『日々の映像』

2008年12月11日(木)  今年の上場企業倒産が戦後最多になる

報道・資料
1、2008年(平成20年)11月度 全国企業倒産状況
     http://www.tsr-net.co.jp/new/zenkoku/monthly/1179330_807.html
2、社説:倒産急増 資金繰りが会社を追いつめる    読売社説

 不況になれば企業倒産が出るのは当然であるが、今年はやたらと上場企業倒産が多く疑問である。社説を引用しよう。
「黒字経営の上場企業が資金繰りに行き詰まり、またたく間に倒産する例が増えている。景気後退で企業業績が急速に悪化し、金融機関の融資姿勢は慎重さを増している。倒産と金融の収縮が連動して経済が落ち込む「負の循環」を食い止めねばならない。上場企業の倒産は30件を上回り、戦後最多を更新した。しかも、その6割は直前の決算が黒字の好業績企業だった」
 
 ポイントは倒産した30社の6割は「直前の決算が黒字の好業績企業だった」という事実である。15年余り中堅企業の経理を担当してきた経験から言うと、銀行の姿勢を甘く見ていた財務担当者の責任が問われると思う。財務担当者は常に売り上げ減などの変動にも耐えるだけの財務体質にしておく必要があるのだ。これは中小・個人企業にも言える絶対的な指針である。




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1、2008年(平成20年)11月度 全国企業倒産状況
              東京商工リサーチ
http://www.tsr-net.co.jp/new/zenkoku/monthly/1179330_807.html
倒産件数   1,277件
負債総額  576,052百万円
前月比(件数) −10.6%(前月1,429件)
前月比(負債) −42.8%(前月1,007,715百万円)
前年同月比(件数) +5.2%(前年同月1,213件)
前年同月比(負債) +16.9%(前年月月492,568百万円)
(負債総額1,000万円以上の倒産を集計、%は小数点2位以下切捨)

倒産件数が前年同月比5.2%増の1,277件、今年の上場企業倒産が戦後最多になる。

 2008年(平成20年)11月度の全国企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,277件、負債総額が5,760億5,200万円となった。

 倒産件数は、前年同月比64件増、5.2%増で6カ月連続で前年同月を上回った。9月(1,408件)、10月(1,429件)と1,400件台が続いたなかで一服感があるものの、11月としては、2003年以降の最近6年間で最も多い水準である。
 政府が総合経済対策で中小企業支援として実施した信用保証協会を通じた緊急保証制度の利用効果も踏まえて今後の動向が注目される。

 負債総額前年同月比834億8,400万円増、16.9%増で、3カ月連続で前年同月を上回った。
 このほか上場企業倒産(上場廃止後の倒産は除く)は3件発生した。この結果、今年は11月時点で累計30件に達し、2002年(29件)を上回って年次(1〜12月)ベースで戦後最多を更新した。

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倒産急増 資金繰りが会社を追いつめる(12月10日付・読売社説)
 
黒字経営の上場企業が資金繰りに行き詰まり、またたく間に倒産する例が増えている。
 景気後退で企業業績が急速に悪化し、金融機関の融資姿勢は慎重さを増している。倒産と金融の収縮が連動して経済が落ち込む「負の循環」を食い止めねばならない。
 今年の倒産はすでに1万件台にのせ、11月中に前年の年間件数を超えた。特に、上場企業の倒産は30件を上回り、戦後最多を更新した。しかも、その6割は直前の決算が黒字の好業績企業だった。
 都市部の局地的な地価上昇に踊り、甘い計画でつまずいた不動産会社などの“突然死”が少なくない。だが、こうした「バブル組」に限らず、本業低迷に資金繰りの悪化が追い打ちとなり、追いつめられる企業も増えている。
 7〜9月期の実質国内総生産(GDP)は、成長率が速報の年率マイナス0・4%から同1・8%へ下方修正され、内需もプラスからマイナスへ落ち込んだ。
 景気悪化を受け、倒産の8割は販売不振など「不況型」が占め、運輸や卸売りなど内需関連の業種で件数が大幅に増加している。
 自動車や電機など輸出関連の大企業も、海外経済の減速を受けた業績悪化で、大幅な減産を打ち出している。下請けの部品工場など中小・零細の製造業に、受注減の大波が押し寄せつつある。
  こうした時、業績の回復まで資金をつなぐ“命綱”を繰り出してくれるはずの金融機関は、金融危機や株安、不良債権の増加で財務体力が落ち、期待に十分応えられていないようだ。
 11月の倒産原因に、「運転資金の欠乏」を挙げた企業は前年同月より4割も増えた。さまざまな調査で、金融機関の貸し出し態度が厳しくなったと答える中小企業の割合が急上昇している。
 政府は第1次補正予算で、緊急保証枠と政府系金融で計9兆円の中小企業金融対策を講じたが、その効果は限定的だ。21兆円の追加措置を盛り込んだ第2次補正予算案の成立を急ぎ、資金難による倒産の連鎖を防がねばならない。
 ただし、対策はあくまでも緊急措置である。金融機関は「貸せる企業には自ら貸す」のが本来の姿だ。金融検査などによる、貸し渋りの監視も欠かせまい。
 金融機関は、必要な融資に応じられるように、自力増資はもちろん、近く成立する見通しの金融機能強化法改正案による公的資金注入も含め、自己資本の強化に努めるべきだ。
(2008年12月10日01時51分 読売新聞)

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石田ふたみ