2008年12月01日(月) |
年金記録改ざん 国民だましの「国家の犯罪」である |
報 道 1、年金改ざん:裏金で滞納穴埋め 元職員が証言 毎日 2、年金改ざん:組織的改ざん認める…厚労相調査委が報告書 毎日 3、年金運用損4.2兆円 赤字幅は過去2番目 7〜9月 朝日 4、社説:年金記録改ざん 国民だました「国家の犯罪」 毎日
何回も怒りの記述をしてきたので。このテーマに関しては記述する気力が湧かない。今回は報道3の年金運用損4.2兆円のことに触れたい。国民の年金積立金であるので、国内債権中心の運用をしておけば4.2兆円などという膨大な赤字は出ないのである。
年金積立金管理運用独立行政法人が国民から預かっている年金資産額は92兆9273億円である。これを次のように運用《資産構成》している。 1、 国内債券65.2% 60兆5885億円・・・多少のプラスあり 2、 国内株式13.5% 12兆5451億円 3、 外国債券10.6% 9兆8502億円 4、 外国株式10.7% 9兆9432億円 100% 92兆9273億円 2・3・4の合計32兆2285億円
4.2兆円の赤字は7〜9月の第2四半期のことであり、10〜12月株価が大暴落しており第3四半期は上記32兆円の内かなりの額の損失が発生するのではないか。繰り返すが、国債などの国内債権に運用しておけば損失などは出ないのである。約93兆円もの資金を官僚組織に任せておいて良いのだろうか。
――――――――――――――――――――――――――――――― 1、年金改ざん:裏金で滞納穴埋め 元職員が証言 毎日新聞 2008年11月30日 厚生年金保険料の算定基準となる標準報酬月額(年金記録)の改ざん問題で、改ざんしても滞納分が穴埋めできない場合、各地の社会保険事務所長が主導して「裏金」で補てんしていたことが分かった。首都圏や関西の社保事務所に勤務していた複数の元職員が毎日新聞に証言した。裏金は、社保庁職員らの天下り先でもある公益法人「社会保険協会」が会員企業から集めた会費が原資だったという。不正隠ぺいのため組織的に裏金まで使った実態が判明した。 複数の元職員らによると、滞納した保険料を圧縮するため、さかのぼって標準報酬月額を下げたり企業を年金から脱退させても、徴収すべき額に足りない場合が生じる。首都圏の元社保事務所幹部は「1000円程度の不足なら徴収課長がポケットマネーから出したりしたが、万単位になると『裏金』を使った」と証言した。 証言によると、裏金の原資を提供したのは各都道府県に厚生労働省所管の財団法人として設立されている社会保険協会。協会には健康保険と厚生年金の適用事業所が加入し、会費を任意で集めて被保険者の健康増進事業などを行っている。この会費の一部が裏金となったという。 関西の元社保事務所職員によると、改ざんが多かった90年代は、協会の通帳を社保事務所の庶務課長が管理し所長の判断で使えたという。裏金は40人規模の社保事務所で1カ月に約10万〜20万円。この元職員は「近県の職員から『所長に言われ(改ざんで)足りない時に裏金から出す』と言われた。本庁幹部の接待費にも使われた」と証言した。 首都圏の元社保事務所幹部も「協会から回る裏金で90年代は所長に月5万円の『手当て』があった」と話し、裏金の一部は社保事務所での飲食費やアルバイトの人件費などにも使われたという。 各地の社会保険協会が会員として加盟する社団法人「全国社会保険協会連合会」の常務理事2人のうち1人は社保庁OBが務め、理事長には元厚労省局長が就いている。 社会保険庁企画課は「把握していない話だ。事実関係が具体的に出てくれば調べる必要がある」と話している。【野倉恵】
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 2、年金改ざん:組織的改ざん認める…厚労相調査委が報告書 毎日新聞 2008年11月28日 22時16分 厚生年金保険料の算定基礎となる標準報酬月額(年金記録)の改ざん問題で、舛添要一厚生労働相直属の調査委員会(委員長・野村修也中央大学法科大学院教授)は28日、社会保険庁の職員が組織的に改ざんに関与したと初めて認める報告書を公表した。社会保険庁本体の関与は確認できなかったが、社会保険事務所(全国309カ所)を中心に改ざんが行われたとし、社保庁の業務体制と厚労省の監督不足を「国民への重大な裏切り行為」と批判。関与した職員・幹部を再度調べて懲戒処分するよう求めた。 調査委は、従業員で年金記録が改ざんされた可能性があるのは最大2万8000人に上るとしている。 調査委は、記録が大幅に引き下げられているなど社保庁が「改ざんの可能性が高い」とした約6万9000件を分析。社保庁元長官15人に陳述書を提出させたほか、社保庁職員ら約1万5000人へのアンケート、厚労省・社保庁幹部69人への事情聴取を行った。 その結果、さかのぼって引き下げた標準報酬月額の総額が、当該事業所の過去の滞納保険料額と一致していたケースが複数見つかった。このことから、事業主の記録改ざんについては、「少なくとも一部では(社保庁の)仕事のやり方として定着していた」と認定。社保事務所などの現場が組織的に改ざんにかかわったと判断した。 6万9000件の記録の訂正時期をみると、93〜95年が年間6000件台と多く、98年は最高の7315件。99年は4000件台に減った。調査委は、98年に発覚した社保庁職員による巨額横領事件の影響とみている。地域別では埼玉、東京、愛媛の都県で目立つ。 改ざんが疑われた6万9000件の年金記録は、約4万2000社分の記録。記録が訂正された人数が2人以上いる社は約1万3000社(総数4万1000人)で、事業主数(1万3000人)を除いた従業員数は2万8000人。 今回の調査では、時効にかからなければ刑事告発の対象となる例が2件あった。職員の証言には、「不正の手法を先輩から指導された」との趣旨の証言もあった。 職員へのアンケートの結果、153人が不正に「関与したことがある」と回答。190人は「他の職員が不正をしたのを知っていた」と回答した。ただ「報道で知った」とか、保険料を徴収する職場にいただけで「関与した」と回答した例も多数含まれるという。 【堀井恵里子】 ◇解説…本庁関与の解明が急務 厚生年金記録の改ざん問題に関する舛添要一厚生労働相直属の調査委員会が28日、社会保険事務所職員の組織的関与を認めたことで、問題を不問にしてきた社会保険庁への批判が高まるのは必至だ。 調査からは、届け出書類を改ざんした職員が書類の控えをシュレッダーで廃棄したり、事業主が行方不明になったのに三文判を使って書類を偽造したりした手口も明らかになった。これまで多くの職員や元職員が、事務所長を含めて情報を共有していたと証言している。 一方で調査委は「本庁の関与は認められなかった」と結論付けた。調査は社保庁OBを対象にしておらず、限界は明白だ。本庁職員は恒常的に出先機関に出向しており、改ざんの最大の動機とされる「徴収率の維持」は本庁の予算確保が目的との指摘もある。舛添厚労相は本庁による関与の解明を続けるべきだ。【野倉恵】 (最終更新 11月29日 1時44分) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3、年金運用損4.2兆円 赤字幅は過去2番目 7〜9月 2008年11月28日22時20分 朝日 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人は28日、7〜9月の第2四半期の市場運用で、4兆2383億円の運用損が出たと明らかにした。積立金の市場運用が本格的に始まった01年度以来、2番目の損失の大きさ。収益率はマイナス4.4%で、3番目の低さだった。 10月に株価が大暴落しており、第3四半期は運用損がさらに膨らむ可能性が高い。 第1四半期の運用実績は、円安の影響などで4四半期ぶりのプラスだったが、今期は再度マイナスに転じた。米国のリーマン・ブラザーズ証券破綻(はたん)に端を発する金融不安で、株価が世界的に大幅下落したことや、ユーロに対する円高が要因。運用資産額は92兆9273億円。 運用先別に収益率を見ると、国内株式がマイナス17.3%、外国株式がマイナス14.8%と、マイナス幅が大きかった。外国債券はマイナス4.4%、国内債券はプラス0.9%だった。 資産構成は、国内債券65.2%、国内株式13.5%、外国債券10.6%、外国株式10.7%など。 4〜9月の損失は2兆9341億円で、収益率はマイナス3.1%。厚生労働省は、株式運用が5割の米国や6割のカナダで、同時期の収益率がそれぞれマイナス11.4%、マイナス7.5%だったことなどと比較し、「日本は国内債券を中心とした安全重視の運用」とする。 さらに、「年金積立金の運用状況は長期的に見ることが必要。すぐに年金支給に影響が出るようなことはない」と説明。ただ、収益率が長期的に低迷した場合、将来の給付水準が低下する可能性もある。 これまで損失が最大だったのは、08年1〜3月で5兆476億円。このときの収益率はマイナス5.4%だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――― 社説:年金記録改ざん 国民だました「国家の犯罪」 2008年11月30日 毎日 驚きより、強い怒りがこみ上げてくる。 厚生年金記録の改ざんに社会保険庁職員が組織的に関与していた事実が明らかになった。しかも、不況などで滞納となった年金保険料を帳消しにするための手段として、報酬月額の改ざんが「(社保庁の)仕事の仕方として定着してきた」というではないか。決してあってはならないことだ。 この結果、国民の年金が減額される。それを一番知っている公務員が、改ざんを行うというのは、一体どういうことなのか。組織的な改ざんは、国民をだます許し難い「国家の犯罪」と厳しく指摘しておきたい。 舛添要一厚生労働相の調査委員会が、改ざんの疑いがある6万9000件の年金記録について調べ、社会保険事務所での組織的な改ざんを初めて認定した。短期間で、膨大な数の事案を調べることは不可能で、調査委は「不祥事の全容はとらえ切れていない」と指摘し、社保庁に対して「速やかに個別事案の調査を行い、被害者の救済を早急に行うよう強く求める」と厳しい注文をつけている。 社保庁だけでなく、厚労省も、この指摘を正面から重く受け止め、直ちに動き出すべきだ。今後の対応について4点を指摘しておきたい。 第一は、全容の早急な解明だ。6万9000件に限定せず、すべての疑わしい記録について調べるのは当然だ。失墜した国の信用を回復し、年金不信を解消させるためにも全容解明は絶対条件だ。 次に、社保庁の本庁と厚労省の関与についても徹底調査が必要だ。同省、同庁の元現幹部らは、調査に対して社保庁の関与を認めていないが、現場だけに責任をなすりつけて収拾を図ろうとすれば、信頼を失うばかりである。 第三は被害者の救済だ。改ざんで年金が減額となる被害者の救済に一日も早く着手する必要がある。事実解明と救済作業の事務量は膨大なものになると予想されるので、特別チームを編成して対応することも検討してもらいたい。 最後に指摘したいことは責任の問題だ。組織的な改ざんを放置し、公務員の信頼を失墜させ、さらに年金不信を一層強めてしまった責任は重い。調査委も「国民への重大な裏切り行為」と批判し、職員・幹部を再度調べて懲戒処分するよう求めた。組織的関与を指摘されたからには、幹部が「知らなかった」では済まされない。現場にすべての責任を負わせるだけでは、国民は納得しない。調査に基づいて厳正な処分を行わない限り、年金不信解消はできない。 「組織的な改ざん」が放置されてきたことの衝撃は大きい。それは年金だけでなく、国家に対する信頼を根底から揺さぶっている。これを軽くみてはならない。問題の闇は、まだ深い。 毎日新聞 2008年11月30日 0時04分
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