2008年12月09日(火) |
迷走麻生首相への三くだり半 |
社説 1、社説:支持率急落―政治の刷新を求める民意 朝日 2、社説:内閣支持率急落 麻生自民党は立ち直れるか 読売 3、社説:麻生首相は世論の批判にどう応えるか 日経 4、社説:政権失速 大局読めぬ当然の帰結 中日新聞 5、社説:内閣支持率急落 迷走首相への三くだり半 新潟日報
昨日に引き続き麻生首相の支持率急落に関することを記述したい。日本の社会が100年に1回といわれる金融危機の大津波に襲われようとしているのに、政権末期の支持率ではどうにもならない。
麻生太郎首相の発言が二転三転、支えるべき与党も一枚岩に程遠い。こんな体たらくでは、政権から国民の気持ちが離れるのは当然だろう。共同通信社の世論調査で、麻生内閣の支持率が25・5%と前回11月の調査から15.4ポイントも急落した。逆に不支持率は19・1ポイント増え61・3%に達した。国民の3人に2人が「この政権には任せられない」と思っている数字だ。ほかの報道各社調査でも支持率は同じように急降下した。
衆院解散・総選挙を控えて自民党内では「麻生首相では戦えない」という声がさらに強まり、今後「麻生離れ」の動きが本格化するとみられる。就任からわずか二カ月半で政権末期ともいえる状態だ。立て直しの道は極めて厳しく不可能に映る。浮足立つ自民党の姿も情けない。9月の総裁選では麻生首相を圧倒的多数の支持で選出した。だが議員からは早くも首相を批判し、離党や政界再編に含みを持たせる発言が相次いでいる。まさに「一寸先は闇」である。
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20081209
――――――――――――――――――――――――――――― 1、社説:支持率急落―政治の刷新を求める民意 2008年12月9日 朝日 低迷していた麻生内閣の支持率が急降下した。朝日新聞の世論調査では22%、読売新聞、毎日新聞ではともに21%。逆に不支持率はどの調査でも6割前後に跳ね上がった。 朝日新聞の調査では、麻生首相に実行力があるとは思わないという人が68%に達した。麻生氏と小沢民主党代表のどちらが首相にふさわしいかの評価も、小沢氏に逆転された。相当な不信感の広がりである。 いま、政治が立ち向かわねばならない最大の課題は何か。押し寄せる世界的な不景気の大波から、国民の暮らしや経済を守っていくことだ。 そのためには、ふたつの選択肢がある。ひとつは、衆院の解散・総選挙による「政治空白」を避け、補正予算案を通したり、来年度の当初予算案を編成したりして緊急対策を急ぐことだ。もうひとつは、危機だからこそ、一日も早く総選挙で日本の政治を仕切り直し、必要な施策を実現できる強力な態勢をつくることである。 麻生首相は前者の道を選択した。解散を先送りして、就任以来2カ月あまり、定額給付金などの対策づくりに取り組んできた。その評価が今回の世論調査にあらわれたと見るべきだ。 朝日調査で、これまでの首相の仕事ぶりについて「期待外れだ」「もともと期待していない」と答えた人が合わせて8割を超えたのは象徴的だ。まさに落第ということである。 3社の世論調査とも、早期の総選挙を求める声が多数を占めた。やはり総選挙で政治を刷新しない限りこの危機には対応しきれない。世論はそう感じている。雇用などの急速な悪化が不安と不満を膨らませているのだろう。 自民党内にも、公然と首相を批判する声が出始めた。新しいグループを旗揚げする動きもある。こんな状態で予算案づくりや税制改正などの仕事をこなせるのか、疑問に思えてくる。 首相にひとつ提案がある。 年明けの解散を約束し、それと引き換えに、野党に第2次補正予算案への協力を求めることだ。 野党がこぞって反対する定額給付金は撤回せざるを得ないかもしれない。だが、中小企業の資金繰り支援や雇用のセーフティーネット整備など、野党も賛成できる緊急対策はある。 それを実現させたうえで、総選挙で与野党が経済対策を競い合う。選挙後は、その民意に基づいて敗者は勝者の案の実現に協力する。来年度予算の成立が少し遅れたとしても、政治が対応力を回復することこそ有権者は望んでいるのではないか。 永田町では、首相交代論や政界再編論もささやかれている。だが、政治が混乱すればそれこそ「空白」が長引くことになる。首相はこの行き詰まりを打開するために決断すべきだ。
―――――――――――――――――――――――――――― 2、社説:内閣支持率急落 麻生自民党は立ち直れるか 2008年12月9日 読売 麻生首相と自民党にとって、きわめて厳しい事態である。 読売新聞の12月世論調査で、麻生内閣の支持率が20・9%に低落した。前月の調査に比べると、ほぼ半分に減った。政権維持がおぼつかなくなる水準の数字だ。 支持率急落の原因は、この1か月間の「麻生政治」にある。 第一は、追加景気対策を盛り込む第2次補正予算案の延長国会への提出を見送ったことだ。 第二は、定額給付金の所得制限をめぐる首相発言の揺らぎである。約2兆円の巨費を投じる政策で閣内不統一も露呈した。 第三は、「医師は社会的常識が欠落している人が多い」といった首相の失言や、漢字の誤読だ。 実際、今回の調査で国民の3人に2人は予算案提出先送りを「妥当ではない」とし、7割の人が定額給付金を評価していない。 内閣を支持しない理由では、「首相に指導力がない」という回答が急増した。首相は、こうした国民の批判を深刻に受け止めなければならない。 2009年度予算編成も税制改正も、今が正念場だ。首相がここで指導力を発揮できなければ、政権の立て直しは、ますます困難になるだろう。 今回、自民党にとっても、ただならぬ結果が出ている。 まず、政党支持率が、民主党に逆転された。福田前内閣以降、自民党は、政党支持率で第1党を譲ったことはなかった。 次の衆院比例代表選で、どの政党に投票するかでも、民主党が自民党を大きく引き離した。麻生政権下では、初の逆転だ。 いずれも、自民離れした層が民主党にシフトしているようだ。自民党への不信、不満の増大が背景にある。自民党に猛省を促す数字とみることもできるだろう。 小選挙区比例代表並立制という現行選挙制度では、「党首力」がものをいう。首相と民主党の小沢代表とでは、どちらが首相にふさわしいかという質問で、今回、小沢氏が首相を初めて上回った。 「選挙の顔」として期待していた「麻生人気」の低下に、自民党内には焦燥感が深まっている。首相や党執行部を批判したり、選挙対策に走って歳出圧力を強めたりする動きも出ている。 しかし、首相を選んだのは、ほかならぬ自民党だ。その責任を棚上げしてはなるまい。金融危機下、当面なすべきは、首相とともに、有効な景気・雇用対策の立案と遂行に全力をあげることだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――― 3、社説1 麻生首相は世論の批判にどう応えるか(12/9) 2008年12月9日 日経 世論調査で麻生太郎内閣の支持率が急低下している。景気や雇用情勢が急速に悪化しているのに、麻生政権は第2次補正予算の提出を先送りし、景気対策が後手に回っていると見られているためだ。政権の求心力低下によって予算編成や税制改正も官僚・族議員主導に戻りつつあり、改革逆行の動きが目に付く。迷走する政治の現状は憂慮に堪えない。
日本経済新聞が今月1日に公表した世論調査では麻生内閣の支持率が31%に急低下。「次の首相はどちらがふさわしいか」では、小沢一郎民主党代表に倍以上の差をつけていた麻生首相が小沢氏に並ばれる結果が出て、政界に衝撃が走った。
8日に公表された読売新聞や朝日新聞の世論調査では支持率がさらに落ち込んで21―22%まで下落。「どちらが首相にふさわしいか」では、麻生首相が小沢氏に逆転される結果が出た。いまや「景気の麻生」の看板は色あせ、「選挙の顔」としての期待感も吹き飛んだ格好だ。
麻生政権の失速は、首相の資質を疑わせるような問題発言が相次いだこともあるが、最大の要因は「政局より政策」「景気最優先」と言いながら、今国会に景気対策を具体化する第2次補正予算の提出を見送ったことだろう。首相が補正見送りを決めた11月25日以降、派遣や期間社員の契約打ち切りが相次ぎ、雇用情勢の悪化が急速に進んでいることが明らかになった。対策が後手に回った面は否めない。
麻生首相は「非常に厳しい数字だ。私への評価だと受けとめている。景気対策、雇用対策の期待に十分応えていないという批判だと思う。しっかりした対策を進めていくしかない」と述べた。民主党は麻生政権を揺さぶって早期解散に追い込むとしているが、仮に来年の通常国会で予算審議を引き延ばすような行動に出れば、世論の批判の矛先が民主党に向かうことを覚悟すべきである。
与党内では「麻生おろし」の目立った動きは出ていない。後継者が見あたらないことに加え、与党内の政権のたらい回しはすでに限界にきている事情があるからだ。この低支持率では解散に打って出ることもできず、八方ふさがりに陥っている。
前回世論調査では、金融危機の広がりで衆院解散の時期は「来年春以降」「9月の任期満了」がよいとする意見が多かったが、今回の調査では「できるだけ早く」「来年の通常国会冒頭」と答える声が多かった。「景気対策を先送りするなら、早く解散して政治は出直せ」という声に首相はどう応えるのだろうか。
――――――――――――――――――――――――――― 4、政権失速 大局読めぬ当然の帰結 2008年12月9日中日新聞 目を覆う内閣支持率の急落である。早期に民意を問うはずが、ためらった揚げ句、政策面での迷走劇を次々と露呈。有権者の心は離れ、麻生政権は失速した。大局を読めない政治の当然の帰結だ。 内閣支持率が30%を割り込むと、政権は危険水域に入るとの見方が政界では定着している。 各種世論調査で麻生内閣支持率は20%台前半から中盤にとどまり、発足後三カ月足らずで福田前内閣の末期の状況にまで落ち込んだ。退場を求めるレッドカードのような警告が、国民から麻生太郎首相に突きつけられた事実は重い。 就任以降、首相の政権運営は迷走を重ねてきた。自ら至上命令と課した臨時国会冒頭での衆院解散は、総選挙勝利のメドが立たずに先送り。代わりに、米国発の金融危機の対処へ景気対策を最優先する姿勢を打ち出したが、対策を盛り込んだ第二次補正予算案の今国会提出を見送るという不可解極まりない対応をとった。 「百年に一度の金融災害」といいながら、政権内から危機感が全く感じられない。露見するのは、定額給付金や道路特定財源の一般財源化などで首相指示の迷走に伴う混乱ばかり。首相の失言はまさに自滅に近い。機能不全に陥った政権のもと、政治空白が延々と続く。そんな失望感が支持率急落に込められているのだろう。 冷たい視線にさらされているのは何も首相だけではない。責任の一端は与党にもある。 自民党内では早くも「麻生離れ」が加速。幹部からは「ポスト麻生」論の言及すらある。選挙の顔として、二カ月余前の総裁選で首相を圧勝させたのは自分たちではなかったのか。選んだ責任はどこへいったのか。無節操すぎる。 二代続けての政権投げ出しの後の政権が、同じ轍(てつ)を踏みかねない状況に追い込まれている。人材の枯渇も含め、政権党たる党の能力に限界が訪れている。その現実を甘く考えるべきではない。 公明党も総選挙に向け定額給付金に固執するが、国民に不評であることを直視すべきだ。 政権失速の中、衆院三分の二勢力を背景に居座りを決め込むまねは避けるべきだろう。有権者へのさらなる裏切りになるからだ。 民主党は雇用対策に絞った二次補正を年内に提出するよう求めている。年末に向けて募る雇用不安や失業対策に与野党が協力した上で、速やかに信を問う。それが首相の取るべき道ではないか。
――――――――――――――――――――――― 5、社説:内閣支持率急落 迷走首相への三くだり半 新潟日報12月9日(火) 麻生内閣の支持率が急降下した。共同通信の世論調査によると、前回より15ポイントも落ち込んで25・5%になった。一気に「危険水域」といわれるレベルにまで滑り落ちた。 「ねじれ国会」で追い込まれたというよりも麻生太郎首相自らが招いた窮地だ。政策決定は迷走を重ね、失言を繰り返した。前回調査より不支持率が拡大し六割強に上ったことがそれを物語る。国民が不信任を突き付けている。首相はそう受け止めるべきだろう。 政権末期と思われるような状況が現出している。自民党内では若手が公然と反旗を翻し、財政をめぐる路線の対立などで政界再編も辞さずとする動きが先鋭化してきた。 ポスト麻生があからさまに語られ始めている。「泥舟麻生丸」と一緒に沈没したくないならば、首相の退陣を求めて動いたらいい。そのエネルギーもなく、首相を批判するだけでは政権党としてぶざまというしかない。 「百年に一度の非常時」が現実味を増してきた。企業は売り上げの急激な減少への対策に追われ始めた。倒産や減産による雇用の悪化は深刻な社会不安になりつつある。 そんなときに政治が緊張感を持って対応できない。異例ともいえる支持率急落の背景は政治不信にある。 不支持の中身をみると、「指導力がない」が6・5%から18・7%と急増したのが目を引く。党内の造反に手をこまねいている麻生首相の鼎(かなえ)の軽重が問われる。首相も与党も強い政治の実現のために全力を尽くすべきだ。 与党税制改正大綱が近くまとまる。これを基に来年度予算案が固められていく。国民に辛抱を訴えながらも、将来に希望を見いだせる予算案に仕上げる必要がある。にもかかわらず、予算編成作業は混乱し政府の意思決定システムまでが崩壊したように映る。 第二次補正予算案は来年早々に召集予定の通常国会で提案される。二次補正予算、本予算とも民主党は「慎重審議」で抵抗する構えだ。論議を尽くすのは当然だが、経済対策で後手に回る事態は回避すべきだ。 支持率急低下で首相の解散権は事実上封じられたとみるべきだろう。だが経済危機への対処をはじめ国内外には課題が山積している。弱体内閣では世界の激流に耐えられまい。総選挙による本格政権づくりを急ぐ必要がある。 恐慌とも呼べる大不況時に政治が無力であれば、国そのものが漂流しかねない。これほど危険なことはない。いまはまさにその瀬戸際にある。 挙党一致体制で政策を推し進めることができないのなら、潔く進退の覚悟を固めることだ。それが「景気の麻生」の務めである。 ―――――――――――――――――――――――――――――――
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