%…日本は先進国中最悪の水準
                     毎日新聞 2009年3月25日
3、社説:雇用・失業対策 「非正規」守る新たな安全網を
                     毎日新聞 2009年3月1日 

 3年ほど前記録である。あるブログによるとうつ病などの精神疾患で国から手当てを受けている人が、100万人からこの10年で50万人増えたという記録があった。しかし、厚生省の公式の発表データに接したことはない。芳しくない情報は公表されない傾向にあるのだ。日本の伝統的な「臭いものに蓋をする」という習性であろう。

 国際労働機関(ILO)は24日、日本の失業者のうち失業給付を受け取れない人が全体の77%の210万人に上っているという調査結果を発表している。こんな身近な国内情報が厚生労働省からの発表でなく、国際労働機関(ILO)というから情けない。

 失業給付を受け取れない人が全体の77%もいるなどは「芳しくない情報」(臭いもの)なので蓋をしていた。ILOは、まず人員削減対象となる短期の非正規労働者が雇用保険に入りにくいことが原因と指摘している。この程度のことで、国際的な批判報道を受けることも情けない。

失業手当を受給できない失業者の割合
日本       77%  先進国中最悪の水準
カナダ      57%
米国       57%
英国       40%
フランス     18%、
ドイツ      13%

 日本は受給できない人の割合が際立って多い。雇用・失業のセーフティーネットは相変わらず正社員中心のままになっており、最近の急激な非正規労働者の解雇に対応できずに問題を深刻化させている。3人に1人が非正規労働者という時代に対応した新たな仕組みを早急に決める必要がある。


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1、日本の失業者「給付なし」77%ILO調査
                      2009年3月25日  日経
 国際労働機関(ILO)は24日、日本の失業者のうち失業給付を受け取れない人が全体の77%の210万人に上っているという調査結果を発表した。非受給者の比率は中国(84%)などの新興国並みで、ドイツ(13%)など欧州諸国と比べて突出している。ILOは、まず人員削減対象となる短期の非正規労働者が雇用保険に入りにくいことが原因と指摘している。
 調査は金融危機の影響を分析するためにまとめた特別報告の一環として実施。比率はILOが各国政府の公表資料を基に算出した。日本や米国、カナダ、ドイツなどは昨年12月時点の数値。
 ILOは20カ国・地域(G20)が4月2日にロンドンで開く緊急首脳会合(金融サミット)に参加し、日本などに雇用保険制度の拡充を求める方針だ。ソマビア事務局長は24日の記者会見で「各国は雇用対策にも資金を投入すべきだ」と訴えた。(13:03)

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2、失業手当:不受給77%…日本は先進国中最悪の水準
 毎日新聞 2009年3月25日
【ジュネーブ澤田克己】国際労働機関(ILO)は24日、経済危機が雇用に与えた影響についての調査報告書を発表し、失業手当を受給できない失業者の割合が日本は77%で、先進国中最悪の水準にあると指摘した。2番目に悪い水準のカナダと米国(同率の57%)を大きく上回っているとしている。
 他の先進国は、英国40%、フランス18%、ドイツ13%で、日本は受給できない人の割合が際立って多い。
 日本の場合、失業手当受給に必要な保険料納付期間(1年)の制約のために受給できていない非正規雇用労働者が多いことなどが反映したとみられる。
 報告書は特に、日米カナダの3国を列挙して「受給要件が(他国より)厳しいため、手当を受け取っていない失業者が半数を超えている」と指摘した。
 失業手当を受給していない失業者の人数は、米国630万人、日本210万人、英国80万人、カナダ70万人、仏独がそれぞれ40万人で、人数でも日米が突出している。
 また、先進7カ国で、今年初めまでの12カ月間に失業した人の数は、米国が410万人でもっとも多く、日本は2番目で29万人、3番目がカナダの20万7000人だった。
 一方、途上国では、都市部だけで制度が運用されている中国で、都市部の失業者の57%が手当を受け取れていない。全国規模に換算すると84%近くが受給できていないと推定された。ブラジルも、失業者の93%が手当を受けていないという。

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3、社説:雇用・失業対策 「非正規」守る新たな安全網を
                毎日新聞 2009年3月1日 
 雇用・失業情勢に改善の兆しが見えない。国、地方自治体は政策を総動員して、雇用不安を広げないための手だてを講じてもらいたい。同時に仕事を失った失業者への救済・支援策も充実させるべきだ。
 いかに雇用状況が深刻かを最新のデータでみてみたい。厚生労働省の調査で、3月末までの半年間に職を失ったか、失うことが決まっている非正規雇用労働者が15.8万人(2月18日現在)に上ることが分かった。1カ月前に比べ3.3万人増えた。
 1月の有効求人倍率は0.67倍、5年4カ月ぶりの低水準だ。また同月の完全失業率は4.1%で、前月よりやや改善した。この背景には職探しを一時見合わせた人が増えたことや、操業を短縮して従業員を休業させる場合、休業手当などの一部を助成する雇用調整助成金を多くの企業が利用したために解雇が増えなかったことがある。
 不況の長期化による大量失業に備え、雇用のセーフティーネット(安全網)の拡充を図ることが急務だ。いくつか提案をしたい。
 緊急の対応策としては派遣など非正規労働者への対応を急ぐべきだ。日本では職を失った場合には失業手当があり、その後は生活保護の仕組みで暮らしを支えている。しかし、労働時間が週20時間未満の人や1年以上の雇用見込みがない非正規労働者約1000万人は雇用保険に加入できず、セーフティーネットからはずれている。
 政府は適用対象を雇用期間6カ月に短縮する雇用保険法の改正案を国会に提出した。それによって150万人が新たに適用対象となるが、これで十分なのかどうか、引き続き議論が必要だ。ただ、適用要件の雇用期間を短くすれば、仕事と失業保険の受給を繰りかえす「失業の罠(わな)」の問題が出てくる。欧州では手厚い失業対策によって失業率が下がらない状況もある。雇用保険の適用対象の拡大については、現状を見ながら的確に判断すべきだ。
 失業した非正規労働者に対する職業訓練も重要な施策だ。新しい制度として経済的な不安を持たないで職業訓練を受けることができる生活保障給付の仕組みができた。もっとPRして利用者を増やしてほしい。
 この制度は職業訓練期間中の生活費を貸し付けるもので、就職すれば返還が免除される。ドイツやフランスでは失業扶助の制度があり生活費が給付されている。日本でも生活費の貸し付けではなく給付にすべきだという提案もある。国会で早急に検討に着手してもらいたい。
 雇用・失業のセーフティーネットは相変わらず正社員中心のままになっており、最近の急激な非正規労働者の解雇に対応できずに問題を深刻化させている。3人に1人が非正規労働者という時代に対応した新たな仕組みを用意すべきだ。

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毎日新聞 2009年3月1日 1時07分

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石田ふたみ