2009年02月11日(水) |
赤字企業、東証1部で240社:しかし、飛躍の企業も |
報道・社説 1、赤字企業、東証1部で240社=主要企業に巨額計上相次ぐ−時事通信社集計 2月9日19時1分配信 時事通信 2、社説:電機産業―未来見すえ危機克服を 2009年2月9日 朝日 3、社説1 企業は危機後も見据えて逆境に対処を 2008年2月8日 日経
東証1部の企業数は1728社である。報道1の時事通信社集計社の集計によるとこのうち240社(14%)が赤字であるという。赤字の割合が意外に少ない印象である。しかし、世界的な景気後退と円高が輸出産業を直撃しており、日本を代表する主要企業で巨額赤字の計上が相次いでいる。
電機産業の赤字が一番大きく大手9社のうち7社の純損益が赤字で、その総額は2兆円あまりに達する。この不況の中でも太陽電池関連の設備投資が続いている。電気自動車の鍵を握っているのは、電気産業である。 現在の閉塞(へいそく)を打開する担い手となるのは、電機産業ではないかと思う。
今回の金融危機で最も被害を受けていないのは、日本の金融機関と産業である。世界の企業買収に出るチャンスではないかと思う。すでに、この動きがあり報道3の一部を引用したい。ここで言い得ることは、今回の金融危機を好機と捉え大発展する企業が登場すると思う。
「逆風は自らの強みを見極め、経営資源を投じる選択と集中の機会でもある。グローバル競争を戦うためにも、海外企業を買収する好機は逃すべきではない。日本企業は買い手として有利な立場にいる。円建ての買収価格が円高で下がったからだ。世界的な株安で買収価格も安くなっている。旺盛な投資意欲で価格をつり上げていた買収ファンドの力も衰えた。昨年10月、サントリーはニュージーランドの栄養飲料大手の買収を決めたが、買い手候補に残った3社はすべて日本企業だった。」(日経社説から)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1、今期赤字企業、東証1部で240社=主要企業に巨額計上相次ぐ−時事通信社集計 2月9日19時1分配信 時事通信
東証1部上場で2009年3月期(今期)に純損益で赤字に落ち込む見通しの企業が240社に上ることが9日、時事通信社の集計で分かった。全体の3割近くが赤字となる公算だ。世界的な景気後退と円高が輸出産業を直撃しており、日本を代表する主要企業で巨額赤字の計上が相次いでいる。 調査対象は9日までに4〜12月期(第三・四半期)連結決算を開示した857社(金融を除く)で、3月期決算企業の70%強に相当。再編・合併などで前期と比較できない企業は除外した。 1000億円以上の赤字を計上しているのは10社でこのうち電機が6社、自動車が2社と輸出企業の不振が目立つ。赤字幅が最も大きいのは日立製作所の7000億円。本業の不振のほかに、リストラ費用や半導体子会社の投資損失、株式評価損などを計上する。自動車業界では、トヨタ自動車と日産自動車がともに世界的な販売不振で生産調整などを強化、大幅赤字に落ち込む見通しだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2、社説:電機産業―未来見すえ危機克服を 2009年2月9日 朝日 電機産業が世界不況の奈落に沈んでいる。今期の見通しでは、大手9社のうち7社の純損益が赤字だ。その総額は2兆円に迫る勢いで、IT(情報技術)バブルが崩壊した02年3月期以来の厳しさである。 日立製作所の赤字は金融機関を除く会社として史上2番目の7千億円、東芝も同社としては過去最悪、パナソニックとNECも7年前に次ぐ巨額損失……。収支トントンは三洋電機、黒字は三菱電機のみというありさまだ。 デジタル化の流れのなかで、家電製品の市況商品化が進んでいる。半導体を詰め込んだ基本部品、液晶やプラズマのパネルなどを調達すれば、世界中どこで組み立てても性能に差がつきにくい。勢い供給過剰になりやすく、市況商品のように値崩れが起こる。 今回はそれに加えて不況で需要が急減し、稼ぎ頭だった「お茶の間家電の王様」の薄型テレビが直撃を受けた。デジタルカメラ、パソコンなど多くの製品でも同じ構図で採算が悪化し、この影響は製品の心臓部にある半導体の市況崩壊にも波及した。 さらに誤算は自動車関連だ。自動車の電子制御化が進むうえ、カーナビなど電子機器の装備が増え続けている。家電産業だった電機業界はいまや「車電産業」にもなりつつある。その自動車が、日米市場で新車販売の3〜4割減という土砂降りの状況となり、家電と車電の両翼が失速した。 日本の鉱工業生産は昨年10〜12月期に11.9%減り、この1〜3月期も大幅な減少が予想される。自動車と電機の極度の販売不振が生産全体の急減を呼んでいる。電機9社で正社員を含む6万6千人以上を削減・配置転換するリストラ策も打ち出された。 激震の急襲に身を縮めるのはわかるが、工場閉鎖や雇用削減の影響は地域社会にとってきわめて大きい。中長期的に雇用を守るよう、最大限の努力をしてほしい。衝撃の大きさに驚いてリストラが行き過ぎ、次の回復期に積極策へ出るための要員が枯渇しないよう配慮するのは当然だろう。 思えば電機産業は、新技術を形にして夢のある新製品を生み出すことにより、暮らしを変え、新たな市場を創造してきた。その底力が試される。 オバマ米大統領が言うグリーン・ニューディールを引き合いに出すまでもなく、環境や省エネをテーマに生活様式や社会基盤を見直し、よりよい技術体系に置き換える必要がますます強まるだろう。太陽電池も電気自動車でもカギを握るのは、技術の革新なのだ。現代社会の頭脳や神経となったITの重要性はさらに増す。 現在の閉塞(へいそく)感を打開する担い手として、電機産業への期待は高まるに違いない。苦境を脱し、未来を開く種が次々と芽吹くのを一日も早く見たい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
3、社説1 企業は危機後も見据えて逆境に対処を(2/8) 2008年2月8日 日経 日本企業の業績が急速に悪化している。上場企業の2009年3月期の連結経常利益は前期比6割減り、製造業に限れば連結中心の決算になった00年3月期以降、初めて最終損益が赤字となる見通しになった。上場企業は前期まで6期連続で増益を続けてきた。追い風から逆風への急変ぶりが鮮明になっている。
収益の悲観的な見通しは、企業の08年4―12月期決算の発表が峠を越えたことで明らかになった。資源価格の下落で原材料費を圧縮できるような一部の企業を除き、業績の悪化は幅広い業種に及ぶ。
揺らいだ収益の前提
人口の頭打ちに直面する内需型企業の不振に加え、電機や自動車をはじめとする輸出産業にも業績悪化が及んだのが特徴だ。世界的な景気後退の余波が、想像を上回る早さで日本企業を襲ったことを物語る。
企業は、これまで収益拡大を支えてきた2つの前提が大きく揺らいだことを認識すべきだ。米国市場の成長と円安である。
企業が製品の販売先として頼りにしていた米国市場は、個人消費の不調で萎縮のさなかにある。日本企業を直撃する構図が表れたのは自動車業界だ。米国全体の新車販売は昨年、07年より18%も落ち込んだ。日本メーカーは米国勢の不振を尻目に4割までシェアを伸ばしており、市場縮小の影響は大きくなった。
米個人消費の不振は長期化すると見るべきだ。家計には出費を控える要素があふれている。保有する住宅の価格下落には歯止めがかからず、住宅を担保に膨らませてきた借入金は返済を迫られている。企業収益の低迷は雇用の減少に飛び火し、1月の米失業率は7.6%と16年4カ月ぶりの高水準になった。
輸出企業の収益を底上げしてきた円安も、過去のものとなりつつある。円相場は対ドルで07年度平均の1ドル=114円から同90円前後まで上昇した。日本と米欧の金利差が縮小したことなどで、マネーが円に向かった。米欧は危機対策として金融緩和を続ける見通しで、金利差が再び拡大する展開は考えにくい。
日本企業が打つべき手はまず、逆風を乗り切る防御策である。
経営の合理化は待ったなしだ。09年3月期、最終損益が7000億円の赤字となる見通しになった日立製作所は、拠点の統廃合や不採算製品からの撤退を進め、10年3月期に固定費を2000億円削減する。
業績の拡大期に、日本企業はバブル崩壊時の危機感が薄れ、無駄なコストが膨らんだという不満も株式市場では出ていた。高いコストは景気の悪化に弱い収益体質に直結する。改革に終わりはないことを再確認して実行に移してもらいたい。
米国に収益源を依存する企業は販売先を成長力のある地域に移す戦略も検討に値する。景気の悪化は世界に広がっているが、成長率が相対的に高い地域はある。景気対策を打ち出した中国では、1月に入って銀行融資が急増するなどの兆しも出始めた。三菱マテリアルは米国向けのセメント輸出を凍結し、中国向けに振り替えた。
信用収縮は長引いており、財務戦略にも工夫が求められる。例えば、社債や株式の市場では一度に大量の資金調達するのではなく、市場環境に応じてきめ細かく発行する。そのためにも投資家への情報提供を普段から徹底するといった施策だ。
守り以上に重要なのは、危機後を見据えた攻めだ。
強みを見極める好機
逆風は自らの強みを見極め、経営資源を投じる選択と集中の機会でもある。グローバル競争を戦うためにも、海外企業を買収する好機は逃すべきではない。日本企業は買い手として有利な立場にいる。円建ての買収価格が円高で下がったからだ。
世界的な株安で買収価格も安くなっている。旺盛な投資意欲で価格をつり上げていた買収ファンドの力も衰えた。昨年10月、サントリーはニュージーランドの栄養飲料大手の買収を決めたが、買い手候補に残った3社はすべて日本企業だった。
研究開発への意欲も課題だ。歴史的に景気後退期には、企業が研究開発投資を絞る傾向がある。業績が悪化するなかでの投資は簡単なことではないが、イノベーション(変革)は勝ち残りのカギを握る。繊維に革命を起こしたナイロンは、米デュポンが大恐慌のさなかに巨額の開発費を投じて商品化にこぎ着け、その後同社の長期的な成長を支えた。
政策面の支援も欠かせない。潜在力のある企業が目先の資金繰りに窮して破綻しないよう、当局は目配りしてほしい。雇用対策の実施も急務だ。生き残りを迫られる企業にとって、人員削減はやむを得ない面もある。収益が伸びれば雇用吸収力は増す。人員削減が景気全体に与える影響を抑え、業績の回復を早めることを目指して政策を進めるべきだ。
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